後遺障害に対する損害賠償額の計算例

後遺障害に対する損害賠償額の具体的な計算例を見てみましょう。

 

交通事故による後遺症の損害賠償でトラブルの多い、むち打ち症(頸椎捻挫)を中心に見ていきます。

 

 

むち打ち症の後遺障害等級は、「12級13号」もしくは「14級9号」が認定されます。等級認定されても、大半は「14級9号」で、等級認定されないことも多くあります。

 

後遺障害の等級認定については、後遺障害に強い弁護士に相談することが大切です。

 

弁護士法人・響

設例と計算方法

次のような事例を考えます。後遺障害等級以外は、同じ条件とします。

 

  • 被害者は、35歳の男性会社員で、年収400万円。
  • 加害者と被害者の過失割合は 9対1(すなわち、過失相殺率 10%)

 

後遺障害に対する損害賠償額(後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料)のみを考えるので、治療関係費・休業損害・入通院慰謝料など、他の損害は除外します。

 

後遺障害逸失利益の計算

後遺障害逸失利益は、次の計算式で求めます。

 

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 

基礎収入は400万円です。労働能力喪失率は労働能力喪失率表より、ライプニッツ係数はライプニッツ係数表より、それぞれ求めます。

 

ライプニッツ係数は、中間利息控除係数の1つで、将来の価額を現在の価額に換算するための係数です。中間利息控除について詳しくはこちらをご覧ください。

 

後遺障害慰謝料の計算

後遺障害慰謝料は、裁判所基準の後遺障害慰謝料表より求めます。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて慰謝料基準があります。

 

後遺障害に対する損害賠償についても、自賠責保険の支払限度額があり、自賠責保険の支払限度額を超える賠償額は、任意保険会社が支払います。

むち打ち症で後遺障害等級14級9号が認定されたケース

後遺障害14級の労働能力喪失率は5%です。労働能力喪失期間が5年認められたとすると、ライプニッツ係数は4.329です。

 

後遺障害逸失利益は、

 

400万円 × 5/100 × 4.329 = 86万5,800円

 

逸失利益 86万5,800円
慰謝料 110万円
合計 196万5,800円

 

被害者の過失を10%としていますから、過失相殺後の額は、

 

196万5,800円 × 0.9 = 176万9,220円

 

なお、後遺障害14級の自賠責保険の支払限度額は75万円ですから、差額は任意保険会社から支払われることになります。

むち打ち症で後遺障害等級12級13号に認定されたケース

後遺障害12級の労働能力喪失率は14%です。労働能力喪失期間が10年認められたとすると、ライプニッツ係数は7.722です。

 

後遺障害逸失利益は、

 

400万円 × 14/100 × 7.722 = 432万4,320円

 

逸失利益 432万4,320円
慰謝料 290万円
合計 432万4,610円

 

被害者の過失を10%としていますから、過失相殺後の額は、

 

432万4,610円 × 0.9 = 389万2,149円

 

なお、後遺障害12級の自賠責保険の支払限度額は224万円ですから、差額は任意保険会社から支払われることになります。

神経系統の機能に障害を残し後遺障害9級10号に認定されたケース

後遺障害9級の労働能力喪失率は35%です。労働能力喪失期間が67歳まで認められたとすると、就労可能年数32年に対応するライプニッツ係数は15.803です。

 

後遺障害逸失利益は、

 

400万円 × 35/100 × 15.803 = 2,212万4,200円

 

逸失利益 2,212万4,200円
慰謝料 690万円
合計 2,902万4,200円

 

被害者の過失を10%(過失相殺率10%)としていますから、過失相殺後の額は、

 

2,902万4,200円 × 0.9 = 2,612万1,780円

 

なお、後遺障害9級の自賠責保険の支払限度額は616万円ですから、差額は任意保険会社から支払われることになります。

まとめ

交通事故で後遺障害が残った場合、正当な損害賠償を受けられるかどうかは、適正な後遺障害等級が認定されるかどうかがポイントです。

 

交通事故の後遺症の損害賠償でトラブルが多いのが、むち打ち症のケースです。

 

むち打ち症の後遺障害等級には、12級13号と14級9号がありますが、後遺障害12級と14級では、賠償額に大きな差があります。

 

むち打ち症は、後遺障害等級が認定されないこともあります。そうなると、後遺症に対する損害賠償を受けられません。

 

重度の後遺症はもちろん、軽度の後遺症の場合も、正当な損害賠償を受けるには、交通事故の後遺障害に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士法人・響

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