示談交渉を開始するタイミングと示談金への影響

Point
  • 示談交渉を始めるタイミングは、損害額が全て確定したときです。損害額が確定する前に示談交渉を始めると、「取りこぼし」が生じます。
  • 通常は、相手方の保険会社が賠償金額を提示し、そこから示談交渉が始まりますが、損害額が確定したら、相手方からの示談金の提示を待つ必要はありません。

 

交通事故の被害に遭ったとき、示談交渉がいつ始まるのか、気になるところです。

 

何しろ交通事故に遭うこと自体が初めてでしょうから、事故解決までの流れが分からず、保険会社からきちんと賠償金が支払われるのか不安ですよね。示談交渉に向けた心の準備も必要ですから、ストレスも相当なものでしょう。

 

ここでは、示談交渉を開始するタイミングはいつか、示談交渉を始めるタイミングによって受け取れる示談金(賠償金)に影響があるのか、について見ていきます。

 

目次
  1. 示談交渉を始めるタイミングは、損害額が全て確定したとき
  2. 損害額が確定しないタイミングで示談を急ぐと後悔する!
  3. 急いで賠償金を受け取りたい場合の請求方法
  4. まとめ

 

弁護士法人・響

示談交渉を始めるタイミングは、損害額が全て確定したとき

示談交渉を始めるタイミングは、基本的に「損害額が全て確定したとき」です。

 

示談交渉は、交通事故で被った損害を「どれだけ賠償してくれるのか」について、加害者と交渉することです。損害額が確定しないことには、「いくら請求すればよいのか」分からないし、相手から「いくら賠償してもらえばよいのか」も分かりません。

 

ですから、「全ての損害が確定し、総損害額を算定できたとき」が、示談交渉を開始するタイミングとなります。

 

たいてい、そのタイミングを見計らって、保険会社から示談金(賠償金)の提示があり、そこから示談交渉開始となります。

 

なお、保険会社からの示談金の提示を待つ必要はありません。示談交渉を始められるタイミングになれば、被害者が独自に損害額を計算し、賠償請求すればよいのです。

 

保険会社から示談金の提示があった場合でも、被害者の側が示談交渉で主導権を握り、正当な損害賠償を受けるには、独自に損害額を算定することが必要です。

 

損害額が全て確定するタイミングとは?

損害額が全て確定するタイミングは、「傷害事故」と「死亡事故」で異なります。傷害事故の場合は、さらに「怪我が治癒した場合」と「後遺症が残った場合」で、損害額の確定するタイミングが異なります。

 

傷害事故の場合

傷害事故のうち、怪我が治癒した場合は、治療が終了したら損害額が確定します。傷害事故の損害額は、入院期間や通院日数によって計算されるので、治療を続けている間は、最終的な損害額を確定できません。

 

後遺症が残った場合は、これ以上治療を継続しても良くなる見込みがない(症状固定)と医師が判断すると、後遺障害等級の認定申請をし、後遺障害の等級認定を受けたら損害額が確定します。後遺障害の等級によって損害賠償額が決まるからです。

 

死亡事故の場合

死亡事故の場合は、すぐにでも損害額を確定できますが、ある程度落ち着いてから示談交渉を始めても遅くはありません。

 

だいたい「被害者の四十九日の法要が済んだころ」に、相手方の保険会社から示談の話があるようです。

 

賠償請求できる損害とは?

保険会社が示談金を提示してきた場合でも、こちらから先に賠償請求する場合でも、損害額の算定は不可欠です。賠償請求できる損害とは、主に次のものです。

 

傷害事故の場合

傷害事故の場合は、治療費や入通院費のほか、治療のため仕事を休んだことによる収入の減少分、慰謝料があります。

 

傷害事故の場合に賠償請求できる損害と算定方法について詳しくはこちら

 

後遺障害等級の認定を受けたとき

後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けたときは、将来の収入が減少することによる経済的損失、それに対する慰謝料があります。治療期間中の損害も加算されます。

 

後遺症が残った場合に賠償請求できる損害と算定方法について詳しくはこちら

 

死亡事故の場合

死亡事故の場合は、葬儀費用のほか、将来の収入がなくなることによる経済的損失、死亡した本人に対する慰謝料と遺族に対する慰謝料があります。治療の甲斐なく亡くなった場合は、治療費なども損害額に加算されます。

 

傷害事故の場合に賠償請求できる損害と算定方法について詳しくはこちら

損害額が確定しないタイミングで示談を急ぐと後悔する!

「早く賠償金を受け取って安心したい」という気持ちは分かりますが、損害額が確定しないタイミングで示談を急いでも、良いことは何もありません!

