車両保険は「偶然な事故」による車両損害を補償
Point
- 車両保険は、他の自動車との衝突、単独事故、当て逃げ、物の落下・飛来、台風・洪水、盗難など「偶然な事故」で車両が損害を被ったときに保険金が支払われます。
- 補償の範囲や支払われる保険金額は、契約内容により異なります。
車両保険は、被保険自動車が、他の自動車との衝突や接触、単独事故、当て逃げ、火災・爆発、盗難、台風・洪水・高潮、物の落下・飛来、窓ガラス破損などの「偶然な事故」で損害を受けたときに保険金が支払われます。
他の車にぶつけられて破損した場合は、相手の対物賠償保険により損害を賠償してもらうこともできます。この場合、車両保険を使うと、支払われた保険金の限度において、加害者に対する損害賠償請求権が保険会社に移ります。
相手の対物賠償保険を先に使うか、自分の車両保険を先に使うかは、法律上の定めはなく、都合の良い方から使えばいいとされています。ただし、車両保険を利用すると、3等級下がり、保険料がアップします。
車両保険の種類
車両保険には、次の4種類があります。
一般車両保険(オールリスク)
衝突、接触、墜落、転覆、火災、爆発、盗難、台風、洪水、高潮、物の落下・飛来など、偶発的な事故により契約車両に生じた損害を填補する保険。
車対車特約付き車両保険(エコノミー)
他の自動車との接触・衝突事故で、相手が確認された場合に限り(相手自動車確認条件付)、契約車両に生じた損害を填補する保険。
車両危険限定A特約付き車両保険(限定A)
火災、盗難、台風、洪水などにより契約車両に生じた損害を填補する保険。「限定A保険」と呼ばれます。
エコノミー+限定A(車対車+A)
他の自動車との接触・衝突事故で相手が確認された場合と、火災、盗難、台風、洪水などにより契約車両に生じた損害を填補する保険。「車対車+A」とも呼ばれます。
車両保険に付帯できる特約は、補償の対象となる事故(補償範囲)を限定し、保険料負担を軽減するものです。
車両保険の種類と補償範囲
一般車両保険 | エコノミー | 限定A | 車対車+A | |
---|---|---|---|---|
他車と衝突・接触 | ○ |
○ |
× |
○ |
単独事故 | ○ |
× |
× |
× |
当て逃げ | ○ |
× |
× |
× |
物の落下・飛来 | ○ |
× |
○ |
○ |
窓ガラス破損 | ○ |
× |
○ |
○ |
台風・洪水・高潮 | ○ |
× |
○ |
○ |
火災・爆発 | ○ |
× |
○ |
○ |
盗難 | ○ |
× |
○ |
○ |
○→支払い対象となる事故 ×→支払い対象とならない事故
支払われる保険金
保険金は、保険証券記載の保険金額を限度に支払われます。ただし、保険金額が保険価額を超える場合は、保険価額が限度額となります。
保険価額とは、損害が生じた地区・時点における被保険自動車の市場販売価格相当額のことです。
この保険価額が、損害額となります。保険法第18条1項で「損害保険契約により填補すべき損害の額は、その損害が生じた地及び時における価額によって算定する」と定められ、これが損害保険における損害額算定の原則です。
保険金の算定は全損・分損で異なる
支払われる保険金の算定方法は、全損と分損で異なります。
全損とは「損害額または修理費が保険価額以上となる場合」です。車両が盗難に遭い発見できなかった場合も含みます。分損とは「損害額・修理費がいずれも保険価額未満となる場合」です。
全損 |
①損害額が保険価額以上(滅失、修理不能で無価値) |
---|---|
分損 | 修復可能な損害(損害額・修理費がいずれも保険価額未満) |
全損の場合は、保険価額が損害額とみなされ、保険価額が支払額となります。
分損の場合は、おおむね修理費が損害額となり、損害額から免責金額を差し引いた額が保険金として支払われます。免責金額までの損害については、保険金は支払われません。
免責金額とは、修理代の自己負担額です。修理に出したとき「いくらまでなら自己負担できるか」によって決めます。設定した免責金額に応じて保険料が安くなります。
全損の場合も分損の場合も、保険金に費用(車両を事故現場から修理工場へ運搬するのに要した費用など)が加算され、その合計額が支払われます。
車両価額協定保険特約
被保険自動車が、自家用乗用車や自家用貨物車など自家用8車種の場合には、車両価額協定保険特約が自動的に付帯されます。
これは、保険契約締結時に、被保険自動車と同一の用途・車種・車名・形式・仕様・年式等で同じ消耗度の自動車の市場販売価格相当額を「協定保険価額」として保険会社と加入者が協定するもので、この協定保険価額が保険金額となります。
損害額は、「損害が生じた地区・時点における市場販売価格相当額」とするのが原則ですが、その価額の評価は困難で、見解の相違によるトラブルも考えられることから、保険金額と保険価額を一致させるために設けられた特約です。
実際には、保険会社が定めた「自動車保険車両標準価格表」を参考にして、協定保険価額を決めています。
保険契約期間中は、協定保険価額が保険金額となります。保険金は、損害発生時の車両の時価額にかかわらず、協定保険価額を基準として支払われます。
保険金が支払われない主なケース(免責事由)
保険金が支払われない主な免責事由には、次のようなものがあります。
- 保険契約者、被保険者または保険金を受け取るべき者の故意または重大な過失
- 地震、噴火、またはこれらによる津波
- 戦争、暴動など
- 核燃料物質による事故
- 詐欺・横領
- 被保険自動車を競技、曲技、試験のために使用すること
- 被保険自動車に危険物を業務として積載すること
- 車両の欠陥、摩滅、腐食、錆その他自然の消耗、故障による損害など
- タイヤの単独損害(火災・盗難の場合を除く)
- 無免許・酒気帯び・麻薬等運転
【関連】⇒ 任意保険の免責事由
まとめ
車両保険は、自分の保険契約している自動車が、交通事故、火災、台風、盗難などで被害を被ったとき、その損害を補償してくれる保険です。
損害の程度に応じて、修理費相当額や保険価額・協定保険価額をもとに算出された保険金が支払われます。ただし、契約内容により、補償範囲や保険金額が異なります。
ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。
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