被害者死亡で失われる将来の収入を損害賠償請求する

Point
  • 死亡逸失利益とは、被害者が生きていれば今後将来にわたって得られたはずの経済的利益(生涯の収入)のことです。
  • 死亡逸失利益は、被害者の年収から本人の生活費(消費支出)を控除た純利益と就労可能年数で決まります。

 

死亡逸失利益とは

死亡逸失利益は、被害者が生きていれば、今後生涯にわたって得られたはずの収入(経済的利益)のことです。

 

被害者が死亡したことにより、収入が断たれ、経済的利益を逸してしまうので、死亡逸失利益といいます。交通事故の消極損害の1つです。

 

死亡逸失利益の算定方法

死亡逸失利益は、交通事故で死亡したことにより失う将来の収入ですから、具体的な損害額を算出できるものではなく、推計になります。

 

死亡逸失利益は、次のようにして求めます。

 

  1. 死亡した被害者の年収を出します。
  2. 被害者の年間消費支出(生活費)を出します。
  3. 年収から生活費を控除し、年間純利益を計算します。
  4. 被害者の就労可能年数(原則として67歳になるまでの年数)を出します。
  5. 年間純利益に就労可能年数を乗じ、名目上の損害額を算出します。
  6. 中間利息を控除し、死亡逸失利益を算定します。

 

死亡逸失利益の計算式

死亡逸失利益は、次の計算式で求めます。

 

年収 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 

各要素について詳しく見てみましょう。

 

年収

年収の算定基礎は、後遺障害逸失利益の基礎収入の算定と同様です。職種によって異なり、それぞれ原則として次のものを算定基礎とします。

 

給与所得者 事故前の現実の収入額。
事業所得者 事故前の申告所得額。
家事従事者 賃金センサスの女性労働者の平均賃金。
年少者・学生 賃金センサスの平均賃金。

 

職種別の基礎収入の算定方法について、詳しくは次のページをご覧ください。

 

給与所得者の基礎収入の算定方法
会社役員の基礎収入の算定方法
個人事業主の基礎収入の算定方法
主婦・主夫の基礎収入の算定方法
幼児・小中学生の基礎収入の算定方法
高校生・大学生の基礎収入の算定方法

 

生活費控除率

生きていれば生活費(消費支出額)がかかりますが、被害者が死亡した場合は、本人の生活費がかかりません。生活費は、収入を得るための経費と考えられ、生活費相当分を損害額から控除します。

 

生活費の控除にあたっては、被害者の費やす生活費を具体的に証明する必要はありません。そもそも、将来の生活費を正確に算出することはできません。

 

被害者の生活費は、被害者の家族関係、性別、年齢などに照らし、逸失利益全体に対して一定割合を控除する方式を採用しています。控除する割合が基準化されていて、それが生活費控除率です。

 

生活費控除率は、一家の支柱の場合30~40%、女性30%、男性単身者50%とされるのが一般的です。一家の支柱の場合は、30~40%と幅がありますが、被扶養者の人数など具体的事情により決まります。

 

裁判所基準の生活費控除率
一家の支柱の場合

40%(被扶養者1人の場合)
30%(被扶養者2人以上の場合)

女性

30%(主婦・独身・幼児を含む)
※年少女性で労働者平均賃金を基礎収入とする場合は45%程度。

男性 50%(独身・幼児を含む)

※『赤い本 2016年版』より

 

女性の生活費控除率が男性より低い理由

女性の生活費控除率が男性より低いのは、女性の現実の生活費が男性に比べて少ないからではありません。

 

女性の平均賃金が男性より低いため、男性と同じ50%で控除すると、男女間格差が大きくなりすぎるので、それを調整するため30%としているのです。

 

なお、年少女子で、基礎収入に全労働者平均賃金を採用するときは45%程度とします。

 

就労可能年数に対応するライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは、中間利息控除係数の1つで、逸失利益を計算する際に、中間利息を控除して現在の価額に換算するために用います。中間利息控除についてはこちらをご覧ください。

 

就労可能年数は、原則として死亡時から67歳までの期間とされています。

 

18歳以上であれば、67歳から死亡時の年齢を差し引いた年数が就労可能年数となります。この場合、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用います。

 

18歳未満や大学生など未就労者の場合

18歳未満の未就労者の場合は、原則として18歳から67歳までの49年が就労可能年数となります。大学生や大学進学が決まっている場合は、大学卒業後の年齢から67歳までの期間が就労可能年数となります。

 

ただし、この場合、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用いるわけではありません。

 

事故時(死亡時)を起点に、就労可能年限の67歳までの年数に対応するライプニッツ係数から、就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数を差し引いたものが、適用するライプニッツ係数となります。

 

 

高齢者の場合

高齢者の場合、事故時(死亡時)の年齢から67歳までとすると、就労可能年数が全く認められない場合や、認められても極めて短期間となってしまう場合があります。

 

そのため、死亡時の年齢から67歳までの年数が、平均余命日数の2分の1を下回る場合は、平均余命日数の2分の1を就労可能年数とします。平均余命日数は、厚生労働省の簡易生命表を用います。

 

給与所得者の場合は、60歳前後の定年制があるのが一般的です。この場合でも、定年後67歳までは就労可能と認められます。ただし、定年後の収入は減少すると見込まれるので、定年前に受け取っていた収入額の60~70%程度に減額する例が多いようです。

 

「就労可能年数とライプニッツ係数表」を用いれば、18歳未満の場合や高齢者の場合も含めて、事故時(死亡時)の年齢に対応するライプニッツ係数を簡単に求められます。

 

就労可能年数とライプニッツ係数表

 ※国土交通省のWebサイトにリンクしています。

死亡逸失利益の計算例

給与所得者の場合で、死亡逸失利益の計算を見てみましょう。

 

事例

男性会社員Aさん。死亡時の年齢48歳。事故前の税込年収700万円で、扶養家族は妻と子供2人。

 

Aさんの死亡逸失利益は、次のように計算します。

 

扶養家族3人なので、生活費控除率は30%
48歳のライプニッツ係数は、12.085(ライプニッツ係数表より)

 

よって、死亡逸失利益は

 

700万円 ×(1-0.3)× 12.085 = 5,921万6,500円

 

なお、死亡事故における自賠責保険の支払限度額は、葬儀費・逸失利益・慰謝料すべて含めて3,000万円です。賠償額のうち3,000万円を超える部分は、任意保険から支払われることになります。

まとめ

死亡逸失利益は、交通事故で死亡しなければ、将来得られたはずの収入(経済的利益)のことです。一括して損害賠償請求します。

 

被害者が有職者の場合、事故前の年収が大きいほど、将来働けたはずの期間が長いほど、逸失利益の額は大きくなります。

 

死亡事故の逸失利益は、極めて高額となります。それだけに保険会社は、とかく減額しようと考えます。後悔しないよう、示談する前に、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士と相談することをおすすめします。

 

弁護士法人・響

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