複数車両が関与した共同不法行為の過失相殺

複数の車両が関与して交通事故が発生した場合、多くは共同不法行為が成立し、各加害者が連帯して全損害を賠償する責任を負います(民法719条1項)

 

共同不法行為で被害者にも過失があるときには、過失相殺が行われますが、その際、絶対的過失割合を認定できるときは、絶対的過失相殺の方法により過失相殺します。これを判示したのが、平成15年7月11日の最高裁判決です。

 

目次
  1. 最高裁判例(平成15年7月11日)のポイント
  2. 平成15年の最高裁判決はどんな事案だったのか
  3. 最高裁の判断
  4. 絶対的過失割合を認定できるときは絶対的過失相殺
  5. まとめ

 

 

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最高裁判例(平成15年7月11日)のポイント

複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(絶対的過失割合)を認定することができるときには、絶対的過失割合にもとづく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為にもとづく賠償責任を負う。

 

平成15年の最高裁判決はどんな事案だったのか

平成15年の最高裁判決は、次のような事案に対するものです。なお、実際の判決は、車の所有者、保険会社(共済組合)、自賠責、求償などが絡み複雑ですので、大筋が分かるように簡略化しています。

 

事案の概要

カーブ付近で違法駐車をしていた車両[C]を避け、センターラインをはみ出して進行した加害車両[B]と、反対方向から制限速度を超過して走行してきた被害車両[A]がカーブを抜けたところで、正面衝突した事故です。

 

原審の名古屋高裁は、車両[C]には非常点滅表示灯を点灯させず駐車禁止の車道にはみ出して駐車させた過失、車両[B]には対向車線にはみ出して進行した過失、車両[A]には速度違反、安全運転義務違反の過失が認め、A:B:C の過失割合を 1:4:1 と認定しました。

 

これについては、最高裁も「適法」と認定しました。

 

平成15年の最高裁判決

 

原審(名古屋高裁)の判断

問題は、絶対的過失割合を認定しながら、相対的過失相殺の方法により損害賠償額を算定したことです。

 

原審は、絶対的過失割合をA1:B4:C1と認定した上で、相対的過失相殺を採用し、過失相殺率を、AとBの間ではA1:B4(Aの過失20%)、AとCの間ではA1:C1(Aの過失50%)として、賠償額を算定しました。

 

名古屋高裁の判断の概要はこうです。損害額については、分かりやすくするため、1万円未満は切り捨てています。

 

  1. Aは、自己の損害につき、自己の過失割合である6分の1を控除した6分の5の限度で、BとCに対して、各当事者ごとの相対的な過失割合に従って損害賠償を請求することができる。
  2. したがって、Aは、581万円の6分の5である484万円を上限として、Bに対しては581万円をAの過失割合5分の1による過失相殺をした後の464万円、Cに対してはAの過失割合2分の1による過失相殺をした後の290万円を請求し得る。
  3. BとCの損害賠償義務が競合する範囲は、464万円と290万円を加え、484万円を控除した270万円であり、Bのみが損害賠償義務を負うのは、464万円から270万円を控除した194万円である。
  4. Bの負担部分は、270万円に5分の1を乗じ、194万円を加えた248万円である。

最高裁の判断

平成15年7月11日の最高裁判決は、「原審の判断は是認できない」として、次のように判示しました。

 

複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。

 

これに反し、各加害者と被害者との関係ごとにその間の過失の割合に応じて相対的に過失相殺をすることは、被害者が共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとすることによって被害者保護を図ろうとする民法719条の趣旨に反することになる。

 

したがって、BとCは、Aの損害581万円につき、Aの絶対的過失割合である6分の1による過失相殺をした後の484万の限度で不真正連帯責任を負担します。

 

このうち、Bの負担部分は5分の4にあたる387万円、Cの負担部分は5分の1にあたる96万円となります。

 

平成15年の最高裁判決は、複数の加害者の過失と被害者の過失が競合した1つの事故において、加害者間に共同不法行為が認められ、加害者・被害者それぞれの絶対的過失割合が認定可能な場合における過失相殺の方法(絶対的過失相殺)と、加害者らが連帯して賠償責任を負うことについて、初めて最高裁が判断を示した判決で、大きな意義があります。

 

最高裁判決(平成15年7月11日)はこちら

※最高裁のWebサイトにリンクしています。

絶対的過失割合を認定できるときは絶対的過失相殺

共同不法行為における過失相殺については、平成13年に最高裁が、医療過誤との共同不法行為について相対的過失相殺の方法を採用する判決を出して以降、共同不法行為では、相対的過失相殺が原則と理解されたこともありました。

 

しかし、平成15年の最高裁判決は、絶対的過失割合を認定することができるときは、絶対的過失相殺の方法を採用すべきとし、相対的過失相殺の方法を退けました。

 

最高裁が判例を変更したわけではありません。ポイントは「絶対的過失割合を認定することができるときには、絶対的過失相殺の方法により過失相殺する」ということです。

 

「絶対的過失割合を認定することができるとき」とは、どんな場合か。これについては、最高裁は具体的な判断基準を示していません。

 

しかし、相対的過失相殺を採用した平成13年の最高裁判例と対比すれば、ある程度の方向性は見えます。

 

すなわち、この事案のように、同時に同一場所で起きた「同時事故」は、1つの交通事故として捉えることができるので、絶対的過失相殺を認定することができます。

 

それに対して「異時事故」は、第1事故・第2事故で、それぞれ加害者との関係において被害者の過失を対比することになります。交通事故と医療過誤の競合を考えれば明らかでしょう。共同不法行為といっても内容や性質の異なる過失が競合する場合は、絶対的過失割合を認定することは困難です。

 

ただし、「異時事故」でも、玉突き事故や二重轢過事故など時間的場所的に近接した「同時類似事故」の場合は、絶対的過失相殺を認定できる場合があります。

まとめ

複数の自動車・バイクが関与した共同不法行為の場合、絶対的過失割合を認定することができるときは、絶対的過失相殺の方法により過失相殺できます。

 

絶対的過失相殺は、各加害者が全損害に連帯して賠償責任を負い、賠償請求する際も、いずれかの加害者1人に行えばよいので、被害者に有利です。

 

複数の車両が関与した「衝突事故」や「玉突き事故」などの過失割合・過失相殺でお困りのときは、交通事故の損害賠償問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

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過失割合に納得できない

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