保険会社に負けない交渉術・7つの示談交渉テクニック

保険会社に負けない交渉術

 

交通事故の示談交渉で、保険会社に負けない交渉術をご紹介します。単なる小手先の交渉テクニックではありません。実際の交通事故の示談交渉における「弁護士の交渉術」をまとめた、いわば「プロの交渉術」です。

 

示談交渉で主導権を握り、正当な損害賠償金額を取得するための「7つのテクニック」として、まとめましたので、参考にしてみてください。

 

7つの示談交渉テクニック
  • ① 事故状況を正確に把握し、情報の優位性で相手を圧倒する。
  • ② 損害額を算定し、最大限の額を賠償請求する。
  • ③ 冷静に法と証拠で勝負する。
  • ④ 示談交渉は書面で行う。
  • ⑤ 2~3割減くらいは譲歩する心づもりで交渉に臨む。
  • ⑥ 裁判を恐れない強気の姿勢を相手に示す。
  • ⑦ 最終局面では内訳を気にせず総額で判断。

 

詳しく見ていきましょう。

 

 

① 事故状況を正確に把握し、情報の優位性で相手を圧倒する

事故現場

 

事故状況を正確に把握し、情報の優位性を相手に認識させることが、示談交渉で主導権を握るための大前提です。

 

そのためには、事故状況について記録し、証拠や証言を集めておくことが大事です。

 

事故の状況を可能な限り記録しておく

事故が発生したときの状況を一番知っているのは、当事者です。被害者は、いうまでもなく事故の当事者。対する保険会社の担当者は、当事者である加害者の主張にもとづいて交渉する第三者にすぎません。

 

ですから、事故が発生したときの情報量については、被害者の方が、相手の保険会社の担当者より勝っているのです。

 

とはいえ、記憶は、時間の経過とともに曖昧になるもの。事故の状況について可能な限り記録を残しておくことが大切です。

 

正確な事故状況の把握は、賠償責任の有無や過失割合の判断に大きく影響します。保険会社との「たたかい」は、事故直後から始まっているのです。

 

証拠集め・目撃者探し

被害者と加害者で主張が大きく食い違う場合は、保険会社を納得させられる客観的な証拠と目撃者の証言が不可欠です。

 

日が経つと、事故の痕跡も消えてしまいます。事故直後、速やかに事故状況を記録し、証拠を集めておくことが大事です。目撃者の連絡先、証言内容を記録しておくことも大切です。

 

救急搬送されるなどして事故直後にできなかった場合は、できるだけ早く事故現場に行き、事故状況の記録や証拠集め、目撃者探しをしておきましょう。

 

あとから事故現場に行くと、事故直後には気が動転していて気づかなかったことを発見できる場合もあります。「いまさら事故現場を見に行ってもしかたない」と諦めてはいけません。

 

「自分で証拠を集めて目撃者を探すなんて無理!」なら…

そんなときは、弁護士に相談しましょう。プロの目で、有利な証拠や証言を見つけられる可能性があります。

 

 ※交通事故被害の損害賠償請求に強い弁護士に無料で相談できます。

 

 

事故後の対応について、さらに詳しく

 

② 損害額を算定し、最大限の額を賠償請求する

損害額の算定

 

一般的には、相手方の任意保険会社が一括対応しますから、治療が終了し、被害者の損害額が確定すると、相手方保険会社から、賠償金額の提示があります。

 

多くの場合、この保険会社の提示額をベースに交渉しますが、これでは、保険会社に主導権を握られてしまいます。

 

被害者の側が、示談交渉で主導権を握るためには、被害者の側で損害額を算定し、最初に、請求可能な最大限の額を賠償請求することが大事です。

 

なぜ、被害者が損害額を算定して賠償請求すべきなのか?

