死亡慰謝料には基準額がある

死亡慰謝料は、被害者の年齢、家族構成、扶養家族の有無などにより、基準額があります。

死亡慰謝料の算定基準

Point
  • 死亡慰謝料は、被害者の年齢、家族構成、扶養家族の有無などにより、基準額があります。
  • ただし、基準額は目安ですから、個別事情を考慮して算定する必要があります。基準額より高額な慰謝料が認められた事例もあります。

 

死亡慰謝料は、交通事故の被害者が生命を失ったことに対する精神的損害に対する賠償です。

 

交通事故の死亡慰謝料は、日常多発する交通事故を迅速・公平に処理するため、被害者の年齢や家族構成、扶養家族の有無などにより、基準化・定額化されています。

 

裁判所基準でも自賠責保険基準でも、死亡慰謝料は定額化されていて、この基準にもとづき死亡慰謝料を算定します。

 

裁判所基準として主に使用されるものには、日弁連交通事故相談センター編『交通事故損害額算定基準』(通称:青本)と日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)があります。

 

ここでは、日弁連交通事故相談センター(青本)と同東京支部(赤い本)に示された死亡慰謝料の基準額、および自賠責保険の支払基準について、ご紹介します。

 

なお、死亡慰謝料には、被害者本人分と遺族分があります。死亡事故の場合の慰謝料は、本人分と遺族分を合わせて算定します。

 

自賠責保険の支払基準では本人分と遺族分を分けていますが、裁判所基準では本人分と遺族分を合算した額を基準額としていることに留意してください。

 

「交通事故損害額算定基準」(青本)

『青本25訂版』における死亡慰謝料の基準額は、次の通りです。

 

一家の支柱の場合

2,700~3,100万円

一家の支柱に準ずる場合

2,400~2,700万円

その他の場合

2,000~2,500万円

 

「一家の支柱」とは、被害者の世帯の生計が、主として被害者の収入によって維持されている場合です。

 

「一家の支柱に準ずる場合」とは、家族の中心をなす主婦、養育を必要とする母親、独身であっても高齢な父母や幼い兄弟を扶養しあるいは仕送りをする者とされています。

 

「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(赤い本)

『赤い本2016年版』における死亡慰謝料の基準額は、次の通りです。

 

一家の支柱

2,800万円

母親・配偶者

2,500万円

その他

2,000~2,500万円

 

被害者の地位によって死亡慰謝料が異なるのは?

『青本』でも『赤い本』でも、一家の支柱が亡くなった場合の慰謝料額が、他の場合の慰謝料額よりも高くなっています。これは、一家の支柱が死亡した場合、遺族は精神的支柱を失うだけでなく、経済的支柱を失ってしまうことになるからです。

 

家族を守れず他界してしまうことによる本人の悔しさや無念さ、残された遺族の悲しみや将来への不安は、極めて大きなものです。

 

そのため、遺族の扶養的要素を死亡慰謝料に取り入れる必要があるとする判断から、一家の支柱の場合は、他の場合に比べて高い慰謝料額となっているのです。

 

自賠責基準の死亡慰謝料

自賠責保険の死亡慰謝料の支払い基準は、次のようになっています。

 

本人の慰謝料 死亡本人⇒ 350万円
遺族の慰謝料

(遺族慰謝料の請求権者は、被害者の父母・配偶者・子)
・請求権者1名⇒ 550万円
・請求権者2名⇒ 650万円
・請求権者3名⇒ 750万円
※被害者に被扶養者がいる場合は200万円加算

 

例えば、一家の大黒柱の夫が、妻と子2人を残して死亡したときの慰謝料は、

 

  1. 死亡本人分の慰謝料が、350万円
  2. 遺族の慰謝料は、請求権者は3名(妻と子2人)なので、750万円
  3. 被害者に被扶養者がいるので、200万円を加算

 

よって、死亡本人分と遺族分を合わせた慰謝料額は、

 

350万円+750万円+200万円=1,300万円

 

なお、死亡事故の場合、自賠責保険の支払限度額は、この慰謝料と葬儀費、逸失利益を合わせて3,000万円です。賠償額が支払限度額を上回ると、その部分は任意保険から支払われます。

死亡慰謝料には被害者本人分と遺族分がある

死亡慰謝料には、被害者本人分と遺族分があります。裁判所基準では、「死亡した被害者本人の慰謝料」と「遺族の固有の慰謝料」を合算した額を基準額としています。

 

