中間利息控除とは?

逸失利益を計算するとき、なぜ中間利息を控除するのか?

逸失利益の計算で中間利息控除するのは、中間利息を控除しないと、実際の損害額を上回る賠償金を被害者が受け取ることになるからです。

 

ですから、将来の損害である逸失利益を一時金で受け取るためには、現在の価額に換算する必要があるのです。詳しく見ていきましょう。

 

逸失利益とは将来の損害額

中間利息控除の説明の前に、逸失利益とは何か、簡単に見ておきましょう。中間利息控除の意味を理解する上で、大切なポイントです。

 

逸失利益とは、今後も働くことで得られたはずの収入(経済的利益)です。将来の利益を逸し失うので、逸失利益といいます。消極損害の1つです。

 

逸失利益には、「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」の2つがあります。

 

後遺障害逸失利益は、後遺障害のため事故前と同じように働くことができなくなって収入が減ることによる損害です。死亡逸失利益は、死亡して収入が無くなってしまうことによる損害です。

 

逸失利益は、これから先、将来にわたって発生する損害であることを押さえておいてください。

 

ところで、損害賠償金は、原則として一時金で支払われます。将来にわたって受け取る経済的利益を一時金で受け取るため、中間利息控除が必要となるのです。

 

中間利息とは何か? なぜ中間利息を控除するのか?

さて、ここからが本題です。中間利息とは何か、中間利息控除とはどういうものか、なぜ中間利息を控除しないといけないのか、について見ていきましょう。

 

話を分かりやすくするため、具体的に考えてみましょう。

 

被害者の事故当時の年収が500万円で、今後20年間働けたとします。

 

単純計算すると、20年間で1億円の収入を失うことになります。これは、20年後の損害が累計 1億円ということです。

 

損害賠償は、一時金で支払います。1億円を一時金で受け取り、それを銀行に預けたり運用したりすると利息が付き、20年後には〔1億円+利息〕になります。

 

受け取った賠償金額を運用することによって生じた利息を中間利息といい、結果的に、中間利息分だけ過大な利益を得ることになります。

 

つまり、中間利息を控除して逸失利益を計算するのは、中間利息分を控除しなければ、現実の損害を上回る賠償を受けることになるからで、公平の観点から中間利息分をあらかじめ控除する方法が採られているのです。

 

計算式で表すと、こうなります。

 

(賠償金額)=(名目上の損害額)-(中間利息)

 

別の言い方をすれば、中間利息控除は、将来に受け取る金額を、現在の価額に換算することです。

 

控除する中間利息の起点は、死亡事故の場合は事故発生時、後遺障害事故の場合は症状固定時です。起点が異なるので注意してください。

 

中間利息控除率は、民事法定利率

中間利息を控除する理由は理解できるとしても、問題は中間利息控除率です。

 

実は、中間利息控除率が、市中金利から乖離して高すぎるため、中間利息が過大に算定され、それだけ逸失利益の額が減る実態があります。とはいえ、どうしようもないのが現実なのですが…。

 

中間利息控除率は年5%

中間利息控除率は年5%で計算されます。いまは「ゼロ金利」の時代ですから、銀行に預けても利息はほとんど付きません。中間利息の利率を年5%で計算するなど、あまりにも現実離れしています。

 

なぜ、中間利息控除率が年5%かというと、「中間利息の割合は民事法定利率による」と最高裁が判断を示し、その民事法定利率が年5%(民法404条)だからです。

 

中間利息の利率についての最高裁判例

損害賠償額の算定にあたり、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならない

 

最高裁判決(平成17年6月14日)の詳細はこちら
 ※最高裁のWebサイトにリンクしています。

 

この判決で最高裁は、「実質金利の動向からすれば、…中間利息の割合は民事法定利率である年5%より引き下げるべきであるとの主張も理解できないではない」としながら、「現行法は、将来の請求権を現在価額に換算するに際し、法的安定及び統一的処理が必要とされる場合には、法定利率により中間利息を控除する考え方を採用している」と指摘しました。

 

民法改正により、法定利率が5%から3%へ

2017年5月に民法が改正され、法定利率は5%から3%へ引き下げ、3年ごとに1%刻みで見直す変動制となります。2020年4月1日施行です。

 

つまり、2020年度以降は、法定利率が3%になりますから、中間利息控除率も3%になります。少しは実態に近い逸失利益が算定できそうです。

中間利息控除の計算方法(ライプニッツ方式・ホフマン方式)

中間利息控除の代表的な計算方法としては、「ライプニッツ方式」と「ホフマン方式」があります。

 

ライプニッツ方式とホフマン方式の違い

2つの違いは、ライプニッツ方式が複利計算、ホフマン方式が単利計算であることです。

 

つまり、ライプニッツ方式は複利で運用することを前提に、ホフマン方式は単利で運用することを前提に、名目上の逸失利益を現在の価額(現価)に換算する方式です。

 

ライプニッツ方式 複利で運用することを前提に中間利息を控除し、現価に換算する方法
ホフマン方式 単利で運用することを前提に中間利息を控除し、現価に換算する方法

 

ライプニッツ方式とホフマン方式のどちらが被害者に有利か

被害者にとって、ライプニッツ方式とホフマン方式のどちらが有利かといえば、ホフマン方式です。ホフマン方式は、単利計算のため、控除する中間利息が小さく算定されるからです。

