死亡事故の消極損害(死亡逸失利益)の裁判所基準での計算方法

死亡逸失利益の裁判所基準での計算方法

死亡逸失利益は、交通事故で被害者が死亡した場合の消極損害。被害者が生きていたら将来得られた利益のことです。死亡逸失利益の算定方法と計算例を紹介します。

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死亡逸失利益とは、「被害者が存命であったなら、得られたはずの収入」の喪失のことです。

 

死亡逸失利益の計算の仕方

死亡逸失利益は、次のように計算します。

 

基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応する中間利息控除係数

 

死亡逸失利益は、将来にわたって得られたはずの収入額ということでは、「労働能力喪失率100%の場合の後遺障害逸失利益」と同じなのですが、死亡した被害者本人の生活費を控除する点が異なります。

 

被害者が死亡すると、将来得られたであろう収入を喪失する反面、本人の生活費の支出がなくなります。そのため、死亡した被害者本人の生活費を控除して、損害額を計算するのです。

 

計算式の各要素について見ていきましょう。

 

死亡逸失利益は、被害者の収入が稼働収入か年金収入かによって、稼働逸失利益と年金逸失利益に大別されます。ここでは、稼働逸失利益について説明します。年金逸失利益はこちらをご覧ください。

 

基礎収入

基礎収入(年収)の計算は、後遺障害逸失利益の場合と同じです。職種によって異なり、それぞれ原則として次のものを算定基礎とします。

 

給与所得者 事故前の現実の収入額。
事業所得者 事故前の申告所得額。
家事従事者 賃金センサスの女性労働者の平均賃金。
年少者・学生 賃金センサスの平均賃金。

 

職種別の基礎収入の算定方法について、詳しくは次のページをご覧ください。

 

 

生活費控除率

生きていれば生活費がかかりますが、死亡すればそれが不要になるので、生活費相当分を損害額から控除します。

 

生活費の控除にあたっては、被害者の生活費を具体的に証明する必要はありません。そもそも、将来の生活費を正確に算出することなどできません。

 

生活費の控除は、被害者の家族構成、性別、年齢などにより、一定割合を控除する方式を採用しています。この割合が「生活費控除率」です。

 

生活費控除率は、一家の支柱の場合30~40%、女性30%、男性単身者50%とされるのが一般的です。一家の支柱の場合とは、被害者の世帯が主として被害者の収入によって生計を維持している場合です。

 

裁判所基準の生活費控除率
一家の支柱の場合

40%(被扶養者1人の場合)
30%(被扶養者2人以上の場合)

女性

30%(主婦・独身・幼児を含む)
※年少女子で労働者平均賃金を基礎収入とする場合は45%。

男性 50%(独身・幼児を含む)

※『赤い本 2016年版』より

 

生活費控除率が、性別、年齢、家族構成などにより異なるのは?

生活費控除率が、性別、年齢、家族構成などにより異なるのは、調整機能的な役割があるからです。

  • 一家の支柱の生活費控除率を低くしているのは、残された遺族の生活保障の観点を重視しているからです。
  • 女性の生活費控除率を低くしているのは、基礎収入額が男性より低いことを考慮しているからです。
  • 年少女子で、基礎収入に全労働者平均賃金を採用するときは、生活費控除率を45%程度とします。詳しくはこちら
  • 年金生活者については、生活費控除率を通常より高く、50~60%とします。年金収入に占める生活費の割合が高いと考えられるからです。詳しくはこちら

 

就労可能年数に対応する中間利息控除係数

就労可能年数は、原則として死亡時から67歳までの期間とされています。労働能力喪失率100%で、就労可能年限までを喪失期間とするのと同じです。

 

中間利息控除係数は、ライプニッツ係数を用いるのが一般的です。後遺障害逸失利益の計算と同じです。

 

18歳以上であれば、67歳から死亡時の年齢を差し引いた年数が就労可能年数となります。この場合、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用います。

 

18歳未満や大学生など未就労者の場合

18歳未満の未就労者の場合は、原則として18歳から67歳までの49年が就労可能年数となります。大学生や大学進学が決まっている場合は、大学卒業後の年齢から67歳までの期間が就労可能年数となります。

 

ただし、この場合、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用いるわけではありません。

 

事故時(死亡時)を起点に、就労可能年限の67歳までの年数に対応するライプニッツ係数から、就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数を差し引いたものが、適用するライプニッツ係数となります。

 

被害者が18歳未満や大学生の場合のライプニッツ係数の求め方はこちら

 

高齢者の場合

高齢者の場合、死亡時の年齢から67歳までを就労可能期間とすると、就労可能年数が全く認められない場合や、認められても極めて短期間となってしまう場合があります。

 

そのため、死亡時の年齢から67歳までの年数が、平均余命の2分の1を下回る場合は、平均余命の2分の1を就労可能年数とします。これは、67歳を超えて就労する蓋然性が認められる者は、平均余命の2分の1くらいは働くだろうと考えられるからです。

 

平均余命は、厚生労働省の簡易生命表を用います。

 

給与所得者の場合は、60歳前後で定年退職するのが一般的です。この場合でも、定年後67歳までは就労可能と認められます。ただし、定年後の収入は減少すると見込まれるので、定年前に受け取っていた収入額の60~70%程度に減額する例が多いようです。

 

高齢者が後遺障害になったときの労働能力喪失期間についてはこちら

 

「就労可能年数とライプニッツ係数表」(自賠責の支払基準[別表Ⅱ-1])を用いれば、18歳未満の場合や高齢者の場合も含めて、事故時(死亡時)の年齢に対応するライプニッツ係数を簡単に求められます。

 

就労可能年数とライプニッツ係数表

 ※国土交通省のWebサイトにリンクしています。

死亡逸失利益の計算例

給与所得者の場合で、死亡逸失利益の計算を見てみましょう。

 

事例

男性会社員Aさん。死亡時の年齢48歳。事故前の年収700万円で、扶養家族は妻と子供2人。

 

Aさんの死亡逸失利益は、次のように計算します。

 

扶養家族3人なので、生活費控除率は30%
48歳の就労可能年数は19年ですから、ライプニッツ係数は14.3238。

 

よって、死亡逸失利益は

 

700万円 ×(1-0.3)× 14.3238 = 7,018万6,620円

まとめ

死亡逸失利益は、被害者本人の生活費控除を行う以外は、労働能力喪失率100%の場合の後遺障害逸失利益と同じです。

 

死亡事故の損害賠償額は、高額となります。逸失利益の計算は、簡単ではありません。

 

保険会社の提示額に納得できないときは、示談する前に、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

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公開日 2021-04-07 更新日 2023/03/16 11:45:59