交通事故民事裁判(損害賠償請求訴訟)の審理期間と費用の目安

交通事故民事裁判(損害賠償請求訴訟)の審理期間と費用の目安

交通事故による損害の賠償請求で民事裁判(損害賠償請求訴訟)を提起した場合、解決までにどれくらいの期間を要するのか、どれくらいの費用が必要なのか、それらの目安をご紹介します。

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「裁判をすると解決まで何年もかかるし、費用もかかる」と漠然と思っている方が多いと思います。実際に裁判をするとすれば、解決までにどれくらいの期間を要するのか、費用はどれくらいかかるのか、その目安について見てみましょう。

 

 

引用しているデータは、最高裁判所の公表資料「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の第1回と第7回の交通損害賠償事件のデータです。第1回は2004年、第7回は2016年の終局事件に関する統計です。交通損害賠償事件の分析については、2015年7月公表の第6回報告書を参考にしています。

 

 ※最高裁のWebサイトにリンクしています。

交通損害賠償事件の平均審理期間は約1年

交通損害賠償事件の平均審理期間は約1年です。2016年終局事件でみると、62%が1年以内に終局し、94%が2年以内に終局しています。

 

民事訴訟には、少額訴訟と通常訴訟があります。少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いをめぐる紛争について利用できる手続で、原則として1回の審理で解決します。

 

もっとも多いのは、審理期間 6ヵ月~1年

審理期間別の事件数を見ると、最も多いのが「6ヵ月超 1年以内」で全体の41%。次が「1年超 2年以内」で32%。その次が「6ヵ月以内」で21%です(2016年実績)

 

12年前と比べて増え方が大きいのは「1年超 2年以内」で3.1倍。次いで「6ヵ月超 1年以内」が3.0倍です。

 

「第6回 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」では、「質的に困難な事件類型の増加」を指摘しています。このことが、1年前後から2年近くの審理期間を要する事件が増えている背景にあるようです。

 

審理期間別の事件数と割合
審理期間

2004年
(件数)

2016年
(件数)

増加
(倍)

6ヵ月以内

1,346
(25.6%)

3,024
(20.6%)

2.25

6ヵ月超
1年以内

2,010
(38.3%)

6,035
(41.1%)

3.00

1年超
2年以内

1,507
(28.7%)

4,719
(32.1%)

3.13

2年超
3年以内

277
(5.3%)

775
(5.3%)

2.80

3年超
5年以内

107
(2.0%)

128
(0.9%)

1.20
5年超

5
(0.1%)

11
(0.1%)

2.20

 

審理期間別の事件数

審理期間別件数

 

審理期間別の事件数割合

審理期間別件数割合

 

12年間で訴訟の件数が2.8倍に増加

交通損害賠償事件数は、2004年から2016年の12年間で5,252件から14,692件へと2.8倍に増加しています。ただし、平均審理期間は、ほとんど変わっていません。

 

事件数と平均審理期間
  2004年 2016年 増加
事件数 5,252件 14,692件 2.8倍
平均審理期間 12.2ヵ月 12.3ヵ月

 

交通事故関係の損害賠償請求訴訟が増加している背景について、「第6回 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」で、「弁護士保険が浸透し、当時者本人が弁護士費用を負担する必要がなくなったこと」を、第一の理由に挙げています。

訴額500万円以下が半数

交通損害賠償事件のうち、およそ半分(51%)が訴額500万円までの事案です(2016年実績)

 

訴額別の事件数と平均審理期間

訴額が大きいほど、審理期間が長くなる傾向があります。

 

訴額別の事件数・割合・平均審理期間
訴額 事件数
(件)
割合
(%)
平均審理期間
(月)
500万円まで 7,437 50.62% 10.4
1,000万円まで 2,151 14.64% 12.4
5,000万円まで 3,739 25.45% 14.5
1億円まで 905 6.16% 15.6
5億円まで 388 2.64% 20.5
10億円まで 5 0.03% 26.4
50億円まで 1 0.01% 30.0
50億円超 1 0.01% 1.5
算定不能・非財産 65 0.44% 10.4