 

単利計算は、元本にのみ利息が付く計算方式です。複利計算は、元本から生じた利息を次期の元本に組み入れて利息計算する方式です。

 

複利計算は、利息に利息が付く計算方式ですから、中間利息が「雪だるま式」に増えていきます。つまり、ライプニッツ方式の方が、控除する中間利息が大きくなるので、逸失利益が少なく算定されるのです。

 

ですから、中間利息控除のみを考えると、被害者にとっては、ホフマン方式が有利といえます。

 

ただし、逸失利益の算定にあたって重要な要素は、中間利息控除の方法に加え、基礎収入額です。基礎収入額にどんな数値を採用するかによって、逸失利益は大きく異なります。

 

大事なのは、「基礎収入額の認定方法」と「中間利息の控除方法」の組み合わせです。

 

[東京方式]vs[大阪方式]

基礎収入の認定方法と中間利息の控除方法については、「東京方式」と「大阪方式」がありました。

 

東京方式は、東京地裁が採用していた方法です。若年者の逸失利益の算定において、基礎収入に賃金センサスの全年齢平均賃金を採用し、ライプニッツ方式で中間利息を控除する方法です。

 

大阪方式は、大阪地裁や名古屋地裁が採用していた方法です。若年者の逸失利益の算定において、基礎収入に賃金センサスの18歳から19歳の平均賃金(初任給固定賃金)を採用し、ホフマン方式で中間利息を控除する方法です。

 

東京方式はライプニッツ方式を採用するものの、大阪方式より基礎収入に高い数値を使うため、逸失利益は、東京方式の方が高く算定されるのです。

 

現在はライプニッツ方式が主流

逸失利益の地域間格差の問題を解決するため、1999年に、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が、中間利息の控除方法についてライプニッツ方式を採用するという「共同提言」を発表し、現在は、ライプニッツ方式で中間利息を控除する方式が一般的となっています。

 

なお、「共同提言」は、基本的に東京方式を踏襲したもので、原則として基礎収入に全年齢平均賃金を採用します。

 

なぜ「ホフマン方式」でなく「ライプニッツ方式」を採用したのか

東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が、ホフマン方式でなくライプニッツ方式に統一した理由の1つは、中間利息の控除期間が長期間にわたると、ホフマン方式は不合理な結果が生じるからです。

 

ホフマン方式の問題点について詳しくはこちらをご覧ください。

 

「共同提言」は、個々の事件における各裁判官の判断内容を拘束するものではなく、最高裁も「ホフマン方式を不合理とは言えない」と判断しているので、ホフマン方式による算定が否定されているわけではありません。

 

しかし、交通事故の損害賠償の定型化・定額化が進んでいるもとで、それと違う方法で損害額を認定させることは、困難をともなうことを覚悟しなければならないでしょう。

 

中間利息控除係数(ライプニッツ係数・ホフマン係数)

中間利息を控除して逸失利益を算定するには、控除する期間に対応する中間利息控除係数を年間の逸失利益に乗じることで計算できます。

 

代表的な中間利息控除係数が、ライプニッツ係数とホフマン係数です。ライプニッツ係数を用いて中間利息を控除するのがライプニッツ方式、ホフマン係数を用いて中間利息を控除するのがホフマン方式です。

 

ライプニッツ係数表・ホフマン係数表には、現価表と年金現価表があり、使用するシーンが異なりますから注意してください。

 

中間利息控除と逸失利益の計算例

逸失利益を計算し、中間利息控除がどのように行われるか見ておきましょう。ライプニッツ係数を使って中間利息を控除し、後遺障害逸失利益を計算してみます。

 

後遺障害逸失利益の計算式は次の通りです。

 

年収 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

 

例えば、被害者の事故前の年収が500万円、後遺障害14級が認定され労働能力喪失率が5%、労働能力喪失期間が5年だった場合です。

 

5年に対応するライプニッツ係数は 4.329476 ですから、後遺障害逸失利益は、

 

500万円×0.05×4.329476=108万2,369円

 

となります。

 

解説

労働能力喪失率が5%とは、年収が5%減ることです。被害者の年収が500万円ですから、その5%の減収分、すなわち年間25万円、5年間で125万円の損害(逸失利益)となります。

 

それを一時金として受け取るので、現在価額に換算すると、逸失利益は108万2,369円となります。

 

関連ページ

そのほか、具体的な逸失利益の計算例は、次のページでも紹介しています。

 

まとめ

逸失利益は、被害者が退職するまでに得られたはずの収入額を損害として一括で前払いします。名目上の損害額を全額受け取ると、退職時まで保有し運用することで利息が生じ、結果的に利息分だけ過大な利益を得ることになります。

 

この利息が中間利息で、公平の観点から、逸失利益の算定では中間利息分をあらかじめ控除して損害額を算定します。

 

代表的な中間利息控除の方法にはライプニッツ方式とホフマン方式がありますが、現在はライプニッツ方式が主流です。

 

逸失利益は、損害賠償金の中でも金額が大きく、保険会社とよく揉めます。過去の判例なども吟味して示談交渉する必要がありますから、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士法人・響

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