損害賠償請求権は 3年で時効により消滅する
Point
- 加害者に対する損害賠償請求権は、3年間行使しないと、時効により消滅します。
- 時効は、被害者が「損害および加害者を知った時」から進行します。
2つの損害賠償請求権
交通事故による損害賠償請求権には、民法の不法行為にもとづく損害賠償請求権(民法709条)と、自動車損害賠償保障法(自賠法)にもとづく損害賠償請求権(自賠法3条)があります。
交通事故の内容により、どちらの損害賠償請求権を行使するのか異なります。どんな事故のときに、どちらの損害賠償請求権を行使するのか、詳しくはこちらをご覧ください。
不法行為(民法709条)にもとづく損害賠償請求権の消滅時効については、「被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する」(民法724条)と定められています。
自賠法3条にもとづく損害賠償請求権も、民法の規定が適用され、3年で時効消滅します。
民法724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
この民法724条の後段部分は、「除斥期間」についての規定です。不法行為(事故)から20年を経過すると、いかなる事情があろうとも損害賠償請求権は消滅します。時効の中断は認められません。
一般債権の消滅時効は10年(民法167条)ですが、不法行為にもとづく損害賠償請求権は3年の短期消滅時効を規定しています。これは、不法行為の発生原因は偶発的要素が強く、長期間経過すると事実関係の認定にも支障をきたすなどの理由からです。
短期消滅時効を設けている理由についての最高裁の判断
民法724条が短期消滅時効を設けた趣旨は、不法行為に基づく法律関係が、通常、未知の当事者間に、予期しない偶然の事故に基づいて発生するものであるため、加害者は、損害賠償の請求を受けるかどうか、いかなる範囲まで賠償義務を負うか等が不明である結果、極めて不安定な立場におかれるので、被害者において損害及び加害者を知りながら相当の期間内に権利行使に出ないときには、損害賠償請求権が時効にかかるものとして加害者を保護することにあると解される。
⇒ 最高裁判決(昭和49年12月17日)の詳細はこちら
※最高裁のWebサイトにリンクしています。
消滅時効の起算点(起算日)
重要なのは、消滅時効の起算点(起算日)です。「いつから消滅時効が進行するか」ということです。
消滅時効は、請求権を行使できる時点から進行することが原則です(民法166条1項)。不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点については、民法724条で「損害および加害者を知った時」と、特別に定めています。
「損害を知った時」「加害者を知った時」とは、どの時点を指すのでしょうか?
「加害者を知った時」とは?
「加害者を知った時」について、最高裁は次のような判断を示しています。
「加害者を知った時」の意味についての最高裁判決
加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当であり、…被害者が加害者の住所氏名を確認したとき、初めて「加害者ヲ知リタル時」にあたるものというべきである。
⇒ 最高裁判決(昭和48年11月16日)は詳細はこちら
※最高裁のWebサイトにリンクしています。
賠償義務を負う者が複数の場合、時効は別々に進行する
損害賠償義務を負う者が複数いるような場合は、この「加害者を知った時」ということが重要になります。
交通事故による損害を賠償請求できる相手は運転者だけとは限りません。運転者と運行供用者が異なる場合や使用者責任を問える場合は、それぞれが賠償義務者となります。もちろん二重請求などはできませんが、誰に請求するのがもっとも効果的かを判断し、賠償請求します。
この場合、時効は賠償義務者それぞれ独立に進行します。ですから、損害賠償請求する相手によって、時効にかかる時期が異なる場合があるのです。
例えば、加害運転者を知ったのが事故の日で、後日、運行供用者を知ったとしましょう。
損害の発生は事故の日に分かっていますから、運転者に対する損害賠償請求権の時効は、事故の時から進行します。一方、運行供用者に対する損害賠償請求権の時効は、運行供用者を知った時から進行します。
運転者に対する請求権の時効消滅は、運行供用者に対する請求権に影響しませんから、運転者に対する請求権が時効消滅していても、運行供用者に対する請求権が消滅していなければ、被害者は損害賠償請求をすることができます。
「損害を知った時」とは?
「損害を知った時」について、最高裁は「民法724条にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう」としています。
この場合の「損害」とは、損害の発生の事実を知れば足り、損害の程度や額まで知る必要はないものと解されています。
⇒ 「損害を知った時」の意味についての最高裁判決(平成14年1月19日)はこちら
※最高裁のWebサイトにリンクしています。
損害別の「消滅時効の起算日」
「被害者が損害の発生を現実に認識した時」は、損害(傷害・後遺障害・死亡)ごとに異なります。損害ごとの具体的な消滅時効の起算日は、次の通りです。
| 傷害 |
事故発生の翌日が起算日です。 |
|---|---|
| 後遺障害 |
症状固定日の翌日が起算日です。 |
| 死亡 |
死亡日の翌日が起算日です。 |
※起算日を「翌日」とするのは、初日不算入原則(民法140条)によります。
後遺障害の場合は、後遺障害以外の損害(治療費や休業損害など)も含め、全損害について、症状固定時が消滅時効の起算点となります。
従来は、後遺障害については症状固定時、それ以外は事故時から、それぞれ消滅時効が進行するとされていましたが、現在は、全損害を合わせて、症状固定時から消滅時効が進行するとされています。
また、後遺障害の等級認定時でないことにも注意してください。
まとめ
交通事故の加害者に対する損害賠償請求権には、3年の消滅時効があります。それを過ぎると損害賠償請求できなくなりますから、注意が必要です。
時効が気になる場合は、早めに弁護士に相談して、時効中断の手続きをとるなど、適切な対応をすることが不可欠です。
なお、損害賠償請求権のほか、自賠責保険に対する被害者請求権の時効の問題もありますから、そちらの対応も注意してください。
お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。早く弁護士に相談するほど、メリットが大きいのです!
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