少額訴訟は1日で終結

Point
  • 請求金額が60万円以下の金銭請求事件については、簡易裁判所で、少額訴訟手続きを利用できます。審理は1回の口頭弁論期日で終了し、即日、判決が言い渡されます。
  • 過失割合に争いがなく、物損のように損害の把握が容易な事案に適します。逆に、相手が過失相殺を争ってくるようなケースでは、少額訴訟での解決は困難です。

 

目次
  1. 60万円以下の損害賠償請求は少額訴訟を利用できる
  2. 少額訴訟手続の6つの特徴
  3. 少額訴訟が適するケース・適さないケース
  4. まとめ

 

60万円以下の損害賠償請求は少額訴訟を利用できる

少額訴訟は、請求額が60万円以下の場合に、簡易な手続きで迅速に解決できるように設けられた訴訟手続です。少額訴訟の申立ては、原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所に行います。

 

もともと簡易裁判所は、請求額が140万円以下の軽微な事件について、簡易な手続きで迅速に解決するために設けられた裁判所ですが、少額訴訟については、さらに手続きの簡易化を図っています。

 

請求額が60万円を超える場合は、通常訴訟で訴えを起こすことになります。

少額訴訟手続の6つの特徴

少額訴訟手続の主な特徴をまとめておきます。

 

 

少額訴訟は 1日で判決が出る

少額訴訟は、原則として、1回の口頭弁論期日で集中審理し、口頭弁論終結後ただちに判決が言い渡されます。つまり、少額訴訟手続は、第1回口頭弁論期日の1日で、審理から判決まで行われるのです。

 

民事訴訟法第370条1項(1期日審理の原則)

少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。

民事訴訟法第374条1項(判決の言渡し)

判決の言渡しは、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちにする。

 

審理当日(口頭弁論期日)は、裁判所が当事者双方の言い分を聞き、証拠調べを行い、それにもとづいて判決を下します。

 

そのため、交通事故証明書などの証拠書類は審理の期日までに提出し(民訴法370条2項)、証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限られます(民訴法371条)

 

通常訴訟に比べ、少額訴訟は手続が簡易

通常訴訟では、裁判所に訴状を提出すると、裁判所から相手方に訴状と呼出状が送達され、裁判が始まります。準備書面で双方が主張を出し合い、証拠調べ・証人尋問・当事者尋問が行われ、和解勧告などの手続きを経て、最終的に判決に至ります。

 

裁判の手続きは、だいたい1ヵ月に1回くらいのペースで行われ、早くても半年、相手が争えば1~2年、上訴すれば数年かかることもあります。交通損害賠償事件の場合、1審の平均審理期間は 1年です。

 

訴訟手続も複雑なので、本人訴訟ができるといっても、弁護士を頼まなければ納得いく結果は得られません。

 

そこで、当事者の手間と負担を軽減し、迅速な解決を図るために導入されたのが少額訴訟手続です。少額訴訟は、素人でも訴状を作成でき、本人訴訟も可能です。

 

少額訴訟といっても、その判決は、通常訴訟の判決と何ら変わらず、履行されない場合は強制執行が可能です。

 

和解的内容の判決も可能

少額訴訟では、裁判所が請求を認容する判決をする場合、執行費用倒れを避けるために実行可能な弾力的判決をすることができます。

 

具体的には、相手方(被告)の資力その他の事情を考慮して、判決言渡しから3年以内で「支払猶予」か「分割払い」を定めることができ、さらに、その定めに従って支払う限りにおいて、訴え提起後の遅延損害金の支払い義務の免除を定めることができます(民訴法375条1項)

 

もちろん、分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めもします。

 

こうした和解の場合の内容に近い判決を出すことができるのも、少額訴訟の特徴です。

 

債務の任意整理を弁護士に頼んだ経験のある方なら分かると思いますが、任意整理では、過払金等を整理した後、基本的に3年以内の分割払いで当事者同士が和解します。その際、遅延損害金や将来利息(和解成立日から完済日までの利息)は付けません。

 

少額訴訟の判決に対しては控訴できない

少額訴訟の判決に対しては、控訴できません(民訴法377条)。異議申立が認められているだけです(民訴法378条)

 

異議申立がなされると、訴訟は口頭弁論終結前の状態に戻り、簡易裁判所における通常の訴訟手続に移行します(民訴法379条)。なお、その結果出された判決(少額異議判決)に対しては、控訴できません(民訴法380条1項)。少額異議判決が、確定判決となります。

 

このように、少額訴訟では、異議申立がなければ即日、異議申立があっても簡易裁判所だけで決着がつくことになります。

 

少額訴訟を提起しても相手は通常訴訟を選択できる

原告が少額訴訟を選択しても、相手方(被告)は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができます(民訴法373条1項)

 

少額訴訟は、原告が選択する手続きですから、被告は応じたくなければ通常訴訟の手続きを選択することができるのです。

 

被告が原告に対して請求権があるとき、少額訴訟では反訴請求できませんが、通常訴訟では反訴請求が可能です。

 

ですから、相手方が過失相殺等で争う場合は、少額訴訟を提起しても、結局、通常訴訟に移行することになります。

 

なお、少額訴訟の提訴後は、原告から通常訴訟の審理を請求することはできません。

 

同じ簡裁での少額訴訟は年10回まで

交通事故の訴訟では関係することはありませんが、同じ簡易裁判所で少額訴訟手続を利用できるのは、1年間(1月~12月)で10回までとされています。

 

少額訴訟での審理・裁判を求めるときには、訴えを提起する簡易裁判所において、その年に少額訴訟による審理・裁判を求めた回数を届け出なければなりません(民訴法368条3項)

 

これは、本来、個人が利用するために設けられた制度である少額訴訟を、業者側(消費者金融など)が利用することを防ぐためです。

少額訴訟が適するケース・適さないケース

少額訴訟が適するケース、適さないケースについて、事例をあげておきます。

 

少額訴訟が適するケース

少額訴訟は、過失割合に争いがなく、物損のように損害の把握が容易な事案に適します。

 

少額訴訟が適さないケース

次のようなケースは、少額訴訟に適しません。

 

過失割合に争いがあるケース

人損のように「損害の把握が難しい事案」や「過失相殺に争いがある事案」は、少額訴訟は適しません。

 

少額訴訟手続では、十分な証人尋問や当事者尋問を行うことが難しく、また、不服申立ての制限(控訴の禁止)があるため、結局、相手方から通常訴訟手続に移行されてしまうからです。

 

相手の住所が不明のケース

相手方(被告)の住所がわからないとき、少額訴訟では公示送達手続が取れません。

 

第1回口頭弁論期日の呼出状と訴状が、必ず相手方に送達されなければいけません。送達できないときは、通常訴訟により公示送達手続を取るほかありません。

まとめ

少額訴訟は、請求額が60万円以下の場合に利用できます。

 

簡易・迅速な解決を図るための制度で、原則として1回の審理で終結し、即日、判決が言い渡されます。1日限りで終結するため、時間・費用・労力の点で被害者に有利な制度です。

 

少額訴訟は、請求金額が少ない物損事故や自転車事故などの場合に有効です。

 

ただし、原告が少額訴訟を提起しても、相手方(被告)が応じなければ通常訴訟に移行するなど、いくつかの制約があります。少額訴訟で行くか通常訴訟で行くか、相手の主張を吟味して決める必要があります。

 

お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士法人・響

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