「加害者の側から誠意ある金額を提示するのが筋だ!」という方もいるでしょう。しかし、それでは、示談交渉で主導権を握ることはできません。

 

みずから損害額を算定せず、保険会社の提示額に対して異論を唱え、増額を要求する方法は、しょせん「相手の土俵」でのたたかいです。

 

こちらから、増額すべき根拠も示せないと、交渉にすらなりません。相手からすると、言いがかりでしかないのです。到底、賠償金アップは叶いません。

 

被害者の側が示談交渉で主導権を握るには、被害者が被った損害の全てについて、賠償請求可能な損害額を最大限請求し、そこから「いくら負けるか」の交渉をする必要があるのです。

 

示談とは、双方が譲歩しあって和解することです。

 

損害賠償を請求する側が、最初に最大限の額を請求し、相手の回答を引き出す手法を採ることによって、示談交渉の主導権を握れます。

 

相手も、賠償額の上限が明確になるため譲歩しやすく、示談がまとまりやすくなるのです。

 

これが、示談交渉における「プロの交渉術」です。

 

損害額は裁判所基準で算定する

被害者が損害額を算定するときには、裁判所基準で計算します。

 

裁判所基準とは、裁判例をもとに、賠償請求できる損害費目や損害額を基準化したもので、裁判で認められるレベルの適正な損害額を算定できます。裁判基準とか弁護士基準ともいいます。

 

損害額算定基準

自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準の違いについて詳しくはこちら

 

保険会社が提示する金額は、保険会社の保険金支払基準で計算するため、被害者が本来受け取れる正当な賠償金額に比べて低い水準にとどまるのです。

 

裁判所基準で算定すると、自賠責保険の支払基準で算定した場合に比べて、3~4倍高い金額となることも珍しくありません。これだけの差があるからこそ、示談交渉する意味があるのです。

 

正確な損害額の計算は、被害者の側でないとできない

正確な損害額の計算は、被害者の側でなければできません。

 

特に、逸失利益(休業損害や将来の収入減)は、被害者の事故当時の収入を基準に算定しますから、被害者が収入を証明する書類を用意し、正確な損害額を算定して賠償請求することが必要なのです。

 

保険会社が提示する金額は、治療費など実費を支払うものは別として、あくまでも一般的なケースを想定し、保険会社の基準で算出した金額にすぎません。

 

被害者の側が、損害額の算定根拠とした証拠書類を保険会社に示すことで、示談交渉で優位に立ち、主導権を握ることができるのです。

 

 

裁判所基準で損害額を計算するには?

被害者自身が、裁判所基準で損害額を算定し、保険会社の担当者と対等に交渉するのは、あまりにも負担が大きすぎます。

 

しかも、仮に裁判所基準で損害算定ができたとしても、保険会社は、弁護士が介入しない限り、裁判所基準での交渉に応じることはありません。苦労して損害を計算しても、それに見合う成果は得られないのです(⇒詳しくはこちら

 

 

弁護士に頼むと、裁判所基準で損害額を算定し、保険会社と交渉してもらうことができます。ただし、交通事故被害の損害算定は、弁護士でも、馴れていないと正しい算定ができません。実績ある弁護士に相談するのが一番です。

 

 ※交通事故被害の損害賠償請求に強い弁護士に無料で相談できます。

 

③ 冷静に法と証拠で勝負する

証拠

 

示談交渉は、「法と証拠にもとづき冷静に」が鉄則です。感情的になったら負けです。請求の根拠を示して冷静に交渉すれば、相手から譲歩を引き出せる可能性があります。

 

法と証拠にもとづく示談交渉とは

「法と証拠にもとづく」とは、損害賠償請求に法的根拠があり、請求額の正当性を証明する証拠もある、ということ。裁判になった場合でも、裁判所が認める根拠や証拠があることです。

 

保険会社は、自社の支払基準が、裁判所基準に比べて低いことは百も承知しています。その一方で、裁判になったらどのような結果になるか、も考えながら交渉します。

 

ですから、保険会社は、法外な要求には応じませんが、法と証拠にもとづく請求であれば、譲歩する場合があるのです。

 

感情的になると、相手から裁判に持ち込まれることもある

冷静に交渉することも大切です。保険会社の対応に怒りを感じることもあるでしょう。しかし、感情的になっては、良い結果を生みません。

 

示談交渉で、感情的になって激しい口調で抗議を続けると、保険会社は弁護士に委任します。交渉相手が、保険会社の示談担当者から弁護士に移ります。「弁護士に任せたので、文句があるなら弁護士に言ってください」というわけです。

 

弁護士に抗議を続けると、弁護士は、すぐに債務不存在確認訴訟を提起します。「言いたいことがあれば、法廷で言ってください」と。

 

