請求権の消滅時効の進行を中断させる方法

Point
  • 加害者に対する損害賠償請求権、自賠責保険に対する被害者請求権の時効中断には、それぞれ別々に手続きが必要です。
  • 被害者請求権の時効中断には、自賠責保険会社に時効中断申請書を提出します。損害賠償請求権の時効中断には、請求・差押え・承認などの方法があります。

 

時効の中断

時効の中断とは、時効の進行中に一定の事由が生じた場合に、それまでに経過した期間を無意味なものとし、改めて時効を進行させるものです。

 

時効は、次の3つの事由により中断します(民法147条)

 

  1. 請求
  2. 差押え、仮差押え、仮処分
  3. 承認

 

なお、この3つの時効中断事由は、加害者に対する損害賠償請求権の時効を中断させるものです。自賠責保険に対する被害者請求権の時効を中断させるには、別に手続きが必要です。

 

損害賠償請求権と被害者請求権は、どちらか一方を時効中断させれば、もう一方の時効も中断するという関係ではありません。それぞれ別々に時効中断の手続きが必要です。

 

請求

請求には、裁判上の請求としての訴訟提起や調停申立てなどと、裁判外の請求としての催告があります。

 

裁判上の請求

裁判上の請求は、裁判所に訴えを提起することです。訴状が裁判所に提出されたときが、時効中断の時期となります。

 

裁判外の請求

催告は、賠償義務者に口頭や書面で支払いを求めることです。口頭でも法律的にはかまわないのですが、通常は、内容証明郵便により請求書を送付します。請求書が相手に到達したときが、時効中断の時期となります。

 

ただし、催告は、その後6ヵ月以内に訴訟の提起などを行わないと、時効中断の効力が生じない(民法153条)ので注意が必要です。

 

承認

承認は、賠償義務を負う者が被害者に対して、債務の存在を知っていることを表示することです。念書などは無くてもよく、一部を支払ったなど、債務の存在を認めている行為があればよいとされています。

 

示談交渉が債務の承認と認められた事例

判例では、保険会社の担当者が加害者の代理人として、過失割合を「加害者3割・被害者7割」と主張し、過失相殺率を争点とした示談交渉をしていたことをもって、損害賠償債務を負うことを認めていたとして、最終交渉日に債務承認により時効は中断しているとした事例があります(大阪地裁・平成12年1月19日)

 

なお、この事例の場合は、加害者の代理人が、加害者の過失割合を3割と主張していたことから、債務の存在を承認しているとされましたが、加害者が無責(過失なし)を主張している場合など、示談交渉の内容によっては債務の承認にあたらない場合もあります。

 

示談交渉を継続していても、必ずしも債務の承認にはあたりませんから注意が必要です。

 

損害賠償請求権と直接請求権の時効中断手続きは別

加害者に対する損害賠償請求権と、自賠責保険に対する直接請求権は、法的根拠が異なりますから、時効中断の手続きは、それぞれ別々に行う必要があります。

 

損害賠償請求権についてのみ時効中断手続きをおこなっても、自賠責保険に対する被害者請求権の時効は中断されません。逆に、自賠責保険に時効中断手続きをしただけでは、加害者に対する損害賠償請求権の時効は中断されません。

 

自賠責保険に対する被害者請求権は、被害者が自賠責保険会社に「時効中断申請書」を提出すれば、自賠責保険会社は原則として時効中断を承認することになっています。

 

しかし、重ねていいますが、自賠責保険会社への時効中断申請書の提出は、加害者に対する民法上の損害賠償請求権の時効を中断する効力はありません。

まとめ

時効中断手続きは、損害賠償請求権と被害者請求権につき、それぞれ別々に行わなければいけません。

 

自賠責保険に対する被害者請求権は、自賠責保険会社に「時効中断申請書」を提出すれば、原則的に承認を受けられます。

 

加害者に対する損害賠償請求権の時効中断事由には、請求・差押え・承認などがありますが、時効が迫っているようなときは、裁判所に訴えを起こすのが無難です。

 

時効が迫っているなら、今すぐ弁護士に相談する必要があります。

 

弁護士法人・響

関連ページ

交通事故の加害者に対する損害賠償請求権の消滅時効と起算点
交通事故の加害者に対して損害賠償請求できる期間は3年です。それを過ぎると損害賠償請求権が消滅します。事故の種類により消滅時効の起算点が異なります。
自賠責保険に対する被害者請求権の消滅時効と起算点
交通事故の被害者が相手方自賠責保険に対して請求できる直接請求権・仮渡金請求権は、3年で時効により消滅します。いつから時効が進行するかは、損害ごとに異なります。
政府保障事業に対する填補金請求権の消滅時効と起算点
交通事故の被害者が政府保障事業に対して填補金を請求できる期間は3年です。3年を過ぎると填補金請求権は時効により消滅します。いつから時効が進行するかは、損害ごとに異なります。