過少申告・無申告・赤字申告の場合の休業損害

被害者が確定申告で、過少申告や赤字申告をしていたり、無申告だった場合でも、実際の収入額を立証できれば、実所得にもとづいて休業損害が認められます。

 

 

事故前に「どれくらい収入があったか」を立証できれば良い

事業所得者の休業損害の算定にあたっては、確定申告書など税務関係書類で収入額を立証するのが原則です。

 

それは、税務関係書類が有力な証拠となるからであって、必ず確定申告書類により証明しなければならない、ということではありません。

 

要は、休業損害の算定根拠とした基礎収入額を証明できればよいのです。税務関係書類を使わずに立証できるのであれば、それでも構わないのです。

 

ただし、他の方法で収入を立証するのは、容易ではありません。

 

過少申告・無申告の場合

申告外所得がある場合でも、客観的・信用性の高い証拠により実際の収入額を立証できれば、その収入額が認められる可能性があります。

 

とはいえ、申告所得以上の収入があるという主張は、自己矛盾の主張ですから、その認定は厳しいのが現実です。

 

損害賠償における申告外所得の考え方

申告外所得の主張については、「自ら過少申告して税金の支払いを一部免れているのだから、公序良俗や信義則の観点から一切認められない」とする見解や、「税務署に修正申告しない限り認めない」とする見解もあります。

 

しかし、過少申告は、税務署との関係で問題となるものです。一方、損害賠償は、加害者との問題です。

 

「損害の衡平な分担と適正な損害填補」が損害賠償の目的ですから、「申告外所得は一切認めない」「修正申告をしない限り認めない」というのは、バランスを欠きます。

 

損害賠償請求において、確定申告額は有力な証拠にはなりますが、収入を立証する1つの方法にすぎません。

 

実際の収入が確定申告額を上回る場合、それを立証できれば、訴訟では、その額が認定されます。

 

どうやって申告外所得を立証するか?

では、どうやって実際の収入額を立証すればよいのでしょうか?

 

税務署に提出した確定申告額より実際の収入が多かったことを立証しなければなりませんから、ハードルは相当高いものとなります。

 

具体的には、所得を裏付ける預貯金通帳、会計帳簿、伝票類、事業収入を裏付ける取引関係書類、レジの控え、収支を記載したメモやノートなどにより、実所得額を立証する必要があります。

 

実所得額が立証できない場合でも、生活実態などからみて相当の収入があると認められるのであれば、平均賃金を参考に、基礎収入を認定することもあります。

 

認定事例

個人タクシー運転手につき、妻が作成した売上金記録が、組合の作成したチケット換金明細書等と照合して正確であるとして、確定申告書の売上金を上回る金額を算定基礎とすることを認めた例。
(横浜地裁・平成20年9月4日)

赤字申告の場合

赤字となっている所得額に、青色申告特別控除額、専従者給与、固定経費を加算しても、なお赤字となる場合は、休業損害は認められにくい傾向があります。

 

事業所得者の休業損害の計算方法は2つあります。2つの方法についてはこちらをご覧ください。

 

事故前の所得をもとに休業損害を算出する方法では、事故前が赤字であるため、休業損害を算出できません。

 

事故前後の所得を比較して休業損害を算出する方法であれば、赤字の増加分をもって休業損害と捉えることもできます、

 

ただ、赤字事業の場合、休業することで、その赤字が減少することがあり、そうすると休業損害を算出できません。

 

その他、平均賃金をもって基礎収入とするなどの方法もありますが、いずれも認定は厳格に行われます。

 

認定事例

喫茶店経営者が、売上から諸種の経費を控除すると損失となる旨の税務申告を事故前にしていたが、妻や長男に専従者給与として相当額を支払っていたことなどから、賃金センサス男子平均賃金の少なくとも3分の2の収入はあったとした例。
(名古屋地裁・平成4年7月29日)

まとめ

申告外所得や無申告所得がある場合、その実際の収入にもとづき休業損害を請求するには、税務関係書類以外の証拠で、収入を立証する必要があります。

 

それができない場合は、実際の収入分の損害賠償を受けることは難しいでしょう。

 

なお、たとえ実際の収入を証明できたとしても、訴訟になれば収入の過少申告が明るみに出るので、修正申告を求められます。

 

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関連

 

【参考】
・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 102~103ページ
・『交通事故事件の落とし穴』新日本法規 80~83ページ
・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 96~97ページ

 

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