仮渡金は損害賠償額の一部前渡し

Point
  • 交通事故の被害者やその家族が、当座の治療費や生活費に困ったとき、加害者の自賠責保険(自賠責共済を含む)に仮渡金請求できます。
  • 加害者の損害賠償責任の有無は関係なく、賠償額確定前でも支払いを受けられます。

 

仮渡金請求とは

仮渡金請求は、自動車事故で負傷・死亡した被害者(遺族を含む)が、治療費や生活費、葬儀費など当座の費用を必要としているにもかかわらず、加害者が賠償責任を否定し不誠実な対応をているようなときに、被害者が加害者の加入する自賠責保険(自賠責共済を含む)に仮渡金の支払いを請求できる制度です。

 

仮渡金とは、損害賠償金の一部前渡しです。被害者と加害者との間で損害賠償責任の有無で争いがある場合や、賠償額が確定していない段階でも請求できます。仮渡金請求は被害者にのみ認められた権利で、加害者は請求できません。

 

自賠責保険に対する仮渡金請求は、自賠法第17条で規定されています。自賠責共済は、第23条の3第1項において準用が規定されています。

 

自賠法第17条(被害者に対する仮渡金)第1項

保有者が、責任保険の契約に係る自動車の運行によつて他人の生命または身体を害したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、政令で定める金額を16条第1項の規定による損害賠償額の支払のための仮渡金として支払うべきことを請求することができる。

 

仮渡金を請求できるのは、自動車の「保有者が他人の生命または身体を害したとき」で、16条請求のような「保有者の損害賠償の責任が発生したとき」という要件はありません。

 

つまり、相手に賠償責任があるかどうかは問いません。極端な話、相手に賠償責任がなくても仮渡金請求はできます。ただし、あとで賠償責任がないことが確定した時には返金しなければなりません。

 

また、自賠責保険会社への被害者による直接請求ということでは直接請求権(自賠法第16条1項)と同じですが、仮渡金請求では損害の立証は必要なく、自動車事故で死傷した事実があれば請求できます。支払う金額は、あらかじめ決まっています。

 

直接請求権に比べて簡便な方法で一定額を支払うというもので、迅速な被害者保護を目的とした制度です。

 

仮渡金請求の注意点

仮渡金は定額なので請求手続きが比較的簡単なうえ、自賠責損害調査事務所による調査の過程が省略されるので短期間(1週間程度)に支払われます。仮渡金請求に加害者の承諾は必要ありません。

 

ただし、仮渡金請求の際には、次の点に注意が必要です。

 

仮渡金請求 4つの注意点
  • 仮渡金は損害賠償額の「一部前渡し」ですから、後日、賠償額が決定したときに、仮渡金を差し引いて賠償金が支払われます。
  • 損害賠償決定額が仮渡金を下回ったときは、差額を過払い分として返還しなければいけません。
  • 加害者に損害賠償責任がないと確定したときは、返還を求められます。
  • 仮渡金請求できるのは、1回だけです。

 

仮渡金の支払基準

仮渡金は、被害者1人につき次の金額(定額)が支払われます。

 

死亡事故 支払額
死亡した者

290万円

傷害事故 支払額

入院14日以上かつ治療期間が30日以上必要な場合
大腿または下腿の骨折など

40万円

入院14日以上または入院を要し治療期間が30日以上必要な場合
上腕または前腕の骨折など

20万円

治療期間が11日以上必要な場合

5万円

※自賠法施行令第5条より抜粋。

 

この金額は、被害者1名あたりの金額です。ですから、例えば、傷害による仮渡金(40万円)を受け取った後に死亡した場合、その被害者は「死亡した者」にあたり、仮渡金は290万円請求できますが、290万円を超える仮渡金を受け取ることはできません。差額の250万円を請求することになります。

 

また、加害車両が複数であったとしても、保険金の支払限度額のように車両数を乗じません。つまり、共同不法行為の場合でも、仮渡金の額は変動しません。

まとめ

仮渡金請求は、交通事故の被害者が、当面の治療費や生活費などで困ったときに利用できる制度です。

 

損害が確定していなくても、被害者が責任を認めない場合でも、加害者の自賠責保険に対して、被害者が直接請求できます。

 

仮渡金請求によって支払われる額は決められた一定額にすぎませんが、比較的簡単な手続きで支払いを受けることができます。加害者や任意保険会社が損害賠償額の内払いを拒否しているようなときには、利用してみてください。

 

自賠責の仮渡金だけでは足りない場合、裁判所に「仮払い仮処分」を申し立てることができます。

 

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