着手金・報酬金の算定基礎となる経済的利益の範囲

弁護士費用は、依頼者の経済的利益の額をもとに計算します。経済的利益とは、弁護士に依頼することで依頼者が得る金銭的な利益のことです。

 

弁護士保険の支払基準(LAC基準)で定める経済的利益の範囲は、賠償金額のうち、弁護士の介入によって増額された部分です。

 

弁護士保険に不慣れな弁護士の場合、LAC基準に従って請求せず、保険会社との間でトラブルとなることがあります。弁護士保険を利用するなら、LAC基準で定める経済的利益の範囲については、知っておいた方がよいでしょう。

 

目次
  1. 経済的利益の範囲で弁護士費用が変わる
  2. LAC基準で経済的利益から除外されるもの
  3. まとめ

 

弁護士法人・響

経済的利益の範囲で弁護士費用が変わる

弁護士費用は、着手金・報酬金方式が一般的です。着手金・報酬金(成功報酬)は、経済的利益の額に対する一定割合で計算されます。

 

ここで重要なのが、経済的利益の範囲です。経済的利益の範囲をどう捉えるかによって、弁護士費用が大きく違ってくるからです。

 

この場合、LAC基準に従って弁護士費用を計算し、保険会社に請求しなければ、保険会社は支払いを拒否し、トラブルになることがあります。

 

LAC基準で定める経済的利益の額はどっち?

経済的利益の範囲をめぐり、トラブルになりやすいのが、次の2つのケースです。

 

①賠償額全体か、弁護士の介入で増額できた部分か

損害賠償額全体を経済的利益とするか、弁護士の介入で増額できた部分を経済的利益とするかで、弁護士費用が大きく違います。

 

LAC基準では、弁護士が介入したことで増額できた部分を経済的利益とし、着手金・成功報酬を計算します。

 

例えば、相手方の保険会社が事前に提示していた金額を含め、賠償額全体を経済的利益として弁護士費用を計算し、弁護士保険を請求すると、トラブルになります。

 

②賠償請求額か、実際に取得できた賠償額か

損害賠償請求額が、満額認められることはほとんどありません。賠償請求額より、実際に取得できた賠償金額が少なくなるのが普通です。

 

LAC基準では、着手金は賠償請求額、成功報酬は取得できた賠償額を基準とし、弁護士の介入で増額できた部分を経済的利益として、着手金・成功報酬を計算します。

 

もし、着手金と同じように、成功報酬も賠償請求額を基準に計算して、弁護士保険を請求すると、トラブルになります。

 

経済的利益の範囲が違うと、弁護士費用はどれくらい変わる?

経済的利益の範囲の捉え方の違いで、弁護士費用がどれくらい変わるか、具体的に見てみましょう。次のような事例で考えます。

 

保険会社が提示した金額 500万円
弁護士が算定した損害額(=賠償請求額) 2,000万円
示談した金額 1,600万円

 

着手金、成功報酬の計算式は、経済的利益の額により異なります。

 

経済的利益の額が、300万円を超え3,000万円以下の場合、
・着手金は、経済的利益の5%+9万円
・報酬金は、経済的利益の10%+18万円

 

LAC基準での着手金・報酬金の計算方法はこちらを参考にしてください。

 

弁護士の介入で増額できた部分を経済的利益の額とした場合【○】

着手金は、増額分が1,500万円(2,000万円-500万円)なので、
1,500万円×5%+9万円=84万円

 

成功報酬は、増額分が1,100万円(1,600万円-500万円)なので、
1,100万円×10%+18万円=128万円

 

これが、LAC基準にもとづく正しい計算方法です。

 

賠償額全体を経済的利益の額とした場合【×】

着手金は、賠償請求額が2,000万円なので、
2,000万円×5%+9万円=109万円

 

成功報酬は、示談金が1,600万円なので、
1,600万円×10%+18万円=178万円

 

これはLAC基準による計算方法でないので、弁護士が請求を訂正しない場合は、超過分が依頼者の負担となります。

 

成功報酬を賠償請求額から計算した場合【×】

成功報酬は、
2,000万円×10%+18万円=218万円

 

これもLAC基準による計算方法でないので、弁護士が請求を訂正しない場合は、超過分が依頼者の負担となります。

経済的利益から除外されるもの

経済的利益の額は、弁護士の介入により増額される額とするのが、LAC基準の原則です。

 

したがって、弁護士が介入する前に、すでに支払いを受けている金額や支払いが予定されている金額は、経済的利益の額から除きます。そのほか、簡易な自賠責保険の請求により得られる金額も除きます。

 

これらを除いた額が、着手金・報酬金の算定基礎となる経済的利益の額として、LAC基準ではルール化しています。

 

経済的利益の額から除外されるもののうち、特に注意が必要なものについて見ておきましょう。「自賠責保険に対する請求額」と「保険会社の事前提示額」の2つです。

 

簡易な自賠責保険の請求は手数料方式

LAC基準では、簡易な自賠責保険の請求を弁護士が行う場合、手数料方式で弁護士費用を請求することを原則としています。

 

したがって、簡易な自賠責保険の請求で取得した賠償金額は、着手金・報酬金を計算する際の経済的利益の額には含めません。

 

簡易な自賠責保険の請求とは、損害賠償請求権の存否やその額に争いがない場合の請求のことです。これは、特別な法律事務処理は必要なく、弁護士が着手金・報酬金方式で受任するほどの内容ではないからです。弁護士でなくても被害者自身でも請求できます。

 

被害者自身が自賠責保険に被害者請求し、すでに支払いを受けている場合や支払いが決まっている場合は、弁護士が代わって請求したわけではないので、手数料は発生しません。

 

自賠責保険の請求であっても、賠償責任の有無や過失割合、後遺障害等級などに争いがある場合、つまり自賠責保険の支払額に争いがある場合は、簡易な自賠責保険請求にはあたりません。

 

保険会社の事前提示額は除外

経済的利益は、弁護士の介入により増額される部分です。

 

したがって、任意保険会社から賠償金額の事前提示があった場合には、その金額を控除した額を経済的利益として、着手金・報酬金を算定します。

 

なお、通常は任意保険の一括払い制度により、任意保険会社からの提示額は、自賠責部分を含みます。

 

ですから、任意保険会社の事前提示額を差し引けば、自賠責部分も控除されたことになり、任意保険と自賠責保険を分けて考える必要はありません。

まとめ

LAC基準で定める経済的利益は、弁護士の介入により増額できた金額です。そのため、既払金、保険会社の事前提示額、簡易な自賠責請求部分は、経済的利益に含みません。

 

弁護士保険を利用するとき、LAC基準に従って弁護士費用を請求するかどうかは、依頼者にとっても無関心ではいられない問題です。

 

弁護士保険の請求に慣れていない弁護士の場合、LAC基準の経済的利益の範囲をめぐり、保険会社とトラブルになることがあるからです。

 

弁護士保険を利用して弁護士に依頼するときは、交通事故の問題に強く、弁護士保険の請求に慣れている弁護士を選ぶことが大切です。

 

 

弁護士保険を利用して弁護士に頼もうと考えている方には、こちらの弁護士事務所がおすすめです。LAC基準対応の弁護士事務所ですから安心です。

 

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弁護士法人・響

 

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