健康保険から労災保険に途中で変更できる

病院

 

交通事故が労災(業務災害・通勤災害)だったときは、労災保険を使って治療することはできますが、健康保険を使うことはできません。健康保険を使って治療していた場合は、労災保険に切り替えることになります。

 

治療の途中で健康保険から労災保険に切り替える手続は面倒ですが、労災保険を使う方が健康保険を使うよりも有利です。

 

ここでは、健康保険と比べた労災保険のメリット、健康保険から労災保険に変更する場合の手続きについて見ていきます。

 

交通事故が労災だったとき、健康保険より労災保険を使うべき理由とは?

健康保険を使って治療中に労災保険の適用対象となることが分かったときは、健康保険から労災保険に切り替えることができます。というか、切り替えなければなりません。

 

勤務中や通勤途中の交通事故による怪我を治療するときは、健康保険でなく労災保険を使うのが原則です。それは、①そもそも法律上、労災に健康保険は使えないというだけでなく、②労災保険を使う方が、健康保険を使うよりも有利だからです。

 

法律上、労災(業務災害・通勤災害)に健康保険は使えない

そもそも法律上、労災(業務災害・通勤災害)に、健康保険は使えません。

 

法律で、どのように規定されているかというと…、

  • 健康保険法では、「労働者又はその被扶養者の業務災害(労災保険法第7条1項1号に規定する業務災害)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い…」(健康保険法1条)と、業務災害を適用除外しています。
  • また、健康保険法には「他の法令による保険給付との調整」規定があり、労災保険給付を受けられる場合は、健康保険給付は行いません(健康保険法55条1項)

 

したがって、業務災害(労災保険法第7条1項1号)はもとより、通勤災害(労災保険法第7条1項2号)も、健康保険の適用外なのです。

 

医療機関を受診するときに負傷の原因を詳しく伝え、労災に該当する場合は、最初から労災保険扱いで診療を受けることが大切です。

 

労災保険給付の認定は、勤務先を管轄する労働基準監督署が行います。業務災害・通勤災害に該当するかどうか判断が難しい場合は、労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。

 

労災保険を使う方が健康保険を使うよりメリットが大きい

労災保険を使えるときは労災保険を使う方が、健康保険を使うよりも有利です。

 

なぜなら、①健康保険は治療費の自己負担分がありますが、労災保険は自己負担なし。また、②労災保険は、休業補償給付や障害補償給付、特別支給金など消極損害に対する補償も充実しているからです。

 

ただ単に「法律で決まっているから」という理由だけでなく、積極的に労災保険を使いたい理由もあるのです。

 

労災保険は治療費の自己負担がない

健康保険を使って治療すると3割の自己負担が発生しますが、労災保険なら治療費の自己負担はゼロです。

 

もっとも、加害者が任意保険に加入していれば、治療費は任意保険会社が病院に直接支払うのが普通ですから、治療費の自己負担を心配することはありません。

 

しかし、加害者が任意保険に加入していない場合や、被害者の過失が大きい場合は、治療費を被害者自身が病院の窓口で支払うことになります。

 

治療費の自己負担がゼロということは、受診のたびに病院の窓口で治療費を支払う負担が一切ないことに加え、支払い限度額のある自賠責保険に対し、治療費以外の休業補償や慰謝料を、それだけ多く請求できるメリットがあるのです。

 

労災保険は消極損害に対する補償も充実している

健康保険は、休業補償に相当するものとして傷病手当金が支給されます。傷病手当金は、おおむね給料の3分の2に相当する金額です。

 

一方、労災保険は、休業損害の60%に相当する休業補償給付と、同20%に相当する休業特別支給金があり、あわせて、おおむね給料の8割に相当する休業補償を受けられます。

 

しかも、休業特別給付は、損害賠償額との支給調整の対象とならないので、被害者に過失がない場合は、実質、休業損害の120%に相当する休業補償を受けられるのです。

 

そのほか、労災保険には、後遺障害に対する補償もあります。健康保険は、後遺障害の概念がないので、後遺障害に対する補償はありません。

 

このように、労災保険の方が、健康保険よりも、補償が手厚いのです。

 

交通事故で労災保険を使うメリットはこちらで、詳しく説明しています。

健康保険から労災保険に変更するための手続き

労災保険が適用される交通事故なのに、健康保険を使って治療していた場合は、途中でも健康保険から労災保険に変更できます。

 

早めに保険の切り替え手続きをすれば、病院で切り替えができる場合がありますから、まずは受診した病院に、健康保険から労災保険への切り替えができるかどうかを確認してください。

 