 

訴額別の事件数と平均審理期間

 

訴額別の事件数の増加と増加率

2004年と2016年とを比較すると、交通損害賠償事件数は、全体的に増加しています。訴額500万円までの事件が最も増えています。

 

訴額別の事件数増加
訴額

2004年
(件数)

2016年
(件数)

増加
(倍)

500万円
まで

1,958
(37.3%)

7,437
(50.6%)

3.8

1,000万円
まで

731
(13.9%)

2,151
(14.6%)

2.9

5,000万円
まで

1,711
(32.6%)

3,739
(25.5%)

2.2
1億円まで

590
(11.2%)

905
(6.2%)

1.5
5億円まで

249
(4.7%)

388
(2.6%)

1.6

10億円
まで

2
(0.04%)

5
(0.03%)

2.5

 

訴額別の事件数

訴額別の事件数

 

訴額別の事件数割合

訴額別の事件数(率)

裁判は判決2割・和解7割で解決

損害賠償請求訴訟を提起したとしても、すべてが判決に至るとは限りません。交通損害賠償事件は、約7割(72%)が裁判上の和解によって終結しています。判決は約2割(23%)です。あとは、取り下げ、その他の事由で終局しています(2016年実績)

 

和解で終結するケースが多いのは、判決まで進むと時間がかかるうえ、上訴もあり得るので、解決の見通しが立ちにくいため、裁判を戦い続けるのが経済的にも精神的にも難しいからです。和解の場合は、判決に比べて短期間で結果が確定します。

 

また、判決なら厳密に損害算定がなされるのに対し、和解であれば慰謝料等で柔軟な損害算定が可能となる場合があり、和解の方が判決よりも被害者にとって有利になる場合があるのです。

 

判決・和解の件数と率

判決率・和解率を2004年と2016年で比べると、判決率が下がり和解率が上がっています。

 

ただし、「第6回 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」では、「質的に解決が困難な事件」を中心として、「当時者本人が、金額の問題ではなく公正な判断を得たいなどといった意向を優先し、和解による解決に消極的な傾向がある」とも指摘されています。

 

一方で、従来なら弁護士に頼んで訴訟を起こすと費用倒れになる事案(物損事故など少額のケース)でも、弁護士保険の浸透で訴訟を起こしやすくなっています。そういうケースが、訴訟件数と和解率の増加に寄与していると考えられます。

 

終局事由別の事件数と割合
  2004年 2016年
判決

1,897件
(36.1%)

3,425件
(23.3%)

和解

3,075件
(58.5%)

10,506件
(71.5%)

取下げ

190件
(3.6%)

501件
(3.4%)

その他

90件
(1.7%)

260件
(1.8%)

 

終局事由別の事件数

終局事由別の事件数

 

終局事由(率)

終局事由(率)

裁判費用(訴訟費用・弁護士費用)の目安

裁判費用の主なものは、①裁判所に納める「訴訟費用」と、②弁護士に支払う「弁護士費用」です。訴訟費用は訴額(訴えを起こした請求額)により決まり、弁護士費用は依頼者の得る経済的利益により決まります。

 

訴訟費用

訴訟費用として必要なのは、訴えの提起の際に訴状に貼る収入印紙代と、訴状等を当事者に郵送するための予納郵便切手代です。

 

訴訟の申立て手数料(印紙代)は、「民事訴訟費用等に関する法律」で決められています。訴額に応じて、算出方法が定められています。

 

予納郵便切手代は、通常訴訟の場合、東京地裁では、当事者(原告・被告)がそれぞれ1名の場合は6,000円、当事者が1名増すごとに2,178円が加算されます。

 

訴訟費用の算定方法
訴額 申立て手数料
100万円までの部分 その価額10万円までごとに1,000円
100万円を超え500万円までの部分 その価額20万円までごとに1,000円
500万円を超え1,000万円までの部分 その価額50万円までごとに2,000円
1,000万円を超え10億円までの部分 その価額100万円までごとに3,000円
10億円を超え50億円までの部分 その価額500万円までごとに1万円
50億円を超える部分 その価額1,000万円までごとに1万円