債務不存在確認訴訟とは、被害者に対して支払う損害賠償債務は、保険会社の提示額を超えて存在しないことを確認する裁判です。こうなると、示談交渉でなく、裁判で争うことになってしまい、解決まで時間も費用もかかってしまいます。

 

保険会社の対応に冷静でいられない気持ちは理解できますが、感情的になると、相手から裁判に持ち込まれてしまうこともあり、決して良い結果にはならないのです。

 

④ 示談交渉は書面で行う

メールで交渉

 

保険会社の担当者は、知識も経験も豊富なプロです。直接会って交渉すると、相手のペースに引き込まれ、主導権を握られてしまいます。

 

ですから、示談交渉は、基本的に書面で行うことをおすすめします。書面やメールで交渉すると、交渉の経過が残り、「言った、言わない」の争いを防止できるメリットもあります。

 

直接会って交渉すると、その場の雰囲気に流されて承諾してしまい、「あとで考えると失敗だった」と後悔することがありますが、書面ならじっくり考えて返答できます。だれかに相談した上で返答することもできます。

 

直接会って交渉するときは即答を避ける

もちろん、直接会って交渉することが必要となる場合もあります。

 

その際、記憶が曖昧な部分を聞かれたり、想定していなかった質問をされることもあります。そんなときは、その場で即答せず、確認してから回答することを伝え、あとで回答するようにします。

 

相手が示談を急かすときは要注意

被害者が生活費にも困っているような状況なら、保険会社は、そこに付け込んで、早急に示談するよう迫ってくる場合があります。そういう場合は、往々にして提示額が低いのです。

 

いったん示談すると、やり直しや追加請求ができません。生活費にも困っているような状況なら、先に自賠責保険に仮渡金請求をすることもできます。示談するかどうかは、慎重に判断してください。

 

 

保険会社との対応で困ったときは…

「どう対応したらいいか分からない」という場合は、自分だけで判断せず、弁護士に相談してみましょう。

 

任意保険会社と一括払いで交渉を続けてよいのか、自賠責保険の被害者請求を活用した方がよいのかなど、お困りのこと、ご心配なこと、何でも無料で相談できます。

 

保険会社との交渉を、弁護士に全て任せることもできます。

 

 ※交通事故被害の損害賠償請求に強い弁護士に無料で相談できます。

 

⑤ 2~3割減くらいは譲歩する心づもりで交渉に臨む

落としどころ

 

示談は、双方が譲歩しあって和解することです。どちらかが一方的に譲歩する解決方法ではありません。ですから、被害者の側も、ある程度は譲歩しなければなりません。

 

どれくらい譲歩すればよいかは、個別事情により異なりますが、一般的には、裁判所基準で算定した額の7~8割程度で示談できればよいといわれています。もちろん、これは、弁護士が裁判所基準で損害算定して交渉する場合です。

 

「請求額から2~3割程度は譲歩することもやむを得ない」と、気持ちにゆとりをもって示談交渉に臨むと、早期解決が見込め、良い結果につながることが多いようです。事前に弁護士と「落としどころ」を話し合っておくとよいでしょう。

 

「絶対に譲歩する気はない」というのなら、示談交渉は成り立ちません。すぐにでも訴訟に切り替え、裁判で決着を付けることを考える方がよいでしょう。

 

ただし、裁判となると、解決までに時間も費用もかかります。裁判のメリット・デメリットを考えて、慎重に判断することが大切です。

 

 

⑥ 裁判を恐れない強気の姿勢を相手に示す

裁判

 

どうしても譲歩できないこともあるでしょう。そういう場合は、いざとなったら「出るところへ出る」と、裁判も恐れない強気な姿勢を示すことで、示談交渉が有利に進むこともあります。

 

保険会社の担当者から、「これでダメなら裁判で解決するしかありません」と言ってくることがありますが、こちらが裁判を恐れていると足元を見られます。相手は、こちらの反応を見ているのです。

 

裁判をして困るのは、本当は保険会社の側

無用な裁判をしたくないのは、保険会社も同じです。むしろ、一般的には、保険会社の方が、裁判をすることによるデメリットが大きいのです。

 

