免責事由は「悪意事故」と「重複契約」だけ

Point
  • 自賠責保険・自賠責共済の免責事由は、「重複契約」を除き「保険契約者・被保険者の悪意によって生じた損害(悪意事故)」だけです。
  • 「重複契約の場合の免責」は、後から契約したものが免責になるだけで、一番最初に契約したものは保険金・共済金が支払われます。
  • 保険金・共済金が全く支払われない免責事由は、「悪意事故」のみです。

 

自賠責保険は法律で免責事由を制限している

任意保険は、保険会社の約款で様々な免責事由を規定していますが、自賠責保険(自賠責共済を含む)は、自動車損害賠償保障法(自賠法)にもとづく自動車保険制度で、被害者の保護・救済の目的から、法律で免責事由を制限しています。

 

自賠法では、次の場合に限り保険会社の免責を認めています。

 

自賠法第14条(免責)

保険会社は、第82条の3に規定する場合を除き、保険契約者または被保険者の悪意によって生じた損害についてのみ、てん補の責めを免れる。

※第82条の3は「重複契約の場合の免責」規定です。

 

つまり、免責事由として法律で認められているのは、次の2つだけです。

 

 

仮に、保険会社が約款でこれら以外の免責事由を定めていたとしても、無効になります。

 

悪意免責

「保険契約者または被保険者の悪意によって生じた損害についてのみ、てん補の責めを免れる」(自賠法第14条)と規定されているように、免責により保険金が全く支払われないのは、悪意事故の場合だけです。重複契約の免責は、重複分が免責になることであって、1契約分は支払われます。

 

ところで、保険法第17条では保険者の免責について次のように定めています。

  1. 保険者は、保険契約者または被保険者の故意または重大な過失によって生じた損害を填補する責任を負わない。戦争その他の変乱によって生じた損害についても、同様とする。
  2. 責任保険契約(損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害を填補するもの)に関する前項の規定の適用については、同項中「故意または重大な過失」とあるのは「故意」とする

 

このように一般の責任保険契約での免責事由は、「故意によって生じた損害」とされていますが、自賠法では「悪意によって生じた損害」となっています。

 

「悪意」と「故意」は、どうちがうのでしょうか?

 

「悪意免責」と「故意免責」の違い

悪意とは「わざと」という意味で、「不正に他人を害する意思(害意)」と解されています。故意も同じように「わざと」という意味合いですが、結果が起ることを認容していれば、故意があったとされます。

 

いわゆる「未必の故意」も、刑事上、故意と認定されます。故意の方が悪意より幅が広いわけです。

 

悪意は「確定的故意」で、「人を轢くかもしれないが、轢いても構わないという気持ちで自動車を急発進させた」といった「未必の故意」は、悪意に含まれないとされています。

 

具体的には、「積極的に人を轢こうとして、確定的故意犯として有罪判決を受けた場合」や「自動車を利用して無理心中し、殺人罪が成立する場合」のように、他人を害する意思が明白なときだけが、悪意に該当することになります(逐条解説 自動車損害賠償保障法より)

 

 

重複契約の場合の免責

1台の車につき、2つ以上の自賠責保険や自賠責共済との契約が締結されている場合が重複契約です。

 

重複契約の場合、契約の締結時期(契約の始期ではありません)が最も早い契約以外の契約は免責となります。つまり、複数の自賠責保険・自賠責共済を契約していたとしても、保険金が支払われるのは一番最初の「1契約分」だけです。

 

契約締結時期の最も早い契約が2つ以上ある場合、該当するそれぞれの保険契約から支払われる額は、自賠責保険から支払う総額を重複契約数で除した金額となります。それを超える金額については支払い責任を免れます。

 

事例

3社の損害保険会社と自賠責保険の契約をしていたとしましょう。A社・B社との契約締結日が同じで、C社との契約締結日は、それよりも後だったとします。

 

傷害事故に関し 120万円の保険金請求があったとすれば、A社とBは、それぞれ

 

120万円 ÷ 2 = 60万円

 

の保険金を支払う責任が生じ、残り60万円については免責となります。C社は、支払いが免責となります。

 

これは、被害者請求(直接請求・仮渡金請求)の場合も同じです。

まとめ

自賠責保険・自賠責共済の免責事由は、「保険契約者・被保険者の悪意によって生じた損害」と「重複契約」の2つだけです。

 

これ以外の免責は、自賠法で認められていないので、仮に保険会社が、他の免責事由を約款で定めていても無効です。

 

なお、自賠責保険・自賠責共済は、免責事由に該当する事故であったとしても、保険会社は被保険者に対して保険金支払いの免責を主張できるだけで、被害者請求すれば損害賠償金は支払われます。

 

自賠責保険・自賠責共済は、免責事由に該当しても被害者請求できる

 

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弁護士法人・響

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