交通事故の後遺障害等級認定機関・損害保険料率算出機構とは?

交通事故の後遺障害等級認定機関・損害保険料率算出機構とは?

自賠責制度のもとで自動車による人身事故について、損害調査や後遺障害の有無・等級を調査するのは、損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所です。公平・中立をうたっていますが、実態は損害保険会社の利益を守る組織です。

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自賠責保険制度において、被害者の損害の査定や後遺障害の等級認定をするのは、損害保険料率算出機構です。

 

損害保険料率算出機構とは、どんな組織なのか、見ていきましょう。

 

人身事故の損害調査の仕組み

自賠責保険制度では、「公平・適正」な支払いを行うため、保険会社は、損害保険料率算出機構に損害調査業務を委託しています。

 

自賠責は、自動車事故による被害者の保護・救済が目的なので人身事故が対象です。物損事故の損害は、保険会社が独自に損害調査します。

 

損害保険料率算出機構とは?

損害保険料率算出機構は、法律(自動車損害賠償保障法、損害保険料率算出団体に関する法律)にもとづいて設置された非営利の民間法人です。

 

本部のほか、全国7ヵ所に地区本部、56ヵ所に自賠責損害調査事務所があり、実際の損害調査業務は、自賠責損害調査事務所が行います。

 

例外として、JA共済だけは、JA共済連が損害調査を行っています。基準は同じです。

 

損害調査の仕組み

人身事故の損害調査は、次のような流れになります。

 

任意保険会社による一括払いの場合

通常は、任意保険会社が自賠責を含めて支払う一括払いです。任意保険会社は、あとで自賠責から自賠責保険部分を回収しますから、自賠責がいくら支払うか、事前に確認するのです。

 

この場合、任意保険会社は、自賠責損害調査事務所に損害調査を請求します。

 

自賠責損害調査事務所は、請求書類にもとづき、事故の発生状況、自賠責保険の対象となる事故かどうか、被害者の死傷と事故との因果関係、後遺障害の有無や等級、発生した損害額、重過失減額の有無などを調査し、その結果を任意保険会社に報告します。

 

損害調査事務所で判断が困難な事案については、上部機関の地区本部や本部で審査します。

 

高度な専門的知識が要求され判断が困難な事案や異議申立事案は、自賠責保険審査会で審査されます。自賠責保険審査会は、弁護士、医師、学識経験者等の専門家が参加して審査します。有無責等の専門部会と後遺障害の専門部会があります。

 

任意保険会社は、損害保険料率算出機構の調査結果・審査結果にもとづき、支払額を決定します。

 

被害者による直接請求の場合

被害者が、自賠責に直接請求(16条請求)することもできます。これは、被害者から自賠責に対する賠償額の支払い請求です。

 

被害者が、相手方の自賠責保険に対し支払いを請求します。自賠責保険が損害保険料率算出機構に調査を依頼。その結果にもとづいて、自賠責保険から被害者に賠償額が支払われます。

後遺障害の認定では、損害保険料率算出機構が大きな壁

後遺障害の等級認定は、損害保険料率算出機構が行います。

 

自賠責保険制度は被害者の保護・救済を目的としたものですから、損害保険料率算出機構は本来、被害者救済の組織であるべきです。

 

ところが、現実は、後遺障害の等級認定において、損害保険料率算出機構が大きな壁となっています。

 

後遺障害等級の認定について、『自賠責保険のすべて 12訂版』(保険毎日新聞社)に次のような説明があります。

 

「後遺障害診断書から直ちに等級の認定が困難な場合は診療医への照会や指定医での再診断の受診を要請するなど、後遺障害の実態を把握し適正な等級認定の調査を行った上で該当等級が定められる」

 

「医学的専門的知識を要する場合は専門的顧問医師への相談を行う等、被害者の適正な保護を図るための調査が行われる」

 

後遺障害の「実態の把握や適正な調査を行う」とされながら、書類審査のみで、被害者本人に面談することも状況を聞くこともありません。診療医に照会することもないし、指定医で再診断することもないのが現実です。

 

労災と同じ障害認定基準でありながら、労災では高い等級が認定されても、自賠責では軽度の等級しか認定されなかったり、非該当となることは珍しくありません。

 

多くの被害者が、損害保険料率算出機構の冷たい対応に苦しめられているのです。

損害保険料率算出機構は、損保会社の利益を保護する組織

なぜ、損害保険料率算出機構は、被害者に対し冷たい対応になるかというと、そもそも損保会社のための組織だからです。

 

損害保険料率算出機構の事業の柱は2つです。

 

1つは、損保会社から集めた大量の保険データをもとに、保険料率(保険金額に対する保険料の割合)を算出すること。この数値は、損保業界全体の利益を左右します。

 

これが、損害保険料率算出機構の業務の中心です。

 

もう1つは、自賠責保険の損害調査です。自賠責保険の支払い対象か、後遺障害等級、損害額、重過失の有無などを調査します。

 

ただ、こちらの業務も、決して被害者に目を向けたものではありません。

 

損害保険料率算出機構のWebサイトには、機構の役割・使命として「損害保険業の健全な発達を図るとともに、保険契約者等の利益を保護すること」が掲げられています。

 

「損害保険業の健全な発達を図る」とは、損保会社が利益を出せるようにすることです。「保険契約者等の利益を保護する」とは、加害者側の利益を保護することにほかなりません。被害者の保護・救済は、どこにもないのです。

 

損害保険料率算出機構は会員制で、損害保険会社が会員です。運営費は、保険料収入と会員である損保会社からの出資によっています。役員には損保会社の社長が名を連ねています。

 

損害保険料率算出機構の損害調査部門は、損保会社からの転職者が多くを占めているという話もあります(『虚構のトライアングル』幻冬舎)

 

こういう組織に後遺障害の認定申請を出し、等級認定を求めてたたかっていかなければならないのです。適正な後遺障害等級の認定を受けることは簡単ではありません。

まとめ

自賠責保険制度で損害調査を行うのは、損害保険料率算出機構です。これは、公正・適正な損害調査を行うため法律にもとづき設置された非営利の法人ですが、実態は、損害保険会社の利益を守るための組織です。

 

特に、後遺障害の認定では、交通事故被害者を苦しめる大きな壁となっています。

 

後遺障害の等級認定は、簡単ではありません。後遺障害の認定申請や異議申立は、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

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公開日 2021-04-27 更新日 2023/04/27 14:16:50