保険契約の引き受け主体が異なるだけ

Point
  • 自賠責保険も自賠責共済も、自動車損害賠償保障法(自賠法)において、自動車の保有者に加入を義務づけられた強制保険で、制度は同じです。
  • 保険料率(掛金率)、保険金(共済金)の支払基準も同じです。
  • 契約の引き受け主体が、損害保険会社か協同組合か、の違いだけです。

 

2種類の強制保険

自動車損害賠償保障法(自賠法)において、自動車の保有者に加入が義務付けられている自動車保険(強制保険)には、「自賠責保険」と「自賠責共済」の2種類があります。

 

正式には「自動車損害賠償責任保険」「自動車損害賠償責任共済」といい、「責任保険」「責任共済」とも呼ばれます。

 

自賠責保険も自賠責共済も制度は同じで、契約の引き受け主体が異なるだけです。自賠責保険の引き受け主体(保険者)は損害保険会社、自賠責共済の引き受け主体(共済者)は協同組合です。

 

自賠責保険も自賠責共済も制度は同じ

自賠責保険は、保険契約者が損害保険会社に保険料を支払い、事故が発生したときに損害保険会社が保険金を支払います。

 

自賠責共済も、組合員が組合に共済掛金を支払い、事故が発生したときに組合が共済金を支払います。このように、自賠責共済も組合員から共済掛金を集め、事故があったときに共済金を支払う仕組みですから、保険と同様の制度です。

 

通常、自賠責保険というとき、自賠責共済も含まれます。

 

自賠責保険の保険者

保険者とは、保険契約の当事者のうち保険給付(保険金の支払い)を行う義務を負う者です。

 

自賠責保険の保険者は、保険業法に規定する損害保険会社・外国損害保険会社等で、責任保険の引き受けを行う者(自賠法第6条1項)と定めています。

 

つまり、自賠責保険は損害保険会社が販売するということです。

 

自賠責共済の共済者(共済責任を負う者)

共済者も保険者と同じで、共済契約の当事者のうち共済金の支払いを行う義務を負う者です。

 

自賠法第6条2項において「共済責任を負う者」として次の協同組合をあげています。

  1. 農業協同組合法に基づき責任共済の事業を行う農業協同組合または農業協同組合連合会
  2. 消費生活協同組合法に基づき責任共済の事業を行う消費生活協同組合または消費生活協同組合連合会
  3. 中小企業等協同組合法に基づき責任共済の事業を行う事業協同組合または協同組合連合会

 

農業協同組合・全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)、全国自動車共済協同組合連合会(全自共)、全国トラック交通共済協同組合連合会(交共連)などが、自賠責共済事業に参入しています。

 

つまり、自賠責共済は、JA共済などの協同組合が販売します。自賠責保険は、損害保険会社が扱う保険ですが、自賠責共済の取り扱いは、特定の地域・職業などの相互互助を目的とした、特定の団体に限定されるのです。

 

自賠責保険の規定は自賠責共済に準用

自賠責保険の契約に関する規定は、自賠責共済の契約に準用されます(自賠法第23条の3)。自賠責保険と自賠責共済が、同一の被害者保護機能を果たすためです。

 

用語の読み替え

自賠責保険の契約に関する用語は、自賠責共済の契約において次のように読み替えます。

 

自賠責保険 自賠責共済

責任保険の契約

責任共済の契約

責任保険

責任共済

保険金額

共済金額

保険会社

組合

保険契約者

共済契約者

被保険者

被共済者

保険金

共済金

保険期間

共済期間

保険料

共済掛金

 

事業所管大臣との協議

自賠責保険の支払基準などは、国土交通大臣・内閣総理大臣(金融庁長官に委任)が定めることになっています。

 

一方、自賠責共済は、組合によって事業所管大臣が異なります。

 

自賠責保険と自賠責共済で支払基準などが乖離すると、被害者保護の観点から合理性を欠くことになります。そのため、支払基準などを定める国土交通省令・内閣府令の制定・変更にあたっては、国土交通大臣・内閣総理大臣(金融庁長官)は、あらかじめ農林水産大臣・厚生労働大臣・事業所管大臣と協議し、統一した基準や規律を定めることが規定されています。

 

自賠責保険と自賠責共済の運用面での違い

自賠責保険の場合、契約した損害保険会社がどこであったとしても、損害保険料率算出機構が各地に設置した自賠責損害調査事務所が、損害の算定や後遺障害等級の認定などの損害査定業務を行います。

 

自賠責共済では、損害査定業務を損害保険料率算出機構に委託している組合もありますが、独自に行っている組合もあります。JAの自賠責共済を除き損害保険料率算出機構に委託していますが、JAの自賠責共済の損害査定業務は、JA共済連が行っています。

 

ただし、JA共済連が独自に損害査定業務を行っているとしても、損害査定基準は損害保険料率算出機構と同一の基準で行われています。

2種類の引き受け主体ができた経緯

自賠法が制定された当時は、責任保険(強制保険)の引き受け主体として「専用の保険組合」を設立する構想もあったようですが、業務の蓄積があり、運営コストも削減できることから、民間の損害保険会社を引き受け主体とすることになりました。

 

なお、民間の損害保険会社が責任保険の引き受け主体であったとしても、責任保険事業が非営利(ノーロス・ノープロフィット原則)事業と法律で定め(自賠法第25条)、保険料負担で契約者に影響がないようにされています。

 

その後、1995年(平成7年)の自賠法一部改正で、損害保険会社が行う責任保険と同様の制度として責任共済制度が整備されました。3つの協同組合が「共済責任を負う者」として加えられ、こうしてできたのが自賠責共済です。

 

責任共済制度が設けられたのは、例えば、農業従事者にとっては、農業協同組合が行う方が便利であるという考えからです。同様の趣旨から、消費生活協同組合、中小企業等協同組合法にもとづく事業協同組合などでも、自賠責共済の事業を行えるようになりました。

まとめ

自賠責保険(責任保険)と自賠責共済(責任共済)は、契約の引き受け主体が異なるだけで、制度は同じです。

 

自賠責保険の保険者は損害保険会社・外国損害保険会社で、自賠責共済の共済者は協同組合です。通常、自賠責保険という場合、自賠責共済も含みます。

 

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弁護士法人・響

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