これは、死亡した被害者本人の慰謝料請求権は、相続人が相続するとともに、民法711条(近親者に対する損害の賠償)の規定により、被害者遺族にも固有の慰謝料請求権が発生することを考慮しているからです。

 

民法711条(近親者に対する損害の賠償)

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者および子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

 

死亡事故の場合の慰謝料請求は、次の3つの方法があります。

 

  1. 被害者本人の慰謝料を相続人が請求する方法
  2. 民法711条所定の遺族(父母・配偶者・子)及び、これらに準ずる者が固有の慰謝料を請求する方法
  3. 上記「1」「2」を組み合わせて請求する方法

 

「1」~「3」のいずれの方法によって慰謝料を請求しても、原則として慰謝料の総額が変わらないように裁判所では判断されます。

 

ですから、裁判所基準における死亡慰謝料の基準額は、「死亡本人の慰謝料」と「遺族固有の慰謝料」を合わせた額になっていることに注意してください。

 

重度の後遺障害が残った場合も近親者慰謝料を請求できます。この場合、被害者本人の後遺障害慰謝料に加えて近親者慰謝料を請求すると、その分、認められる慰謝料が高額になります。

 

重度の後遺障害事故の近親者慰謝料について詳しくはこちら

 

被害者本人の慰謝料請求権は相続人が相続する

被害者が死亡したとき、相続人が慰謝料請求権を相続することは、最高裁が「不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる」と判示しています。

 

慰謝料請求権は被害者が生前に請求の意思を表明しなくても相続の対象

ある者が他人の故意過失によつて財産以外の損害を被つた場合には、その者は、財産上の損害を被つた場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し、右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。

 

そして、当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰藉料請求権を相続するものと解するのが相当である。

 

(最高裁判決・昭和42年11月1日より一部抜粋)

 

最高裁判決(昭和42年11月1日)の詳細はこちら
 ※最高裁のWebサイトにリンクしています。

死亡慰謝料を増額できるケース

死亡慰謝料は、次のような場合に基準額より増額できることがあります。

 

  1. 死亡したのが一家の支柱で、被扶養者数が多い場合
  2. 加害者が酒気帯び運転だったなど悪質な過失の場合
  3. 加害者の救護義務違反で損害が拡大した場合

 

これら以外にも慰謝料が増額となる理由はあります。基準額にとらわれることなく個別事情を考慮して慰謝料請求額を算定することが大切です。

 

基準額より高額な慰謝料が認められた事例

基準額より高額な慰謝料が認められた事例をご紹介します。ほんの一例で、これら以外にもたくさんあります。

 

ここに示したのは死亡慰謝料だけで、このほか死亡逸失利益なども賠償請求できます。

 

一家の支柱の場合の慰謝料

34歳・男性(監査法人職員)の死亡事故で、本人3,000万円、妻200万円、父母各100万円、合計3,400万円の慰謝料を認めた事例。
(東京地裁・平成20年8月26日)

 

一家の支柱に準ずる場合の慰謝料

55歳・女性(主婦)の死亡事故で、本人2,400万円、夫・子各200万円、父母各100万円、合計3,000万円の慰謝料を認めた事例。
(岡山地裁・平成22年2月25日)

 

その他の場合の慰謝料

8歳・男子小学生の死亡事故で、本人2,300万円、父母各200万円、兄100万円、合計2,800万円の慰謝料が認められた事例。
(東京地裁八王子支部・平成19年9月19日)

 

加害者酒気帯びの場合の慰謝料

加害者が酒気帯びのうえ、制限速度を30キロ以上オーバーで、自動二輪車搭乗の被害者(17歳・男子高校生)に追突し、被害者が死亡した事故で、慰謝料3,000万円を相当とした事例。
(大阪地裁・平成12年1月19日)

 

加害者救護義務違反の場合の慰謝料

5歳の男子が道路を横断しようとしたところ、ひき逃げに遭い死亡した事故で、本人分2,400万円、父母各300万円、合計3,000万円を相当とした事例。
(東京地裁・平成24年7月18日)

まとめ

死亡慰謝料は、ほぼ定額化・基準化されており、この基準にもとづき、算定します。

 

死亡慰謝料には、被害者本人分と遺族固有分が含まれます。通常は本人分と遺族分を合算して、死亡慰謝料額を算定します。

 

なお、場合によっては基準額を上回る慰謝料額を認められることがあるので、個別事情を考慮して慰謝料を算定し、請求することが大切です。

 

ただし、個別事情を考慮して正当な慰謝料額を算定することは素人では難しいので、詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士法人・響

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