交通調停・民事調停の申立てが本当に有効なケースとは

Point
  • 交通事故の被害者にとって、交通調停・民事調停の申立てが本当に有利なケースは限られます。調停を申立てるか、民間ADR機関に持ち込むか、状況により選択することが大切です。

 

交通調停・民事調停は、訴訟に比べ、簡易な手続きで紛争を解決できます。調停費用も訴訟費用の半分です。弁護士を頼まなくても、本人や家族だけで大丈夫です。

 

このように調停は、交通事故の被害者にとって利用しやすい紛争解決手段なのですが、デメリットもあります。場合によっては、裁判所に調停を申立てるより、民間ADR機関に持ち込む方が有利なケースがあります。

 

交通事故の被害者にとって調停の申立てが「本当に有効」なのは、次の5つのケースです。

 

 

これ以外の場合に、専門知識をもった第三者に示談の斡旋や仲裁を頼みたいときは、「交通事故紛争処理センター(紛セ)」か「日弁連交通事故相談センター(弁セ)」に相談することをおすすめします。

 

理由は、「紛セ」や「弁セ」は、自動車事故の損害賠償問題に精通した弁護士が担当するからです。加えて、損保や共済に拘束力をもつ裁定を出せるので、被害者側が裁定案に同意するだけで示談が成立するからです。

 

一方、民事調停(交通調停も含めて)は、調停委員が必ずしも交通事故の損害賠償問題に詳しくありません。調停委員会が示す斡旋案には、損保や共済に対する拘束力がないので、合意が得られなければ調停不成立となってしまいます。

 

交通調停・民事調停のメリット・デメリット民間ADR機関のメリット・デメリットを知った上で、状況に応じて選択することが大切です。

 

「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」の違いはこちらで解説しています。「紛セ」と「弁セ」のどちらに相談するとよいか迷ったときは、参考にしてみてください。

 

調停は加害者が任意保険に加入していない場合に有効

加害者が任意保険・任意共済に加入していて、事実上の相手が損保や共済の場合は、調停の申立てでなく、「紛セ」や「弁セ」に示談斡旋を頼むのが、断然有利です。

 

「紛セ」や「弁セ」は、損保・共済に対して「片面的拘束力」をもつ裁定が出せるからです。しかも、利用は無料です。

 

相手方が損保や共済の場合、調停を申立てるメリットは、ほとんどありません。

 

そもそも調停は、調停委員が当事者を説得して合意を図る手続きです。事実上の相手が損保や共済なら、調停委員が加害者を説得しても、調停に応じるか否かは、損保会社や共済組合の内部で稟議を経る必要があるので、裁判所で調停委員に加害者を説得してもらうという「調停の利点」が発揮しにくいのです。

 

また、調停には、損保や共済に対する片面的拘束力がありませんから、保険会社や共済組合の合意が得られなければ、調停は不成立となります。

 

調停が不成立となれば、訴訟による解決しかありません。訴訟になっても和解はあります。それなら調停を申立て時間を浪費するより、最初から訴訟を提起する方がよいというわけです。

 

ただし、相手方が任意保険・任意共済に加入していない場合は、調停の申立てが被害者に有利になる場合があるのです。

 

相手が任意保険や任意共済に未加入の場合、「紛セ」や「弁セ」でも相手が同意すれば示談の斡旋はできますが、相手の同意が得られなければ、示談斡旋は受けられません。

 

それに対して調停は、法律で「裁判所または調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、5万円以下の過料に処する」(民事調停法34条)と定められていますから、相手方に対して少しだけ強制力があります。

 

こうした点から、加害者が任意保険・任意共済に加入していない場合は、相手を調停の場に引っ張り出し、調停委員に加害者を説得してもらうことができるので、調停の申立てが有効なのです。

 

調停は債務名義を取得したい場合に有効

相手方が任意保険・任意共済に加入していれば、示談内容が履行されないという心配はないのですが、そうでない場合、示談条項の履行を確保するための手続きが必要になります。

 

その1つの方法が、示談書を調停調書にしておくことです。調停調書は確定判決と同じ効力を有するので、万が一、示談条項が守られない場合、調停調書を債務名義として、強制執行が可能となります。

 

調停の申立ては時効が近づいている場合に有効

損害賠償請求権の消滅時効が迫っている場合、訴訟の提起で時効を中断できますが、訴訟を提起するほどでもないケースでは、調停の申立てで時効を中断させることができます。

 

時効中断効をねらった調停申立ては、しばしば行われます。

 

調停の申立ては、「相当額の金額を支払うこと」でも可能です。具体的な請求金額を記載しなくても大丈夫です。治療が長引いている場合や後遺障害等級の認定が確定していない場合などに有効です。

 

ただし、調停が不成立になったときは、1ヵ月以内に訴訟を提起する必要があります。

 

調停申立ての時効中断効力について詳しくはこちらをご覧ください。

 

「紛セ」や「弁セ」への示談斡旋の申立てには、時効中断効はありません。民間ADR機関で時効中断効があるのは、ADR法にもとづく法務大臣の認証を取得しているADR機関のみです。

 

調停申立ては物損のみの場合に有効

物損のみの場合、「紛セ」や「弁セ」は制限があります。「弁セ」は、相手が示談代行付き対物賠償保険に加入している場合に限り示談斡旋が可能です。「紛セ」は、相手方が応じる場合には対応していますが、主には「弁セ」と同じく、相手が示談代行付き対物賠償保険に加入している場合です。

 

それに対して民事調停は、どんな場合でも対応します。

 

なお、物損のみの場合、弁護士に示談交渉を頼んでも費用倒れになることがほとんどです。弁護士を頼む費用対効果は低いので、民事調停の申立ては、有効な手段です。ただし、弁護士保険を利用すれば、弁護士費用が保険から支払われます。

 

調停申立ては「自転車」事故の場合に有効

「紛セ」や「弁セ」は、自動車事故にともなう紛争のみで、「自転車」事故に関する紛争は扱いません。

 

それに対して、民事調停は「自転車」事故に関する紛争も取り扱い可能です。最近は、「自転車」事故の当事者からの民事調停の申立ても増えているようです。

まとめ

交通調停・民事調停は、本人や家族だけで申立てでき、裁判所で調停委員から加害者を説得してもらえるので、示談交渉で行き詰まっているときには有効な手続きです。

 

ただし、交通事故の被害者にとって、調停の申立てが本当に有効なケースは限られます。

 

調停申立て以外にも、裁判によらない解決方法はあります。民間ADR機関に持ち込むか、弁護士に示談を依頼するか、状況により選択することが大切です。

 

お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。早く弁護士に相談するほど、メリットが大きいのです!

 

弁護士法人・響

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