刑事裁判の公判中でも刑事記録を入手できる

Point
  • 実況見分調書・写真撮影報告書・供述調書など刑事記録は、刑事裁判の公判中でも、被害者や遺族が請求し、閲覧・謄写できます。
  • ただし、加害者の起訴・不起訴が決まった後でなければ請求できず、不起訴処分となった場合は、開示が制限されます。

 

刑事確定記録は、だれでも閲覧できる

刑事記録は、もともと刑事裁判が終結・確定したときに、閲覧できる制度になっています。

 

刑事訴訟法 第53条1項
何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。

 

ですから「刑事確定記録」は、基本的に誰でも開示請求して閲覧することができます。交通事故の刑事裁判の確定記録とは、警察や検察が作成した、実況見分調書・写真撮影報告書・加害者や目撃者の供述調書などです。

 

「確定記録」である点に注意してください。刑事確定記録とは、終結・確定した刑事裁判の刑事記録です。

 

被害者や遺族は、公判中の刑事記録も開示請求できる

しかし、交通事故の被害者や遺族にとっては、「刑事裁判が確定するまで待つ」など悠長なことは言ってられません。

 

刑事記録は、示談交渉や損害賠償請求訴訟を勧めるにあたって、事故の状況を証明する有力な証拠となります。

 

そこで、犯罪被害者保護法において、被害者や遺族が「損害賠償請求で必要」であるなど、正当な理由がある場合は、刑事裁判の係争中でも刑事記録の閲覧・謄写が認められるようになっています。

 

実況見分調書を過信してはいけない

実況見分調書は、警察が作成したもので、事故の状況を証明する有力な証拠となります。

 

しかし、加害者側に有利な内容となっている場合が多いのも事実です。特に、死亡事故や被害者が重体の場合は、被害者の主張が反映されませんから、加害者の一方的な主張で作成されます。

 

そういう場合に備え、被害者側が独自に証拠や目撃証言を集め、事故の状況を正確に把握することが大切です。

刑事記録の開示請求で注意すべきこと

被害者や遺族は刑事裁判の係争中でも刑事記録の開示請求ができますが、その際、注意すべき点があります。

 

  1. 起訴・不起訴の決定後でないと請求できない
  2. 刑事事件として起訴された場合は、基本的に全て開示される
  3. 不起訴処分となった場合は、開示が制限される

 

①起訴・不起訴の決定後でないと請求できない

加害者(被疑者)の起訴・不起訴の処分が決定された後でなければ、刑事記録の閲覧・謄写の申請はできません。

 

法律では、「第一回の公判期日後、当該被告事件の終結までの間」に請求があった場合に、認められる仕組みになっています(犯罪被害者保護法第3条1項)

 

②刑事事件として起訴された場合は、基本的に全て開示される

刑事事件として加害者(被疑者)が起訴された場合は、基本的に全て開示対象となります。

 

刑事記録の閲覧・謄写の申請があったとき、裁判所は、検察官と被告人(または弁護人)の意見を聴き、次の場合を除き、閲覧・謄写を認めます。

 

  • 閲覧または謄写を求める理由が正当でないと認める場合
  • 犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧または謄写をさせることが相当でないと認める場合

 

1つ目の「閲覧・謄写を求める理由の正当性」については、被害者や遺族が請求する場合は基本的に問題ありません。

 

しかし、2つ目の「閲覧・謄写させることの相当性」については、関係者のプライバシーや公判の運営に支障が生じるなどの理由から、開示されないこともあり得ます。特に、客観的証拠に分類されない供述調書については、その可能性があることに留意してください。

 

犯罪被害者保護法 第3条1項
刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。

 

③不起訴処分となった場合は、開示が制限される

加害者(被疑者)が不起訴処分となった場合は、開示される刑事記録(不起訴記録)に制限があります。

 

実況見分調書や写真撮影報告書は開示されますが、供述調書は原則「非開示」です。これは、客観的証拠について閲覧を認めるという運営がなされているからです。

 

つまり、実況見分調書や写真撮影報告書は客観的証拠なので開示されますが、供述調書は客観的証拠でないという理由から開示されません。

 

ただし、民事裁判を提起しているときに限り、例外的に供述調書の開示が認められることがあります。

 

不起訴記録中の供述調書の開示に関する法務省の方針

「不起訴記録」のうち供述調書の開示について、法務省は、次の4つの要件を全て満たす場合に限り開示する方針を示しています。

 

  • 民事裁判所から、不起訴記録中の特定の者の供述調書について文書送付嘱託がなされた場合であること。
  • 当該供述調書の内容が、当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであって、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど、その証明に欠くことができない場合であること。
  • 供述者が死亡、所在不明、心身の故障若しくは深刻な記憶喪失等により、民事訴訟においてその供述を顕出することができない場合であること、または当該供述調書の内容が供述者の民事裁判所における証言内容と実質的に相反する場合であること。
  • 当該供述調書を開示することによって、捜査・公判への具体的な支障又は関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく、かつ、関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない場合であること。

 

不起訴記録の開示についての法務省の方針はこちら
 ※法務省のWebサイトにリンクしています。

 

刑事記録を開示請求するときには、弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

刑事記録は、加害者の起訴・不起訴の処分が決まれば、被害者や遺族から開示請求できます。実況見分調書や写真撮影報告書は基本的に開示されますが、供述調書は開示が制限される場合があります。

 

刑事記録は、被害者や遺族が請求できますが、刑事記録が必要となるくらい示談交渉が難航するようなら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

 

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