小さな子どもの逸失利益も認められる

Point
  • 幼児や小学生・中学生が交通事故に遭い、後遺症(後遺障害)が残ったり、死亡したとき、逸失利益を賠償請求できます。
  • 子どもの逸失利益は、統計上の平均賃金をベースに、原則18歳から67歳までを就労可能年数として算定します。

 

幼児・小中学生が被害者の場合も逸失利益を請求できる

子どもが交通事故の被害に遭い、重い後遺障害が残ったりしたら、子どもの将来が心配なものです。普通に働いて収入を得ることが難しくなるからです。

 

「子どもの将来の生活の補償は?」と、親なら誰もが心配します。

 

「財産的損害」と「精神的損害」に対する賠償がある

交通事故が原因で後遺症が残ったら、後遺障害等級に応じて慰謝料を請求でることは言うまでもありません。加えて「後遺障害逸失利益」も賠償請求できます。

 

財産的損害といっても、子どもはまだ働いていません。しかし、いずれは働き収入を得るようになります。

 

交通事故が原因でハンディを負い、本来得られたはずの収入を得られなくなることがあります。その減収分が逸失利益です。将来の収入減ですから、子どもも賠償請求できるのです。

 

逸失利益と同じ消極損害に、休業損害がありますが、こちらは事故による怪我の治療中、休業による収入減を補填するものですから、現在働いていない子どもの場合は認められません。

 

死亡事故も慰謝料と逸失利益を賠償請求できる

死亡事故の場合も同様です。慰謝料のほか、死亡逸失利益も請求できます。

 

「子どもが死んでしまったのに、お金なんかいらない、それより子どもを返して」「加害者を厳罰に処して」と思うでしょうが、損害賠償は、親や家族がこれからの人生を何とか前向きに歩み始める上での大切なステップであることを知っておいてください。

 

子どもの逸失利益はどのように計算するのか

逸失利益は、本来、事故前の年収をベースに、何年働けるか、あるいは後遺障害が残るのは何年か、によって計算します。

 

そもそも逸失利益は、大人であっても具体的に減収額を計算できるわけではありません。将来の収入の推計です。

 

働いていない子どもの収入をどう決めるのか

まず、収入(基礎収入)をどう決めるかです。子どもの場合は働いていないので、収入はありません。そこで、統計上の平均賃金を用います。

 

具体的には、厚生労働省が毎年公表している賃金センサス(賃金構造基本統計調査)の産業計・企業規模計・学歴計・全年齢平均賃金を使います。

 

産業計・企業規模計・学歴計というのは、産業・企業規模・学歴を問わない平均ということです。小さな子どもの場合は、将来どういった職業に就くのか全くの未定ですから、すべての平均値を使うわけです。

 

なお、賃金センサスには、男女別あるいは男女計の平均賃金があります。男子の場合は、男性の全年齢平均賃金を用いますが、女子の場合、女性の平均賃金を使うと女性労働者の低賃金の実態を反映し、男子に比べ逸失利益が低く算定されてしまう男女間格差の問題があります。

 

残念ながら、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部の「三庁共同提言」でも、男女別平均賃金を用いることを原則としています。

 

なお、年少女子の死亡逸失利益の算定では、将来の職業選択の多様性があることを考慮し、男女計の全年齢平均賃金を使うことが定着してきています。

 

働ける年数・後遺障害の残る年数をどう決めるか

働ける年数(就労可能年数)については、原則的に、18歳から67歳までの49年とします。

 

後遺障害が残る期間(労働能力喪失期間)については、そもそも後遺障害は治らないことが前提ですから、通常は一生涯と考えられ49年ですが、比較的軽度で一定期間経過すれば機能回復が見込まれる場合は、労働能力喪失期間を制限されるケースがあります。

 

逸失利益の算定

このほか、後遺障害逸失利益の算定には「労働能力喪失率」、死亡逸失利益の算定には「生活費控除率」という要素が関わります。

 

また、どちらの逸失利益も、将来の損害額を賠償するものなので、現在の価額に換算するため中間利息を控除します。

 

子どもの後遺障害逸失利益・死亡逸失利益の具体的な算定方法については、次のページで解説しています。

 

幼児・小中学生・18歳未満の逸失利益の算定方法と計算例

かつて幼児の逸失利益は認められなかった

かつては、幼児の逸失利益を「算定不可能」として否定し、もっぱら慰謝料で解決しようとした時期がありました。小さな子どもの場合は、事故に遭わなければ将来どんな暮らしをしていたか、どれくらいの収入を得ていたか、予測するのは困難だからです。

 

しかし、慰謝料というのは、精神的損害に対する賠償です。一方、逸失利益は、財産的損害に対する賠償です。そもそも、精神的損害の賠償の中に、財産的損害の賠償を含めること自体に無理があります。

 

また、慰謝料額の算定が裁判所の自由裁量に委ねられ、被害者の救済に不十分であったり、逆に加害者に過度の責任を負わせることになりかねません。

 

さらに、財産的損害を慰謝料で解決しようとすると、慰謝料の算定基準をどうするかという壁にぶつかります。

 

最高裁が「幼児の逸失利益の算定は可能」と判断

こうした問題に決着を付けたのが、最高裁の1964年の判決です。最高裁は、「幼児の逸失利益を算定可能」と判断し、この判決以降は、幼児や小中学生の逸失利益が認められるようになりました。

 

最高裁は、8歳の男児が死亡した事故で、幼児の逸失利益(得べかりし利益)の算定は可能とする判断を示しました。子どもの逸失利益が認められるのは、被害者遺族による、司法の場でのたたかいの成果なのです。

 

幼児の逸失利益を算定可能とした最高裁判決

事故により死亡した幼児の得べかりし利益を算定するに際しては、裁判所は、諸種の統計表その他の証拠資料に基づき、経験則と良識を活用して、できるかぎり客観性のある額を算定すべきであり、一概に算定不可能として得べかりし利益の喪失による損害賠償請求を否定することは許されない。

 

最高裁判決(昭和39年6月24日)

 

では、どうやって逸失利益を算定するか?

 

最高裁は、同判決で、年少者の逸失利益の算定にあたって「被害者側にとって控え目な算定方法」を採用すべきとして、3つの基準を例示しました。

 

最高裁が示した年少者の逸失利益の算定方法
  1. 収入額につき疑があるときはその額を少な目に計算する
  2. 支出額につき疑があるときはその額を多めに計算する
  3. 遠い将来の収支の額に懸念があるときは算出の基礎となる期間を短縮する

 

このように「被害者側にとって控え目な算定方法」を採用することにすれば、被害者の救済ができるとともに、加害者に過当な責任を負わせることにもならない、との考えを最高裁は示しました。そして「事案毎に、その具体的事情に即応して解決されるべき」としました。

 

この最高裁判決以降は、幼児の逸失利益が認められるようになりましたが、算定方法については最高裁が抽象的な例示にとどまったため、逸失利益の算定基礎となる「収入の算出法」や「生活費の控除の仕方」について、様々な方法がとられてきました。

 

その後、1999年(平成11年)11月22日に発表された、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部の「交通事故における逸失利益の算定方式についての共同提言」を経て、現在では、年少者の基礎収入の認定方法や中間利息の控除方法について、ほぼ定型化され、全国で同じような運用がされています。

まとめ

交通事故による逸失利益は、将来の収入減による損害を賠償するものですから、被害者が幼児や小さな子どもの場合も、逸失利益を賠償請求することができます。

 

幼児や生徒の逸失利益の算定方法は、現在では定型化されています。

 

もし、保険会社の賠償金提示額が低すぎるのではないかと疑問に感じたら、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

 

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