収入額の証明は損害賠償請求の中心問題

適正な損害賠償金額を算定するのに最も重要なのが、被害者の事故当時の収入額です。

 

休業損害」や「後遺障害逸失利益」「死亡逸失利益」は、いずれも被害者の収入額を基礎に算定します。逸失利益は賠償金の中でも特に大きな金額となりますから、適正な損害額を算定することが大切です。

 

収入額の証明は、被害者側で行わなければなりません。被害者の収入の立証責任は、被害者側にあります。事故当時、被害者にどれだけの収入があったか証明できなければ、正当な賠償金を受けられません。

 

被害者の収入額の証明こそ、損害賠償請求の中心問題なのです。

 

職種別の基礎収入の算定と証明の方法

ここでは、被害者の収入の算定と証明の方法について、職種別に解説します。

 

 

被害者が18歳未満・学生の場合も逸失利益を賠償請求できる

なお、未就労者(幼児・生徒・学生)は、まだ働いていないのですから、収入はありません。

 

しかし、逸失利益は、将来の収入が得られなくなることによる損害ですから、まだ働いていない小さな子どもや生徒・学生であっても賠償請求できます。

 

 

基礎収入の算定で税金は控除しない

基礎収入の算定にあたり、税金は控除しません。税金控除前の収入・給与の額を基礎とします。

 

これについては、最高裁が「不法行為の被害者が負傷のため営業上得べかりし利益を喪失したことによって被った損害額を算定するにあたっては、営業収益に対して課せられるべき所得税その他の租税額を控除すべきではない」とする判断を示しています。

 

最高裁判決(昭和45年7月27日の詳細はこちら
※最高裁のwebサイトにリンクしています。

 

また、人身損害賠償金は、税法上非課税とされています(所得税法第9条1項17号)。

被害者の収入額の算定と証明の方法 記事一覧

Point給与所得者の休業損害・逸失利益算定のための基礎収入には、本給のほか、諸手当、賞与なども含まれます。昇給や退職金については、規定があるなど「相当の確かさを持って推定できる場合」には考慮されます。原則として67歳まで就労可能と認められますが、定年後は減額されます。給与所得者の基礎収入の算定会社員や公務員など給与所得者の収入は、勤務先の事業所から受け取っている事故前の現実の収入(給与)を基礎と...

Point役員報酬のうち、労務対価部分は賠償の対象となりますが、利益配当部分は原則として除外されます。報酬のうち、労務対価部分がどの程度を占めているかの証明がポイントです。事故が原因で役員を解雇されたり、死亡して利益配当部分を遺族に承継されない場合は、利益配当部分も逸失利益となります。会社役員の基礎収入の算定会社役員の休業損害・逸失利益は、よく揉めます。一つは、収入額が多いからです。もう一つは、確...

Point個人事業主の逸失利益・休業損害算定の基礎収入額は、原則として事故前年の申告所得額によります。家族や従業員の労働も事業所得の形成に寄与している場合は、事業収益中に占める事業主の寄与割合によって基礎収入を算定します。個人事業主の基礎収入の算定自営業者、農林水産業者、自由業者(弁護士、開業医、作家、プロスポーツ選手、ホステスなど)の休業損害・逸失利益の算定基礎となる収入額は、原則として、事故前...

Point専業主婦の家事労働も金銭的に評価でき、交通事故で家事労働ができなくなった場合は、逸失利益や休業損害が認められます。専業主婦の基礎収入は、一般的に賃金センサスの女性労働者平均賃金を基礎とします。男性の家事従事者(主夫)の場合も同様に、一般的に賃金センサスの女性労働者平均賃金を基礎とします。有職主婦の場合は、現実の収入額と平均賃金額の多い方を基礎とします。専業主婦・主夫も休業損害や逸失利益が...

Point基礎収入は、原則として、賃金センサスの学歴計・男女別の全年齢平均賃金を用います。被害者が大学進学を確実視される場合は、学歴別平均賃金(大卒の平均賃金)を用いることもできます。幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方法については、1999年11月に東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部の「共同提言」により「指針」が示され、全国でほぼ同じ運用がされています。すなわち、原則として「基礎収入額を賃...

Point若年者の逸失利益の算定は、原則として、賃金センサスの全産業計・学歴計・男女別全年齢平均賃金を使用しますが、大学生の場合や大学進学が確実視される場合は、学歴別・職種別の平均賃金を使用することもできます。大卒の平均賃金を使用する場合は、就業開始年齢が18歳でなく大学卒業時の年齢となり、就労可能年数が若干短くなります。高校生や大学生など就学期間中の若年者の逸失利益は、東京地裁・大阪地裁・名古屋...

女性の逸失利益は、現実の賃金水準を反映して、どうしても低く算定されてしまいます。こういうところにも、男女間格差が存在します。しかし、とりわけ、幼い男児と女児の間で男女間格差があることは問題です。いまや、女性も多様な職業選択が可能だからです。そのため近年、裁判所において年少女子の死亡逸失利益を算定するとき、男女間格差を解消するための工夫がされています。その方法をご紹介します。なお、後遺障害逸失利益の...