任意保険は、どんな場合に免責になるのか

Point
  • 任意自動車保険の免責事由には、任意保険全般に共通するものと、保険商品ごとに特有のものがあります。
  • 自賠責保険の免責事由が2つだけに限定されているのに対して、任意保険の免責事由は各保険ごとに多様に定められているので注意が必要です。

 

「共通の免責事由」と「保険ごとに特有の免責事由」がある

任意自動車保険の免責事由には、「任意保険全般に共通する免責事由」と「保険ごとに定められた特有の免責事由」があります。

 

ここでは任意保険全体に共通する免責事由をまとめています。

任意保険全般に共通の免責事由

任意保険全般に共通する免責事由について、次の4つに分類して紹介します。

 

 

事故の発生原因を理由とする免責

事故の発生原因を理由とする免責には、「故意」「異常危険」「競技・曲技・試験のための使用」があります。

 

① 故意免責

故意免責とは、保険契約者や被保険者の「故意」によって生じた損害を免責とするものです。

 

一般的な損害保険契約の場合には「故意または重大な過失」が免責事由とされますが、任意自動車保険において「重大な過失」は、共通の免責事由とはなりません。

 

故意免責と重過失免責

保険契約では、保険契約者や被保険者の「故意または重大な過失」によって生じた損害について、保険会社は免責となります(保険法第17条1項)

 

ただし、責任保険契約は例外で、「故意」だけが免責となり、「重過失」は免責となりません(保険法第17条2項)。これは、被害者救済のためです。

 

責任保険契約とは、損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生じる損害を填補する保険契約です。

 

ですから、任意保険の中でも、賠償責任保険(対人・対物賠償保険)は、保険契約者や被保険者の「故意」によって生じた損害が免責ですが、傷害保険(人身傷害補償保険など)や車両保険では、「故意または重大な過失」によって生じた損害が免責となります。

 

故意免責が適用される被保険者の範囲

故意免責が適用される被保険者の範囲は、保険により異なります。

 

例えば、対人・対物賠償保険は「保険契約者・記名被保険者、記名被保険者以外の被保険者」ですが、人身傷害補償保険は「被保険者、保険金の受取人」です。

 

また、記名被保険者以外の被保険者については、被害者との関係などによって、免責の適用が個別に判断されます。

 

「未必の故意」は故意免責に該当するか

いわゆる「未必の故意」については、自賠責保険では免責になりません(確定的故意だけが免責です)が、任意保険では故意免責となることがあります。

 

「未必の故意」が故意免責に該当するかどうかは、未必の故意(認識)と実際の結果(損害)によります。

 

2つの例で考えてみましょう。

 

1.相手を負傷させるかもしれないが、負傷させても構わないという気持ちで自動車を急発進させたら、相手が転倒して負傷した。

 

2.相手を負傷させるかもしれないが、負傷させても構わないという気持ちで自動車を急発進させたら、相手が転倒して打ち所が悪く死亡してしまった。

 

[1]は、相手の負傷に対する未必の故意があったので、保険会社は故意免責を主張できます。一方、[2]は、死亡という結果に対する未必の故意はなかった(死亡させることは予期していなかった)ので、死亡による損害に関する故意免責は適用されないことになります。

 

最高裁判例

相手を路上に転倒させ負傷させることのあることを認識しながら、車を急加速させたら、相手が転倒し、結果として死亡してしまったという事件で、故意免責条項が適用されないとした最高裁判決があります。

 

傷害の故意しかなかったのに予期しなかった死の結果を生じた場合についてまで保険契約者、記名被保険者等が自ら招致した保険事故として免責の効果が及ぶことはない、とするのが一般保険契約当事者の通常の意思に沿うものというべきである。

 

本件免責条項は、傷害の故意に基づく行為により被害者を死亡させたことによる損害賠償責任を被保険者が負担した場合については適用されないものと解するのが相当である。

 

