被害者に過失があれば、過失割合に応じて損害賠償額が減額される

過失相殺

 

交通事故で被害者にも過失がある場合は、被害者の過失割合に応じて損害賠償額が減額されます。これを過失相殺といいます。

 

たとえ適正な損害額を算出しても、過失相殺により大幅に損害賠償額を減額されることがあるので、過失割合・過失相殺率を決めるときには注意が必要です。

 

ここでは、過失相殺とはどんなものか、過失相殺は法律でどのように規定されているか、過失相殺の対象となる過失の具体例について見ていきます。

 

目次
  1. 過失相殺とは、損害の公平な分担を図る制度
  2. 過失相殺は法律でどのように規定されているか
  3. 過失相殺の対象となる被害者の過失の具体例
  4. まとめ

 

 

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過失相殺とは、損害の公平な分担を図る制度

交通事故は、加害者が一方的に悪いというケースは稀です。たいてい、加害者だけでなく被害者にも何らかの過失があり、それが重なって発生します。

 

過失相殺とは、「事故の原因や損害の発生・拡大に被害者の過失があるときは、被害者の過失にもとづく損害を加害者に転化すべきでない」として、被害者の過失割合に応じて賠償額を減額することを認めた制度です。

 

つまり、当事者間の過失割合に応じて、損害の公平な分担を図るのが過失相殺の理念です。

 

過失相殺は損害賠償額に大きく影響する

損害賠償請求にあたって、裁判所基準で適正な損害額を算定することが大事なことは言うまでもありません。

 

加えて、過失割合や過失相殺率は、5%、10%の単位で決定されますから、賠償金額に与える影響は大きくなります。

 

例えば、被害者の過失割合が40%の場合、被害者の総損害額が1,000万円だったとしても、被害者が加害者に損害賠償請求できる金額は600万円になってしまいます。

 

過失割合が問題となる事故では、適正な過失割合・過失相殺率とすることが、とても大事になるのです。

 

過失相殺の立証責任は加害者側にある

被害者の過失を基礎づける事実の立証責任は、損害賠償義務を負う加害者側にあります。

 

過失相殺は、被害者から加害者に対する損害賠償請求に対し、損害額を減額するよう主張するものだからです。

 

被害者に過失があっても過失相殺しないこともある

過失相殺は当事者間の公平を図る制度ですから、加害者の過失が極めて大きいときには、被害者に多少の過失があっても過失相殺しないこともあり得ます。

 

横断歩道を横断中の事故は過失相殺されない

 

例えば、歩行者(被害者)が横断歩道を横断中に事故に遭ったような場合です。

 

横断歩道を横断する歩行者には、絶対的な優先権があります(道路交通法38条1項)。ですから、横断歩道を横断中の事故の場合は、歩行者に「左右の安全確認を怠った」という過失があったとしても、自動車の過失が極めて大きいと判断され、原則として過失相殺しません。

 

横断歩道でないところを渡っていて事故に遭ったときは、被害者は横断歩道のように絶対的優先権を主張することができず、過失相殺されます。

過失相殺は法律でどのように規定されているか

過失相殺について、法律でどのように定めているのか見ておきましょう。

 

過失相殺するかどうかは裁判所の自由裁量

交通事故など「不法行為の過失相殺」について、民法は次のように定めています。

 

民法722条2項(不法行為の過失相殺)

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

 

つまり、被害者に過失があったとき、過失相殺するかどうか、過失相殺するとして過失相殺率をどれくらいにするかは、裁判所の裁量に委ねられているのです。

 

裁判所は損害賠償の額を定めることについて斟酌できるだけ

もう一つ、不法行為の場合の過失相殺について大事な点があります。債務不履行の場合の過失相殺と異なり、裁判所は損害賠償の額を定めることについて斟酌できるだけで、責任の有無については斟酌できません。

 

「不法行為の過失相殺」と「債務不履行の過失相殺」について、民法でどのように規定しているか比べてみてください。

 

不法行為の過失相殺

(民法722条2項)
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる

債務不履行の過失相殺

(民法418条)
債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める

 

債務不履行の過失相殺については、債権者の過失を考慮して「損害賠償の責任及びその額を定める」となっていますが、不法行為の過失相殺については、被害者の過失を考慮して「損害賠償の額を定めることができる」となっています。

 

不法行為の場合の過失相殺は、被害者の過失がいかに大きいものであっても、加害者に過失がある限り、加害者が賠償すべき損害賠償額全部を免除することはできないのです。

 

つまり、交通事故の過失相殺は、「当事者間で損害の公平な分担を図る制度」なのです。この点について最高裁は、次のように判示しています。

 

「民法722条2項の過失相殺の問題は、…不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかに斟酌するかの問題に過ぎない」

 

最高裁判決(昭和39年6月24日)
(最高裁のWebサイトにリンクしています)

過失相殺の対象となる被害者の過失の具体例

過失相殺の対象となる被害者の過失は、「事故の原因となった過失」「損害の発生・拡大に寄与した過失」に大別されます。

 

過失相殺される可能性のある具体的な過失の例としては、次のようなものがあげられます。

 

事故の原因となった過失
  1. 赤信号で道路を横断した
  2. ウィンカーを出さずに車線を変更した
  3. 運転中にスマホや携帯電話を使用していた
損害の発生・拡大に寄与した過失
  1. ヘルメットを着用せずバイクを運転して事故に遭い、頭部に傷害を負った
  2. シートベルト不着用で事故に遭い、車外に放り出され受傷した

 

損害の発生・拡大との因果関係を判断することが大切

過失相殺の対象となるかどうかは、事故態様や受傷部位、負傷の程度などから、損害の発生・拡大との因果関係の有無を個別に判断することが大切です。

 

例えば、ヘルメット不着用やシートベルト不装着は、それが被害の拡大に寄与していると考えられれば過失相殺されますが、相当因果関係が認められないときは過失相殺が否定されます。

 

過失相殺にあたっては、被害者の過失と損害の発生・拡大との因果関係を適確に判断することが大事です。

 

まとめ

交通事故は「加害者のみが悪い」というケースは稀で、多くは被害者にも過失が認定され、被害者の過失割合に応じて、損害賠償額が減額されます。これが過失相殺です。

 

過失相殺率(または過失割合)は、5%、10%単位で決まり、損害賠償額に対する影響は非常に大きくなります。

 

保険会社や共済は、『過失相殺率認定基準』にもとづき、過失割合・過失相殺率を示します。ただし、実際の交通事故は千差万別ですから、過失相殺基準に当てはまらないケースも多くあります。

 

保険会社などが提示する過失割合・過失相殺率に疑問を感じたときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

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