 

全ての損害が確定しないタイミングで示談交渉を開始するのが「間違い」である理由は、2つあります。

 

いったん示談すると、それ以上の賠償請求ができない

一つは、いったん示談すると、示談した以上の賠償請求ができなくなるからです。あとから追加で賠償請求しようとしても、いっさい認められません。

 

示談の法的性格は「民法上の和解契約」で、加害者が被害者に一定額の損害賠償金を支払うという約束です。

 

同時に、示談するということは、被害者が加害者に示談した金額以上は請求しないという約束でもあるのです。つまり、示談は、被害者が「示談した金額以上の損害賠償請求権を放棄すること」です。

 

例えば、早く賠償金を受け取りたいからと、治療の途中にもかかわらず「見込み」で示談してしまうと、予想以上に治療期間が長引いたり、治癒せず後遺症が残ったときに、示談のやり直しがでず、困ったことになります。

 

後から、これも請求したい、あれも請求したいと言っても、いっさい請求が認められないのです。

 

示談交渉が長引き、示談がまとまらない

もう一つは、損害が全て確定していないタイミングで示談交渉を開始し、途中で請求を追加するやり方では、結果的に示談交渉が長引き、場合によっては「示談がまとまらない」ことがあるからです。

 

示談は、当事者双方が互いに譲りあって解決する方法です。裁判のように厳格に証拠調べをして、「白黒決着を付ける」というようなものではありません。

 

被害者としては「できるだけ示談金を引き上げたい」のですが、相手方は「できるだけ示談金を低くしたい」のです。

 

つまり、示談は「双方の主張する金額を足して2で割る」ようなものです。どちらの主張する金額に近づけるかは、交渉力次第というわけです。

 

ですから、被害者の側は、最初に「請求できる最高額」を請求し、そこから下げて折り合いをつけることになります。だからこそ、示談交渉に入る前に、全ての損害額を算定し、示談交渉開始のタイミングで最大限請求することが大切なのです。

 

示談を急ぐあまり、損害額が全て確定する前のタイミングで示談交渉を始めると、かえって示談交渉が長引き、示談がまとまりにくくなります。しかも、全ての損害を賠償請求できていませんから、当然「取りこぼし」が生じます。

 

示談交渉を始めるタイミングは遅すぎてもいけない

示談交渉を開始するタイミングが遅すぎると、示談成立前に損害賠償請求権が時効にかかって消滅し、損害賠償を受けられなくなることがあります。

 

損害賠償請求権の消滅時効は3年です。もし、それまでに示談が成立しそうにないときは、時効中断の手続きをとる必要があります。

急いで賠償金を受け取りたい場合の請求方法

「示談を急いではいけない」といっても、生活費にも困るようなら、一刻も早く示談金を受け取りたいという場合もあるでしょう。

 

そういう場合には、次の3つの方法があります。これらは、示談が成立していなくても請求できますから、決して示談成立を急がず、これらの方法を検討してみてください。

 

たとえ「中間的な示談」であっても、示談以降の損害については、保険会社はいっさい支払わないので、損害額が全て確定する前には、決して示談してはいけません。

 

示談成立前に請求できるもの
  1. 相手の自賠責保険に直接請求する。
  2. 相手の自賠責保険に仮渡金請求する。
  3. 自身の任意保険に人身傷害補償保険を請求する。

※ それぞれの詳しい内容については、リンク先ページをご覧ください。

相手方の任意保険に対する被害者請求は、基本的に示談が成立していなければ支払われません。

 

お困りの際は、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。このサイトでは、相談無料で、交通事故の示談交渉に強い弁護士事務所をご紹介しています。弁護士選びの参考にしてみてください。

まとめ

示談交渉を開始するのは、損害額が全て確定したタイミングです。損害額が全て確定しないタイミングで示談を急ぐと、正当な賠償金を受け取れなくなる恐れがありますから、しっかりと損害額を算定し、そのうえで示談交渉に入ることが大切です。

 

もし、治療費の支払いや生活費に困っているようなら、示談が成立していなくても可能な「相手の自賠責保険への被害者請求」や「人身傷害保険の請求」を検討してみましょう。お困りの際は、弁護士に相談してみてください。きっと解決方法が見つかります。

 

なお、示談交渉を弁護士に任せると、示談金の大幅アップが見込めるうえ、ストレスから解放されます。相談したら必ず依頼しなければいけない、ということはないので、お困りのことや不安なことがあれば、一度相談してみるとよいでしょう。

 

弁護士法人・響

 

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