(最高裁判決 平成5年3月30日より抜粋)

 

② 異常危険免責

異常危険免責は、次のことにより生じた損害を免責とするものです。

 

  • 戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、その他これに類似の事変または暴動
  • 地震、噴火、これらによる津波
  • 核燃料物質やそれによって汚染された物の放射性、爆発性その他有害な特性の作用またはこれらの特性に起因する事故
  • 上記以外の放射線照射まはた放射能汚染
  • これらの事由に随伴して生じた事故、これらにともなう秩序の混乱にもとづいて生じた事故

 

これらが免責とされるのは、予測し得ない異常危険による損害であり、合理的な保険料の算定も困難だからです。

 

なお、自然災害を事由とする免責(天災免責)については、任意保険に共通するのは「地震、噴火、これらによる津波」ですが、対人・対物賠償保険の場合は、これに加えて、「台風・洪水・高潮」による損害も免責となります。

 

③ 競技・曲技・試験のための使用

競技・曲技・試験のための使用、これらを行うことを目的とする場所での使用は、免責とされます。競技・曲技の練習のために使用することも免責対象となります。

 

競技とは「ロードレース」や「サーキットレース」など、曲技とは「サーカス」や「スタントカー」などです。こられに使用することは免責事由に該当します。

 

保険料領収前を理由とする免責

保険期間の開始後でも、保険料を領収する前に発生した事故に対しては、保険会社は保険金を支払いません。これを「領収前免責」といいます。

 

領収前免責が設けられているのは、保険料が支払われていない場合でも保険会社に保険金の支払い義務があるとすると、保険事故が発生するまで保険料を支払わない契約者が現れる可能性があるからです。

 

保険会社の保険責任は、保険証券に記載された保健期間の初日の午後4時に始まり、末日の午後4時に終わります。

 

保険契約上の義務違反を理由とする免責

保険契約上の義務には次のようなものがあり、これらの義務に違反した場合は、保険金が支払われません。

 

  • 契約締結時の告知義務

    (保険会社が告知を求めた事項についての告知義務)

  • 保険契約締結後の通知義務

    (被保険自動車の用途・車種・登録番号の変更、保険証券の記載事項に重要な変更を生じさせる事実の発生時における通知義務)

  • 事故発生時の義務

    (損害防止軽減義務、事故発生通知義務、求償権保全行使義務、訴訟通知義務、書類提出義務など)

 

告知義務違反や通知義務違反は、保険契約の解除事由となります。保険契約の解除が、保険事故(保険金支払いの対象となる事故)発生後になされた場合でも免責となり、すでに保険会社が支払った保険金があれば、契約の始期に遡って返還請求されます。

 

事故発生時の義務違反については、保険会社が被った損害額が差し引かれます。

 

事故が発生したとき、被保険者は損害の拡大防止に努める義務を負いますが、これに違反した場合は、防止・軽減できたと認められる損害額を保険金から差し引いて支払われます。

 

事故発生を通知しなかった場合も、それによって保険会社が被った損害の額が差し引かれます。

 

保険契約当事者の合意による免責

保険契約当事者の合意とは、限定特約を付けている場合のことです。限定特約は、保険が適用される事故の範囲を限定する特約です。

 

例えば、運転者を家族だけに限定するというものです。限定特約を付けることによって保険料を安くすることができますが、家族以外の者が運転していて事故を起こしたときは、保険金が支払われません。

まとめ

任意自動車保険全般に共通する免責事由は、故意免責、異常危険免責、義務違反にもとづく免責、合意にもとづく免責などがあります。

 

各保険ごとにも、特有の免責事由が定められています。

 

自賠責保険(自賠責共済)の免責事由が「悪意免責」と「重複契約の場合の免責」だけであるのに対し、任意保険の免責事由は多様に定められているので注意が必要です。

 

それぞれの保険に特有の免責事由については、次のページをご覧ください。

 

ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。

 

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