示談の法的性格と効力とは?

Point
  • 交通事故における示談とは、損害賠償額について被害者と加害者が裁判外で話し合い、互いに譲歩しあって合意する民法上の和解契約です。
  • 示談が成立すると、被害者は「示談した金額以外の請求権を放棄」したことになります。
  • いったん示談が成立すると、やり直しは、原則としてできません。

 

示談とは当事者の話し合いで解決すること

示談とは、交通事故の加害者と被害者が、裁判所を介さず、当事者同士で話し合い、事故による損害賠償を解決することです。

 

加害者が被害者に対して一定額の賠償金(示談金)を支払うことを約束し、被害者はその金額で納得したとする契約です。

 

「話し合いなんだから、何かあれば、また後で話し合えばいいんじゃない?」などと安易に考えていると、取り返しがつかないことになってしまいます。

 

まず、このことだけは覚えておいてください。示談は、やり直しができません!

 

目次
  1. 示談とは民法上の和解契約
  2. 被害者が知っておきたい示談の3つの注意点
  3. まとめ

 

弁護士法人・響

示談とは民法上の和解契約

民法に示談の直接的な規定はありませんが、示談の法的性格は、民法上の和解契約と解されています。

 

示談が「民法上の和解契約と同じ法的性格」ということには、被害者にとって重要な意味があります。和解契約についての民法の規定を見ておきましょう。

 

民法695条(和解)

和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

 

民法696条(和解の効力)

当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、または相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証または相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、または消滅したものとする。

 

特に「和解の効力」に注目してください。条文は少々分かりにくい表現ですが、簡単にいえば「いったん和解をした以上、たとえ後から和解したことと違った確証が出てきても、もはや和解の内容を変更することはできない」(『口語民法』自由国民社)ということです。

 

つまり、民法が定めた和解の効力によって、示談も同じく、「いったん示談した以上、たとえ後から新たな事実が判明しても、示談の内容を変更することはできない」のです。

被害者が知っておきたい示談の3つの注意点

民法が定める和解契約の意味や効力をふまえ、交通事故の被害者が知っておくべき「示談の3つの注意点」をまとめておきます。

 

 

示談では、事故の当事者双方が互いに譲歩する

民法695条の条文にあるように、示談は、当事者が互いに譲歩をして合意することです。一方の主張が全面的に通り、もう一方が全面的に譲歩するわけではありません。

 

示談交渉で解決しようとする場合には、「被害者の側も、ある程度の譲歩が求められる」ということを知っておいてください。

 

もし「絶対に譲歩したくない」というのであれば、損害賠償請求訴訟を提起するしかありません。

 

示談交渉で譲歩することを見越して、最大限請求する

示談交渉で一定程度は譲歩することを見越して、しっかりと損害額を裁判所基準で算定し、本来賠償を受けられる正当な金額を最大限請求することが大切です。

 

被害者にとって示談交渉は、賠償請求した金額から「いくら “まけるか”」の交渉なのです。

 

示談すると、それ以上の請求ができなくなる

いったん示談すると、それ以上の損害賠償請求はできなくなります。これが、被害者にとって大事なポイントです。

 

示談(和解)とは、加害者が、被害者に一定額の損害賠償金額を支払う約束なのですが、逆に、被害者は、示談した金額以外の請求権を放棄する(示談した金額以外に加害者に対して損害賠償を請求しない)という約束でもあるのです。これが、示談の効力です。

 

例えば、100万円で示談したとします。

 

これにより加害者は、被害者に100万円支払わなければなりませんが、100万円以上支払う義務はなくなります。逆に被害者は、加害者に100万円を請求する権利を有しますが、100万円以上を加害者に請求することはできなくなります。

 

100万円で示談したということは、その事故の損害賠償金が100万円であったことを被害者と加害者の双方が確認・合意し、被害者は、示談した金額以外の請求権を放棄したことになるのです。

 

示談は原則として「やり直し」ができない

示談は、一度成立すると、原則として「やり直し」ができません。示談は、民事上の責任の解決を意味するからです。民事上の責任とは、損害賠償責任のことです。

 

民法696条の規定から、たとえ後から示談したことと違った確証が出てきても、示談の内容を変更することはできないので注意してください。

 

示談書には清算条項が盛り込まれる

示談書には「今後本件に関しては、双方とも、裁判上または裁判外において、一切異議、請求の申し立てをしないことを誓約いたします」といった清算条項(権利放棄条項)が盛り込まれます。

 

あとから、もっと損害があったことが分かっても、「追加請求」も「やり直し」もできません。示談交渉の前に、漏れなく損害額を算定することが大切なのです。

 

示談の「やり直し」ができる例外

予想外の後遺症が発生した場合は、示談のやり直し(追加請求)が認められる場合があります。また、虚偽・錯誤・詐欺・強迫などによる示談の場合は、無効・取り消しとすることができます。

 

とはいえ、示談のやり直しが認められるのは、極めて稀なケース。よほどの事情がない限り、示談のやり直しはできません。

 

まとめ

示談の法的性格は民法の和解契約と同じですから、示談すると示談した以外の損害賠償請求権を放棄することになります。

 

いったん示談すると、原則としてやり直しができませんから、慎重に示談することが大切です。示談金(賠償金)に納得できなければ、決して示談してはいけません。

 

また、示談は、当事者が互いに譲歩して解決する方法ですから、示談交渉に先立ち、法的に正当な損害額を算定し、最大限、賠償請求することが大切です。

 

法的に正当な損害額の算定には専門的な知識が必要です。交通事故の損害賠償請求に詳しく、示談交渉に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士法人・響

 

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