 

訴訟費用の例
訴額 申立て手数料
100万円 10,000円
500万円 30,000円
1,000万円 50,000円
5,000万円 170,000円
1億円 320,000円

 

 ※最高裁のWebサイトにリンクしています。

 

訴訟費用が支払えないときは「訴訟救助」の制度がある

訴訟費用を支払う資力がないときは、支払いを猶予する「訴訟上の救助」(民事訴訟法82条・83条)の制度があります。猶予された訴訟費用は、負担することとされた相手方が支払います。ただし、明らかに勝訴の見込みがない場合は、認められないことがあります。

 

弁護士費用

裁判費用の中で最も大きいのが弁護士費用です。弁護士費用は、統一基準はなく、それぞれの弁護士事務所で報酬基準を定め、依頼者と協議の上で費用を決めるのが原則です。

 

なお、日弁連の旧・報酬基準を採用している弁護士事務所も多く、弁護士保険の弁護士費用支払基準(LAC基準)も、旧・報酬基準に準じています。

 

 

旧・報酬基準
経済的利益の額 着手金 報酬金
300万円以下の部分 8% 16%
300万円を超え3,000万円以下の部分 5% 10%
3,000万円を超え3億円以下の部分 3% 6%
3億円を超える部分 2% 4%

※事件の内容により30%の範囲内で増減額できます。
※着手金の最低額は10万円。
※経済的離籍の額は、着手金は請求額、報酬金は取得できた賠償額を基礎とします。

 

弁護士費用は訴訟費用に比べて高額

例えば、訴額500万円、賠償金を300万円得たとしましょう。

 

この場合、着手金は34万円(300万円×8%+200万円×5%)、報酬金は48万円(300万円×16%)、合わせて82万円です。これに事件の難易性や依頼者の資産を加味して修正し、実際の報酬額を決めます。このほか、法律相談料や実費、事務手数料なども必用です。

 

一方、裁判所に納付する訴訟費用は3万円ですから、弁護士費用が、いかに大きいかお分かりでしょう。

 

弁護士保険があれば弁護士費用の負担なし

最近は、弁護士保険が普及してきましたから、任意自動車保険に弁護士費用特約(弁護士保険)を付けている方も多いでしょう。弁護士費用特約を利用できれば、最大300万円まで弁護士費用が補償されます。

 

弁護士費用の心配なく、弁護士を頼めるようになっています。

 

以前は、物損事故など低額の損害賠償請求訴訟は、弁護士に頼むと費用倒れになってしまうので、裁判に持ち込むことは少なかったのですが、弁護士保険の普及にともない、低額訴訟も増えています。

 

訴額500万円までの交通損害賠償事件が増えているのは、こうした背景もあるのです。

 

弁護士費用を支払えないときは「民事法律扶助」制度がある

弁護士保険にも加入していなくて、弁護士費用を支払うことができないとき、法テラスに相談してみましょう。条件を満たせば、弁護士費用の立替をしてもらえる「民事法律扶助」制度を利用できる場合があります。

まとめ

交通事故の損害賠償請求訴訟の審理期間は、最高裁の統計資料によれば平均で約1年です。約6割が1年以内に解決しています。

 

訴訟費用は訴額により決まります。裁判費用で大きいのは弁護士費用ですが、いまは弁護士保険が普及し、弁護士費用の心配なく、裁判を利用しやすくなっています。

 

裁判は、費用も時間もかかりますが、近時は、「高次脳機能障害」や「低髄液圧症候群」など新型後遺障害が問題となることもあり、民事訴訟を提起し、裁判手続による公正な判断を求める方が増えています。

 

裁判をすべきかどうか迷っているなら、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。このサイトでは、相談無料・着手金0円、交通事故の損害賠償請求に強い弁護士事務所をご紹介していますから、弁護士保険に加入していない方でも安心です。弁護士選びの参考にしてみてください。

 

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公開日 2017-08-25 更新日 2023/03/18 13:28:15