死亡事故の積極損害

Point
  • 交通事故の被害者が死亡した場合、葬儀関係費を損害額として賠償請求できます。
  • 葬儀費は定額化されて、裁判所基準では原則として150万円。自賠責保険基準では原則60万円です。

 

交通事故に遭った被害者が死亡した場合の積極損害には、葬儀関係費があります。葬儀費用は、特に不相当なものでない限り、賠償請求が認められます。

 

また、事故後に治療を受けた場合は、死亡するまでの治療費や付添看護費などの積極損害も、別途請求できます。

葬儀費用は定額化

葬儀費用について、裁判所は、現実の支出額にかかわらず、ほぼ一定の金額を損害として認めています。裁判所基準では、150万円程度です。

 

これを下回る場合は、実際に支出した額(実費)となります。

 

おもに使用される裁判所基準には、日弁連交通事故相談センター編『交通事故損害額算定基準』(通称:青本)と日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)があります。

 

葬儀費用について、『青本25訂版』では130万~170万円を基準額とし、『赤い本2016年版』では原則として150万円としています。

 

裁判所基準についてはこちら

 

葬儀費用で認められるもの

葬儀費としては、火葬・埋葬料、読経・法名料、布施・供物料、花代、通信費、広告費、葬儀社に支払う費用が認められます。

 

そのほか、弔問客に対する饗応・接待費、遺族の交通費、49日忌までの法要費などは、相当なものに限り認められます。

 

遺族の帰国費用も、必要かつ相当な金額が認められます。

 

葬儀費以外に認められる損害

葬儀費とは別に、仏壇・仏具購入費、墓碑建設費、墓地・墓石購入費も、判例では損害と認めています。

 

これらは、耐久財として将来、遺族のためにも使用される可能性があるものですが、積極損害として認められます。ただし、別途相当額を加算する例と、葬儀費用に含まれるとして加算しない例があります。

 

遺体搬送量は、別途実費が認められます。

 

高額認定例

葬儀費用は、裁判所基準で原則として150万円とされていますが、この基準を超える高額認定の事例もあります。

 

葬儀義費用の高額認定例としては、250万円を認めた事例(東京地裁・平成20年8月26日)があります。

 

墓地・墓石・仏壇購入費を別途認めた例としては、墓石代267万円、墓地使用料52万円、仏壇購入費16万円余を認めた事例(横浜地裁・平成元年1月30日)があります。

 

[参考:『新版 交通事故の法律相談』(学陽書房)]

 

葬儀費用で認められないもの

遺族以外の葬式参列のための交通費、引出物代、香典返し、49日忌を超える法要費などは認められません。

 

香典は、損害を補填する性質のものではないため損益相殺されませんが、その反面、香典返しは損害として認められません。

葬儀費用を損害と認めた判例

葬儀費については、かつて「損害と認められるか否か」の争いがあったようです。人は交通事故に遭わなくても、いずれは死ぬ運命にあり、そのときには葬儀費がかかるからです。

 

葬儀費用を損害と認めた最高裁判例

最高裁が、1968年(昭和43年)10月3日に、葬儀費用を損害と認める判決を出しています。判決要旨は、次のようなものです。

 

  1. 遺族の負担した葬式費用は、それが特に不相当なものでないかぎり、人の死亡事故によつて生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり、人が早晩死亡すべきことをもつて、賠償を免れる理由とすることはできない。
  2. 会葬者等から贈られる香典は、損害を補填すべき性質を有するものではないから、これを賠償額から控除すべき理由はない。

 

最高裁判例の詳細はこちら
 ※最高裁のWebサイトにリンクしています。

葬儀費について裁判所基準と自賠責保険基準の違い

葬儀関係費について、裁判所基準と自賠責保険基準の違いをまとめておきます。任意保険基準は、自賠責保険基準より若干高い金額とされますが、基準は公表されていません。

 

自賠責保険の支払限度額を超える部分は、任意保険会社が支払うことになります。ただし、保険会社は、自賠責基準よりも少し高い額しか提示しません。

 

被害者側は裁判所基準で損害額を算定し、賠償請求することで、適正な賠償額を受け取ることができます。

 

  裁判所基準 自賠責保険基準
葬儀費

130万~170万円。
これを下回る場合は、実際に支出した額。

60万円。
立証資料等により、100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費。

その他 墓地・墓石・仏壇購入費も認められる。 墓地購入費は認められない。

 

まとめ

交通事故で被害者が死亡した場合は、積極損害として葬儀費を賠償請求できます。事故後に治療を行っていて、治療のかいなく死亡した場合は、治療費も別途請求できます。

 

葬儀費は定額化されていて、自賠責保険の支払基準(支払限度額)は原則60万円ですが、裁判所基準では130万~170万円です。

 

葬儀にかかった費用だけでなく、墓地・墓石・仏壇購入費なども損害として認められます。

 

保険会社は、自賠責基準より若干高い程度の賠償額しか提示しませんから、保険会社の提示額が妥当な額かどうかの見極めが必要です。判断が難しいときは、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士法人・響

 

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