なぜ、弁護士の選任に保険会社の事前同意がいるのか?

弁護士費用特約(弁護士保険)を利用する場合、どの弁護士に相談・委任するかは自由です。保険会社が紹介する弁護士でなければならない、というわけではありません。

 

ただし、「弁護士へ委任するとき」と「弁護士費用を支出するとき」に、保険会社の同意を得ることになっています。

 

それぞれの段階で、なぜ保険会社の事前同意が必要なのか、見ていきましょう。

 

目次
  1. 弁護士に委任するときに保険会社の同意が必要な理由とは?
  2. 弁護士費用を支出するときに保険会社の同意が必要な理由とは?
  3. まとめ

 

弁護士法人・響

弁護士に委任するときに保険会社の同意が必要な理由とは?

弁護士に委任する際に保険会社の同意が必要なのは、その弁護士が、日弁連リーガル・アクセス・センター(通称:LAC)の定める基準で受任が可能かを確認するためです。

日弁連LACが弁護士保険の運用上の統一した基準を定めている

まず、このことを押さえておいてください。

弁護士保険の運用にあたっては、日弁連LACが、協定損保会社と協議のうえで、「保険金(弁護士費用)の支払基準」と「契約書や請求書の統一した書式」を定めています。これを「LAC規準」といいます。

日弁連LACが統一した基準を定めているのは、保険会社が円滑に保険事務処理を行えるようにするためです。

保険会社が、LAC基準での受任の可否を弁護士に事前に確認するのは、LAC基準で受任しない弁護士は同意しないというように、弁護士を選別するためではありません。円滑に保険事務処理を行うことが目的です。

特に問題となるのは「保険金の支払基準」なので、LAC基準は、弁護士保険の保険金支払基準を指すのが一般的です。書類の統一書式と区別して、LAC報酬基準とも呼ばれます。

LAC基準を上回る報酬基準はトラブルの原因となるので事前に確認する

重要なのは、その弁護士が、弁護士報酬をLAC基準で算定し、保険金請求するか、という点です。

弁護士報酬は、弁護士が依頼者と協議の上で自由に決めるのが原則で、LAC基準には弁護士に対する強制力はありません。弁護士は独自の報酬基準で受任することができます。

LAC基準を上回る弁護士費用は、弁護士保険から支払われず、依頼者の負担となります。そのことについて依頼者の同意を得ていなければ、あとでトラブルになりかねません。

ですから、依頼者の選任した弁護士が、LAC基準で受任するか、LAC基準を上回る報酬基準で受任する場合は、依頼者の同意を得ているかを事前に確認するのです。

これは、円滑な保険事務処理を進める上で保険会社にとって重要であるだけでなく、依頼者にとっても重要なことなのです。

弁護士費用を支出するときに保険会社の同意が必要な理由とは?

弁護士費用を支出する時点で保険会社の同意が必要なのは、弁護士から請求される弁護士費用が「LAC基準にもとづいて算定されているか」を確認するためです。

 

保険金の支払基準を上回る請求については、弁護士費用が支払われず、結果的に、依頼者の負担となってしまいます。

 

LAC基準で受任することを事前に確認していても、弁護士保険の請求に不慣れな弁護士の場合は、LAC基準に従って保険金請求していないケースが少なからずあるのです。

 

トラブルになりやすいのが、弁護士報酬の算定基礎となる経済的利益の範囲です。典型的な例を2つあげておきます。

 

賠償請求額から成功報酬を算定してトラブルになる例

着手金や成功報酬は、依頼者の得る経済的利益の一定割合として算定します。

 

その際、「賠償請求額」を経済的利益とするか「得られた賠償額」を経済的利益とするかによって、弁護士報酬の額が異なります。

 

LAC基準では、大まかに言えば、着手金は「賠償請求額」を基準とし、成功報酬は「得られた賠償額」を基準として弁護士費用を算定します。LAC基準について詳しくはこちらをご覧ください。

 

通常、示談交渉では、賠償請求額が満額認められることはありません。被害者側も一定の譲歩をしますから、実際の賠償額は、請求額より少なくなります。

 

ところが、弁護士によっては、賠償額でなく請求額を経済的利益として、成功報酬を計算するケースがあるのです。

 

請求額を満額得られたのなら問題ありませんが、示談した賠償額が請求額より大幅に減額となった場合は、保険会社は支払基準の範囲でしか支払いません。

 

実際、弁護士が依頼者との間で、着手金だけでなく成功報酬も賠償請求額を基準として算定する委任契約を締結し、得られた賠償額が請求額の半分だったケースで、保険会社が支払いを拒否してトラブルになった例があります。

 

自賠責からの支払額を含め弁護士費用を算定してトラブルになる例

弁護士の委任事務と関係なく取得できた利益は、本来、弁護士報酬の対象となりません。よく問題になるのが、自賠責保険からの支払い分です。

 

自賠責保険は、被害者請求(16条請求)をすれば、損害賠償請求権の存否(加害者の損害賠償責任)に争いがある場合を除いて、比較的簡易に一定額の賠償金を受け取れます。

 

損害賠償請求権の存否やその額に争いがなく簡易に請求できる場合、加害者に対する損害賠償請求に先行あるいは並行して自賠責保険への被害者請求を行うことがあります。

 

こういう場合、LAC基準では、自賠責保険からの支払額は着手金・報酬金の算定基礎となる経済的利益に含めず、手数料として算定することになっています。

 

ところが、弁護士が、それを着手金・報酬金を算定する経済的利益に含めて弁護士費用を算定し、保険会社とトラブルになる例があるのです。

 

LAC基準では、任意保険会社が提示している賠償額や自賠責保険の既払額・簡易な請求額は除きます。つまり、弁護士が受任することで増加する額あるいは増加した額を、着手金・報酬金の算定基礎となる経済的利益とします。

 

LAC基準の経済的利益について詳しくはこちら

 

トラブルの事例は、東京弁護士会「活用してみませんか?権利保護保険」を参考にしました。

まとめ

「自分が依頼する弁護士なのに、どうして、いちいち保険会社の同意がいるの?」と思うかもしれませんが、保険会社の事前同意は、弁護士への依頼者にとっても、弁護士費用の自己負担を発生させないために、重要なことでもあるのです。

 

弁護士保険を使うときは、弁護士保険の仕組みを知った上で、弁護士に相談・依頼することが大切です。

 

その際、弁護士選びが大事です。弁護士保険に慣れていない弁護士の場合、弁護士保険の支払いをめぐりトラブルになることがありますから、注意が必要です。

 

 

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弁護士法人・響

 

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