示談なら被害者側から譲歩を引き出せますが、裁判で被害者側の主張が認められると、満額支払いとなります。さらに、示談の場合には支払う必要がない弁護士費用や遅延損害金についても、判決では支払いを言い渡されます。

 

被害者の側が正当な損害賠償を請求しているなら、裁判をして困るのは、実は保険会社なのです。

 

ただし、実際に裁判を起こすかどうかは、具体的な諸事情を考慮する必要があります。裁判をして勝てるのか、どれくらいの期間や費用がかかりそうか、裁判の見通しについて弁護士とよく相談することが大切です。

 

交通事故民事裁判の審理期間と費用の目安はこちらでまとめています。

 

ADR機関(裁判外紛争解決機関)に申し立てる

「出るところへ出る」というのは、裁判だけではありません。ADR機関(裁判外紛争解決機関)に申立てをする方法もあります。

 

交通事故のADRでよく利用されるのは、交通事故紛争処理センター(紛セ)日弁連交通事故相談センター(弁セ)です。

 

「紛セ」や「弁セ」は、無料で利用できるほか、裁判所基準で損害額を算定し、示談を斡旋してくれます。保険会社や共済組合は、裁定に従う義務もあります。

 

「ADRに申し立てる」と言えば、それだけで保険会社が示談金の引き上げに応じることもあります。

 

被害者側が「出るところへ出る」と強い姿勢を見せることは、示談交渉において重要なポイントなのです。

 

⑦ 最終局面では内訳を気にせず総額で判断

最終判断

 

損害額は、個々の損害を積み上げて算定します。そうやって算出した総損害額から、被害者にも過失がある場合は過失相殺をして、加害者が被害者に支払う賠償額(示談金の額)が決まります。

 

示談交渉の過程では、1つ1つの損害額について吟味することが必要ですが、最終局面では、賠償金(示談金)の総額で判断することが大切です。

 

例えば、「示談金の額は満足できるけれど、過失割合が納得できない」として示談せず、裁判で決着をつけようとするのは得策ではありません。

 

保険会社としては、「過失割合については譲れないけれども、その分、慰謝料を増額しましょう」というような場合があるからです。

 

また、裁判をすれば、必ず被害者の主張が認められるとは限りません。場合によっては、示談交渉で保険会社から示されていた示談金より少ない金額しか認められないことがあるのです。

 

示談金の総額が納得できる金額にまで交渉が進んだのなら、内訳を問題にする必要は全くありません。示談交渉の最終局面で、示談するか否かを判断するときは、示談金の総額で判断することが大切です。

 

まとめ

保険会社に負けない交渉術・交渉テクニックについて、7点にわたって見てきました。

 

正当な損害賠償を受けるには、事故状況の正確な把握と、裁判所基準にもとづく損害額の算定など、交渉前の準備が重要です。

 

そのうえで、請求可能な正当な損害額を最大限、最初に賠償請求し、いくら減額に応じるか、という交渉スタイルに持ち込むことで、主導権を握って示談交渉することができます。

 

とはいえ、被害者がこれを行うのは、かなりハードルが高いことです。

 

まず、裁判所基準での損害算定が、素人には困難です。さらに、仮にその算定ができたとしても、保険会社がその金額での交渉に応じることはありません。保険会社は、弁護士が被害者の代理人として出て来たら、裁判所基準での支払い交渉に応じるというスタンスだからです(⇒詳しくはこちら

 

被害者が無理をして損害額を算定し、賠償請求したとしても、たいていは、保険会社の提示額をベースに、いくら増額できるかの交渉となってしまい、賠償額の大幅アップは望めないのです。

 

ですから、無理をせず、弁護士に頼むことも考えてみましょう。弁護士に任せれば、示談交渉のことで心配することなく、治療に専念できます。しかも、自分で示談交渉するより、示談金額の大幅アップが望めるのです。

 

 

とりあえず、裁判所基準で損害額を計算すると、どれくらいの金額になるか、弁護士に相談してみて、大幅にアップできそうなら、弁護士に示談交渉を依頼することを考えてみてはいかがでしょうか?

 

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【参考文献】
・『交通事故の損害計算と示談交渉のテクニック』(日本法令)
・『交通事故と示談のしかた』(自由国民社)

 

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