病院で切り替えができる場合

受診した病院が労災病院や労災保険指定医療機関であれば、労災であったことを早めに病院へ申し出ると、病院で切り替えが可能です。

 

その場合は、病院の窓口で今まで支払った治療費の自己負担分が返還され、その後は治療費の窓口負担なく無料で受診できます。

 

手続としては、労災保険の療養の給付請求書を受診した病院の窓口に提出するだけです。療養の給付請求書は、業務災害と通勤災害で異なり、それぞれ次の書面です。

 

請求書 様式
業務災害 療養補償給付たる療養の給付請求書[業務災害用] 様式第5号
通勤災害 療養給付たる療養の給付請求書[通勤災害用] 様式第16号の3

 

病院で切り替えができない場合

受診した病院が労災保険指定医療機関でない場合は、病院で切り替えができません。また、労災保険指定医療機関であっても、受診から日が経つと、病院で切り替えできない場合があります。

 

病院で切り替えができない場合は、いったん医療費の全額を自己負担した上で、労災保険に請求するようになります。すなわち、健康保険からの給付額(医療機関が健康保険の保険者から支払を受けた診療報酬)を返還し、窓口負担分と合わせて療養に要した費用を労働基準監督署に請求することになります。

 

手続はこうです。まず、加入している健康保険組合等へ、労災(業務災害または通勤災害)だった旨を申し出ます。健康保険組合等から医療費返還の通知と納付書が送られてきますから、返納金を支払います。

 

次に、返納金の領収書と病院に支払った窓口一部負担金の領収書を添えて、労働基準監督署へ医療費(療養の費用)を請求します。このとき、レセプトの写しが必要になる場合がありますから、請求の際に労働基準監督署にご確認ください。

 

療養の費用請求書は、業務災害と通勤災害で異なり、それぞれ次の書面です。

 

請求書 様式
業務災害 療養補償給付たる療養の費用請求書[業務災害用] 様式第7号
通勤災害 療養給付たる療養の費用請求書[通勤災害用] 様式第16号の5

 

手続は、先に健康保険に診療報酬を返還し、その後、労災保険に医療費を請求するのが原則ですが、これにより多大な経済的負担が生じるなどの場合は、診療報酬の返還が完了する前であっても、労災請求を行うことができます。
(参考:厚生労働省「労働基準行政全般に関するQ&A」より)

 

「療養の給付」と「療養の費用」の違い

「療養の給付」は、現物給付なので自己負担がありません。労災病院や労災保険指定医療機関の場合は、療養の給付を受けられます。

 

「療養の費用」は、療養の費用を支給するもので、いったん治療費を立て替えて支払い、あとで労働基準監督署に請求します。労災保険指定医療機関でない場合は、療養の費用の支給となります。

 

各請求書は、厚生労働省のWebサイトからもダウンロードできます。

まとめ

健康保険を使って治療中に労災保険が適用されることが分かった場合、健康保険から労災保険に変更することができます。もしも、会社が労災保険に未加入であっても、労災保険の請求はできます。

 

本来は、労災に健康保険を使うことはできませんから、健康保険を使って治療しているときでも、交通事故が労災に該当することが分かった段階で、健康保険から労災保険に切り替えなければなりません。

 

しかも、労災保険の方が、健康保険に比べて、被害者にとって有利です。

 

受診した病院が労災保険指定医療機関であれば、早めに切り替えを申し出れば、手続は面倒ではありません。

 

ただし、労災保険指定医療機関でない場合は、切り替えは面倒ですし、一時的に医療費の全額自己負担も発生します。それでも、労災保険を使うと、最終的に有利な結果となります。

 

交通事故の相談は 弁護士法人 響 へ

 

交通事故の被害に遭ってお困りの方は、お気軽に何でもご相談ください。


弁護士法人・響は、月間相談実績1,000件超。当サイトでも最も無料相談の申込みの多い弁護士事務所です。テレビの報道番組で法律問題を解説するなど知名度もあり、安心して任せられます。


相談無料・着手金0円・全国対応


交通事故の被害者専用フリーダイヤル

0120-690-048(24時間受付中)
相談をお急ぎの方は、こちらのフリーダイヤルにかけると、優先して対応してもらえます。メールでの無料相談のお申込み、お問合せは、公式ページからどうぞ。


 

【参考文献】
・中込一洋『交通事故事件社会保険の実務』学陽書房 84~86ページ
・厚生労働省「お仕事でのケガには労災保険」2ページ
・全国健康保険協会「仕事中や通勤途中にケガをしたとき」「病気やケガで会社を休んだとき

ページの先頭へ戻る