LAC基準で着手金・報酬金の算定基礎となる経済的利益とは?

LAC基準で着手金・報酬金の算定基礎となる経済的利益とは?

弁護士保険の保険金支払基準(LAC基準)では、着手金・報酬金(成功報酬)の算定基礎となる経済的利益の額は、弁護士が介入して増額する部分が原則です。経済的利益の範囲をめぐってトラブルになることがあるので注意が必要です。

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経済的利益の額と範囲

 

弁護士保険の保険金支払基準(LAC基準)では、着手金・報酬金は、経済的利益の額を基準として算定することになっています。

 

この経済的利益の考え方によって、弁護士費用に大きな差が生じます。

 

LAC基準にもとづいて請求しないと、弁護士保険から保険金(=弁護士費用)が支払われないことがありますから、注意が必要です。

 

経済的利益の考え方について、詳しく見ていきましょう。

 

経済的利益の考え方で、トラブルになりやすいケース

LAC基準において、経済的利益とは、弁護士の介入によって増額される部分を原則としています。

 

経済的利益の範囲をめぐり、トラブルになりやすいのが、次の2つのケースです。

 

「賠償金額の全体」vs「弁護士の介入で増額できた部分」

賠償額の全体を経済的利益とするか、弁護士の介入で増額できた部分を経済的利益とするかで、弁護士費用が大きく違います。

 

LAC基準では、弁護士が介入したことで増額できた部分を経済的利益とし、着手金・報酬金を計算します。

 

相手方の保険会社が事前に提示していた金額を含めた賠償額全体を経済的利益として、弁護士費用を算定し、請求することはできません。

 

「請求額」vs「取得額」

示談交渉において、賠償請求した金額を満額受け取れることは、ほとんどありません。示談交渉は双方が譲歩しあって解決するものですから、請求額より取得額が少ないのが普通です。

 

LAC基準では、着手金は賠償請求額、報酬金は取得できた賠償額を基準とし、弁護士の介入で増額できた部分を経済的利益として、着手金・報酬金を計算します。

 

報酬金は、賠償請求額を基準に算定して請求することはできません。

経済的利益の範囲の違いで、弁護士費用はどれくらい変わる?

経済的利益の範囲の考え方の違いで、弁護士費用がどれくらい変わるか、具体的に見てみましょう。次のような事例で考えます。

 

  • 保険会社の提示額:500万円
  • 賠償請求額:2,000万円
  • 取得した損害賠償額:1,600万円

 

保険会社からの提示額が500万円。弁護士に算定してもらった損害額が2,000万円。これを損害賠償請求し、示談交渉の結果、実際に取得できた損害賠償額が1,600万円であったとします。あくまでもイメージとして考えてください。

 

着手金・報酬金の計算式は、経済的利益の額により異なります。計算方法は、LAC基準の着手金・報酬金の基準をご覧ください。

 

この事例の場合、経済的利益の額が「300万円を超え3,000万円以下の場合」に該当し、計算式は次のようになります。

 

着手金 経済的利益の5%+9万円
報酬金 経済的利益の10%+18万円

 

以下、LAC基準にもとづく正しい計算の仕方と、LAC基準にもとづかない間違った計算の仕方をご紹介します。

 

LAC基準にもとづく、正しい計算方法

着手金は請求額、報酬金は取得額を基準とし、弁護士が介入したことで増額できた部分を経済的利益とします。

 

着手金

増額分が1,500万円(2,000万円-500万円)なので、

1,500万円×5%+9万円=84万円

 

報酬金

増額分が1,100万円(1,600万円-500万円)なので、

1,100万円×10%+18万円=128万円

 

LAC基準にもとづかない、間違った計算方法

LAC基準による計算方法でないので、超過分が弁護士保険から支払われず、依頼者の負担となります。

 

着手金の算定において、請求額の2,000万円を経済的利益とする方法。保険会社からの事前提示額を控除しないので間違いです。

2,000万円×5%+9万円=109万円

 

報酬金の算定において、取得額の1,600万円を経済的利益とする方法。保険会社からの事前提示額を控除しないので間違いです。

1,600万円×10%+18万円=178万円

 

報酬金の算定において、請求額の2,000万円を経済的利益とする方法。報酬金の算定に請求額を用い、保険会社からの事前提示額を控除しないので、二重に間違っています。

2,000万円×10%+18万円=218万円

経済的利益から除外されるもの

依頼者の得られる経済的利益の額は、弁護士の介入により増額される金額とするのが、LAC基準の原則です。

 

したがって、弁護士が介入する前に、すでに支払いを受けている金額(既払金)や支払いが予定されている金額は、経済的利益の額から除きます。そのほか、簡易な自賠責保険の請求により得られる金額も除きます。

 

これらを除いた額が、着手金・報酬金の算定基礎となる経済的利益の額として、LAC基準ではルール化しています。

 

経済的利益の額から除外されるもののうち、特に注意が必要なものについて見ておきましょう。「自賠責保険に対する請求額」と「保険会社の事前提示額」の2つです。

 

簡易な自賠責保険の請求額は除外

LAC基準では、簡易な自賠責保険の請求を弁護士が行う場合、手数料方式で弁護士費用を請求することを原則としています。

 

したがって、簡易な自賠責保険の請求で取得した賠償金額は、着手金・報酬金を計算する際の経済的利益の額には含めません。

 

簡易な自賠責保険の請求とは、損害賠償請求権の存否やその額に争いがない場合の請求のことです。これを手数料方式としているのは、特別な法律事務処理は必要なく、弁護士が着手金・報酬金方式で受任するほどの内容ではないからです。

 

自賠責保険の支払額に争いがある場合(賠償責任の有無や過失割合、後遺障害等級などに争いがある場合)は、簡易な自賠責保険請求にはあたりません。

 

なお、被害者自身が自賠責保険に被害者請求し、すでに支払いを受けている場合や支払いが決まっている場合は、弁護士が代わって請求したわけではないので、手数料は発生しません。

 

保険会社の事前提示額は除外

経済的利益は、弁護士の介入により増額される部分です。

 

したがって、任意保険会社から賠償金額の事前提示があった場合には、その金額を控除した額を経済的利益として、着手金・報酬金を算定します。

 

なお、通常は任意保険の一括払い制度により、任意保険会社からの提示額は、自賠責部分を含みます。

 

ですから、任意保険会社の事前提示額を差し引けば、自賠責部分も控除されたことになり、任意保険と自賠責保険を分けて考える必要はありません。

まとめ

LAC基準で定める経済的利益は、弁護士の介入により増額できた金額です。そのため、既払金、保険会社の事前提示額、簡易な自賠責請求部分は、経済的利益に含みません。

 

弁護士保険を利用するとき、LAC基準にもとづいて弁護士費用を請求するかどうかは、依頼者にとっても無関心ではいられない問題です。弁護士費用が、弁護士保険から支払われないと、依頼者の負担となってしまいます。

 

弁護士保険を利用して弁護士に依頼するときは、交通事故の問題に強く、弁護士保険の請求に慣れている弁護士を選ぶことが大切です。

 

 

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参考文献
  • 日弁連「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」(2014年3月12日)
  • 日弁連「弁護士保険制度における保険金支払いに関するQ&A」(2014年7月)

 

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公開日 2021-06-04 更新日 2023/03/18 13:28:15