交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターの違い

「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」を徹底比較

「交通事故紛争処理センター」(紛セ)と「日弁連交通事故相談センター」(N-TACC)どちらに相談しようか迷っている方は要チェック。両者の違いを徹底比較し、どちらを選ぶとよいか、5つの判断ポイントをご紹介します。

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「紛セ」と「弁セ」の違い

「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」の違いを一覧でまとめておきます。

 

比較項目 交通事故紛争処理センター 日弁連交通事故相談センター
メイン業務 和解斡旋 示談斡旋、法律相談
相談所 11ヵ所 159ヵ所
面接相談 予約制。約1ヵ月半待ち。 予約必要なし。同一事案につき5回まで無料。1回30分程度。
電話相談 実施していない。 一人10分程度。
相談できる内容 和解斡旋の事前相談の位置づけ。治療終了後または後遺障害等級認定後など示談交渉できる段階でなければ予約できない。 交通事故の損害賠償に関することなら何でも相談できる。事故直後や治療中など示談交渉を開始できない段階でも相談可能。
示談斡旋の対象事案 自動車事故による損害賠償に関する紛争。 自動車事故による損害賠償に関する紛争。例外として「自転車」事故についても示談斡旋できる場合がある。
任意保険等に未加入の場合 相手が任意保険・任意共済に未加入の場合は原則として和解斡旋できない。 人損、人損をともなう物損は、相手が自賠責のみでも無保険でも示談斡旋可能。物損のみの場合は任意保険等に加入していないと示談斡旋できない。
示談斡旋回数 通常 3~5回で和解成立。 原則 3回で示談成立。
スピード

時間がかかる。
第1回目が申込の1ヵ月半後。
和解斡旋は 1ヵ月に1回のペース。

比較的早い。
第1回目が申込の3~4週間後。
示談斡旋は2~3週間に1回のペース。

審査できる事案 審査結果(裁定)に拘束される損保会社と共済が示談代行しているとき。 審査結果(評決)に拘束される共済が示談代行しているとき。
片面的拘束力 審査結果(裁定)は損保会社と一部の自動車共済に対して片面的拘束力がある。 審査結果(評決)は特定の自動車共済に対して片面的拘束力がある。
担当弁護士 相談と和解斡旋は同じ弁護士が担当。 相談と示談斡旋は別の弁護士が担当。
費用

法律相談・和解斡旋・審査すべて無料。
必要な書類の取り寄せ費用、センターまでの交通費などは自費。

法律相談・示談斡旋・審査すべて無料。必要な書類の取り寄せ費用、センターまでの交通費などは自費。
時効完成猶予の効力 和解斡旋の申込に時効完成猶予(時効中断)効力はない。 示談斡旋の申込に時効完成猶予(時効中断)効力はない。

実績
(2015年度)

相談:21,571件

 

新規和解斡旋依頼:8,011件
和解斡旋終了:7,442件
和解斡旋成立:6,517件
(成立率:88%)

 

新規審査申立:653件
審査終了:641件
審査和解成立:597件
(成立率:93%)

相談:44,886件

 

新規示談斡旋受任:1,221件
示談斡旋終了:1,233件
示談斡旋成立:1,018件
(成立率:83%)

 

新規審査受任:19件
審査終了:21件
審査示談成立:17件
(成立率:81%)

※実績は、各センターの「平成27年度事業報告書」等より。

 

片面的拘束力

交通事故紛争処理センターと協定している「損害保険会社」や「一部の自動車共済」は、審査結果(裁定)を尊重する義務があります。

 

日弁連交通事故相談センターと協定している「特定の自動車共済」は、審査結果(評決)を尊重する義務があります。

 

「審査結果を尊重する義務」とは、事実上「審査結果に従う義務」ということです。審査結果に拘束されるのは、損保・共済の側だけです。これを片面的拘束力といいます。被害者は審査結果に拘束されませんから、審査結果が不服なら訴訟を提起できます。

 

時効完成猶予の効力

「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」に和解・示談の斡旋を申し込むだけでは、損害賠償請求権の消滅時効の完成猶予(旧民法の時効中断)させる効果はありません。

 

消滅時効を完成させないためには、法定の時効完成猶予の手続を取る必要があります。

 

「自転車」事故の場合

歩行者と自転車、あるいは自転車同士など「自転車」事故の場合は、どちらも示談の斡旋を受けられません。

 

ただし、日弁連交通事故相談センターでは、例外として、全労済の「マイカー共済」については、「自転車賠償責任補償特約」が付いていれば、「自転車」事故についても示談斡旋を受けられます。

各センターと協定している損害保険会社・共済

「交通事故紛争処理センター」および「日弁連交通事故相談センター」と協定している損害保険会社および共済は、次の通りです。

 

各センターと協定している損保や共済は、審査結果に拘束され、従う義務があります。

 

保険会社・共済 交通事故紛争処理センター 日弁連交通事故相談センター

損害保険会社

×

JA共済連

全労済

交協連

全自共

日火連

教職員共済生協

×

自治協会

×

町村生協

×

都市生協

×

市有物件共済会

×

自治労共済生協

×

○:協定している ×:協定していない (2017年6月1日現在)

  • 損害保険会社 : 日本損害保険協会・外国損害保険協会に加盟する保険会社
  • JA共済連 : 全国共済農業協同組合連合会
  • 全労済 : 全国労働者共済生活協同組合連合会
  • 交協連 : 全国トラック交通共済協同組合連合会
  • 全自共 : 全国自動車共済協同組合連合会
  • 日火連 : 全日本火災共済協同組合連合会
  • 教職員共済生協 : 教職員共済生活協同組合
  • 自治協会 : 全国自治協会
  • 町村生協 : 全国町村職員生活協同組合
  • 都市生協 : 生活協同組合全国都市職員災害共済会
  • 市有物件共済会 : 全国市有物件災害共済会
  • 自治労共済生協 : 全日本自治体労働者共済生活協同組合

