傷害保険・車両保険に特有の免責事由

Point
  • 自分や家族、自身の所有する自動車の被害に備える自動車保険(傷害保険・車両保険)には、任意保険全般に共通する免責事由のほか、特有の免責事由が多数定められています。
  • 免責事由に該当すると、交通事故の被害に遭ったとき保険金が支払われないないので注意が必要です。

 

被保険者が「被害者になった場合に備える保険」が、傷害保険と車両保険です。これらの保険の免責事由には、任意保険に共通する免責事由のほか、傷害保険・車両保険に特有の免責事由があります。

 

ここでは、

  1. 傷害保険と車両保険に共通する免責事由
  2. 傷害保険に特有の免責事由
  3. 車両保険に特有の免責事由

について、まとめています。

 

傷害保険と車両保険に共通の免責事由

傷害保険と車両保険に共通する免責事由として、任意保険全体に共通の「故意免責」に加え「重過失免責」、無免許運転や酒気帯び運転など「状態免責」があります。

 

故意免責+重過失免責

被保険者・保険金受取人の「故意または重大な過失」によって生じた損害が免責となります。

 

賠償責任保険が「故意免責」だけなのに対して、傷害保険や車両保険では「重過失免責」も追加されます。

 

「重大な過失」とは、「ほとんど故意に近い」と解する見解が一般的のようです。
(『新版 交通事故の法律相談』青林書院より)

 

状態免責

被保険者が、次のいずれかの状態で被保険自動車を運転している場合に生じた損害については、免責となります。

 

  1. 無免許運転
  2. 酒気帯び運転
  3. 麻薬、大麻、あへん、覚せい剤、シンナー等の影響により正常な運転ができない恐れがある状態

 

これらを理由とする免責を「状態免責」といい、事故発生と因果関係がなくても免責とされます。

 

「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」

以前は「酒酔い運転」が免責とされていましたが、最近の約款では「酒気帯び運転」を免責とするものが多くなっています。酒気帯び運転は、道路交通法第65条第1項違反またはこれに相当する状態とされています。

 

道路交通法第65条1項は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」という酒気帯び運転の禁止規定です。

 

「酒気を帯びて」とは、社会通念上「酒気帯び」といわれる状態のことです。外観上(顔色や呼気など)認知できる状態にあることをいい、酒に酔った状態であることも運転への影響が外観上認知できることも必要ないとされています(『16-2訂版 道路交通法解説』より)

 

酒酔い
運転

飲酒により正常な運転ができない恐れがある状態で運転すること。
5年以下の懲役または100万円以下の罰金。
(道路交通法第117条の2第1号)

酒気帯び
運転

呼気中のアルコール濃度が0.15㎎/ℓ以上の状態で運転すること。
3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
(道路交通法第117条の2の2第3号)

 

これらは、賠償責任保険では「被害者の保護・救済」の観点から、免責事由とされていません。しかし、自身の被害を補償する保険では、不正行為によって損害を被ったとしても、保険により補償する必要はない、というわけです。

 

傷害保険に特有の免責事由

傷害保険(人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険、自損事故傷害保険)に特有の免責事由には、次のようなものがあります。

 

  1. 被保険者の闘争・自殺・犯罪行為によって生じた損害
  2. 被保険者が、被保険自動車の使用について、正当な権利を有する者の承諾を得ないで搭乗中に生じた損害
  3. 平常の生活または平常の業務に支障のない程度の微傷に起因する創傷感染症(丹毒、リンパ腺炎、敗血症、破傷風など)による損害
  4. 被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって生じた損害

 

[2]は、泥棒運転で事故を起こし死傷した場合です。

 

[3]は、微傷自体は保険金支払いの対象とならず、そもそも微傷が自動車の運行に起因して生じたものか因果関係も不明確だからです。

 

[4]は、例えば、運転者(被保険者)が、持病の心臓疾患により意識を失って起こした事故による損害です。

 

無保険車傷害保険には対人賠償保険と同様の規定もある

無保険車傷害保険は、無保険車による事故で被保険者が被った損害を填補する保険で、対人賠償保険と同様の機能があります。

 

そのため、対人賠償保険に被保険者と被害者との間に一定の関係がある場合は免責とする規定を設けているのと同じように、無保険車傷害保険でも、賠償義務者と被保険者との間に一定の関係がある場合は免責とされています。

 

車両保険に特有の免責事由

傷害保険の場合、故意免責・重過失免責は、「被保険者・保険金受取人による行為」が対象で、無免許・酒気帯び・薬物使用運転にもとづく免責は、「被保険者による行為」が対象です。

 

それに対して車両保険では、どちらも免責となる行為の対象者の範囲が広いのが特徴です。次の者の「故意・重過失」「無免許・酒気帯び・薬物使用運転」が免責となります。

 

  1. 保険契約者・被保険者・保険金受取人
  2. 所有権留保付売買契約にもとづく契約の車の買主、1年以上を期間とする貸借契約にもとづく契約の車の借主
  3. 被保険者等の法定代理人
  4. 被保険者等の業務に従事する使用人
  5. 被保険者等の父母、配偶者または子

 

車両保険に特有の免責事由として、次のようなものがあります。

 

  1. 差押え、収用、没収、破壊など国または公共団体等の公権力による損害
  2. 詐欺または横領による損害
  3. 欠陥、摩滅、腐食、さびその他自然の消耗による損害
  4. 故障損害(偶然な外来の事故に直接起因しない自動車の電気的・機械的損害)
  5. 取り外された部品や付属品の損害
  6. タイヤまたはタイヤのチューブに生じた損害
  7. 法令により禁止されている改造を行った部分品・付属品に生じた損害

まとめ

傷害保険や車両保険は、自分や家族が交通事故の被害に遭ったとき、事故の相手から十分な賠償を受けられない場合のために自ら備える保険ですが、免責事由が多いのが特徴です。

 

せっかく保険を掛けているのに保険金を受け取れないということがないように、注意することが必用です。

 

ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。

 

お困りのことがあったら、今すぐ「保険会社との交渉に強い弁護士」に相談することをおすすめします。早く弁護士に相談するほど、メリットが大きいのです!

 

弁護士法人・響

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