「紛セ」と「弁セ」のどちらを選ぶとよいか判断のポイント

交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターのどちらを選ぶとよいか、判断のポイントとしては、次の5つがあります。

 

5つの判断ポイント
  1. 法律相談だけで間に合う(和解斡旋を要請しない)のであれば、「日弁連交通事故相談センター」が早い。
  2. 相手が損保会社で、双方が主張する示談金額に相当な乖離がある場合は、時間はかかるが、損保に強制力のある「交通事故紛争処理センター」に和解斡旋を要請する。
  3. 相手が損保会社で、双方が主張する示談金額にそれほど開きがない場合は、「日弁連交通事故相談センター」に示談斡旋を要請すると早い。
  4. 相手が自動車共済なら、共済に強制力のある「日弁連交通事故相談センター」に示談斡旋を要請する。
  5. 相手が任意保険・任意共済に加入していない場合は、「日弁連交通事故相談センター」に示談斡旋を要請する。

事実関係に争いがあるときは利用できない

「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」は、交通事故分野の代表的なADR機関(裁判外紛争処理機関)です。当事者間で示談がまとまらないときに、公正中立の第三者が間に入って、示談の斡旋をするのが主な業務です。

 

どちらの「センター」も、裁判と比べて早く、しかも無料で解決できるのが大きなメリットです。損害額は裁判所基準で算定し、示談斡旋案を提示します。担当する弁護士は、交通事故に精通した弁護士です。

 

ですから、被害者が、個人で相手の保険会社や共済と交渉するより、ずっと有利な条件で示談できる可能性が高まります。

 

過失割合や後遺障害等級の争いは示談斡旋・審査できない

ただし、どちらのセンターを利用する場合にも共通の注意点があります。

 

「過失割合」や「後遺障害の等級認定」など事実関係に争いがある場合は、馴染まないということです。そういう場合は、まず事実認定をしなければ解決できないからです。

 

例えば、双方が「自分の方の信号が青だった」などと主張し、過失割合に関して争いがある場合は、裁判による解決しかありません。

 

後遺障害等級の認定に関して争いがある場合は、まず、異議申立手続きや「自賠責保険・共済紛争処理機構」の紛争処理手続きにより解決することになります。各センターでは、自賠責の認定した後遺障害等級を前提に、損害額を算定し示談斡旋するからです。

 

自賠責の紛争処理手続きで解決できれば、「紛セ」や「弁セ」に持ち込み、示談斡旋や審査の手続きが可能となります。それで解決できないときは、裁判を起こすしかありません。

各センターで解決が見込める事案とは?

「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」は、次のような事案の解決に適しています。

 

  • 事実関係に争いがなく、第三者が間に入ることで迅速に解決可能な比較的簡易な事案
  • 弁護士に委任すると費用倒れになる少額の事案

 

こういうケースの場合、各センターに相談し、示談斡旋を要請すると、費用がかからず解決できます。

 

損害賠償責任や過失割合、後遺障害等級など事実関係に争いがあり、示談が難航している場合は、「扮せ」や「弁セ」での解決は難しいので、直接、弁護士事務所に相談する方がよいでしょう。

まとめ

「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」のメリット・デメリットは、大まかには次のように整理できます。

 

  交通事故紛争処理センター 日弁連交通事故相談センター
メリット
  • 相手が損保なら審査結果に拘束力があるので有利。
  • 裁判所基準で損害額を算定。
  • 交通事故の損害賠償に精通した弁護士が担当する。
  • 相手が特定の共済なら審査結果に拘束力があるので有利。
  • 裁判所基準で損害額を算定。
  • 交通事故の損害賠償に精通した弁護士が担当する。
  • 進行ペースが早い。上手くいけば申込みから3~4ヵ月で示談成立。
  • 人身事故の場合には相手が「自賠責のみ」「無保険」でも示談斡旋可能。
  • 相談体制が充実。示談斡旋の相談以外でも可能。電話相談も受け付け。
デメリット
  • 進行ペースが遅い。
  • 協定している共済は一部だけ。
  • 相手が自賠責のみの場合は和解斡旋できない。
  • 法律相談は和解斡旋に関わることのみで予約制。
  • 治療終了後や後遺障害等級認定後でなければ相談の予約ができない。
  • 損保との協定がないので相手が損保の場合は審査結果に拘束力がない。
  • 3回までに示談成立に至らなければ決裂。

 

「交通事故紛争処理センター」か「日弁連交通事故相談センター」かを決めるとき、大事なのは「相手が、損保か共済か」ということです。

 

相手が損保で、双方の主張する賠償金額に開きが大きい場合は、時間はかかりますが、審査結果に拘束力のある交通事故紛争処理センターがよいでしょう。相手が共済なら、審査結果に拘束力のある日弁連交通事故相談センターがよいでしょう。

 

なお、相手が損保でも、賠償金額の乖離がそれほど大きくなければ、日弁連交通事故相談センターでも示談斡旋により解決に至っています。そういう場合は、進行の早い日弁連交通事故相談センターを利用するのもよいでしょう。

 

各センターの担当弁護士は、中立の立場で示談斡旋するのが仕事です。あなたの代理人ではありません。弁護士に示談交渉を委任したい場合は、弁護士事務所に相談して委任手続きを行う必要があります。

 

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公開日 2017-05-30 更新日 2023/03/18 13:28:15