交通調停・民事調停申立ての時効中断効力

Point
  • 交通調停・民事調停の申立てには、損害賠償請求権の消滅時効を中断させる効力かあります。ただし、調停が不成立のときは、1ヵ月以内に訴訟を提起する必要がります。

 

民事調停法にもとづく交通調停・民事調停の申立ては、民法151条により時効中断事由となります。

 

調停が不成立の場合にも、1ヵ月以内に訴訟を提起したときは、調停の申立てのときに時効中断の効力を生じます。

 

民法151条

和解の申立て又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、1ヵ月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。

 

時効成立間際の調停申立ては要注意

損害賠償請求権の消滅時効の成立間際に調停を申し立てたような場合は、特に注意が必要です。

 

調停が成立したときは問題ないのですが、調停が成立しなかったときは、1ヵ月以内に訴訟を提起しないと、調停申立てのときの時効中断効力が失われます。

調停申立ての時効中断効力についての豆知識

ここから先は、関心があればご覧ください。

 

民法151条に調停申立てによる時効中断効力が盛り込まれた経緯、民法151条と民事調停法19条の関係について解説します。

 

民法151条と民事調停法19条の関係とは、調停不成立のとき、民法151条では「1ヵ月以内に訴えを提起」となっているのに対して、民事調停法19条では「2週間以内に訴えを提起」となっているため、どう解釈するのかという問題です。

 

民法151条に調停申立ての時効中断効力が盛り込まれた経緯

民法151条に、調停申立ての規定が盛り込まれたのは、2004年(平成16年)の民法改正のときです。民法を現代語化(口語化)するとともに、確立された判例・通説の解釈との整合を図るため、条文の改正が行われました。

 

法務省民事局参事官室の「民法現代語化案補足説明」に、「確立された判例・通説の解釈との整合を図るための条文の改正点」として、第151条について次のような説明があります。

 

裁判所に対する調停の申立てについて、和解の申立てと同様に、相手方が出頭せず、又は調停が調わなかった場合には,1ヵ月以内に訴えを提起すれば時効が中断する旨を明らかにしている。

 

法務省民事局参事官室「民法現代語化案補足説明」(平成16年8月4日)より抜粋。
 法務省のWebサイトにリンクしています。

 

もともと民法151条には、和解についての時効中断の規定しかありませんでした。そのため過去には、調停申立てに時効中断の効力があるか否かが争いとなり、1933年に最高裁が、民事調停法に基づく調停の申立ても民法151条が類推適用され「時効の中断事由となる」という判断を示しました。

 

最高裁は、調停の申立ては「紛争を裁判所の関与の下に解決し、その権利を確定することを目的とする点において、裁判上の和解の申立てと異なるところがない」として、「調停の申立ては、民法151条を類推して時効の中断事由となるものと解するのが相当」としました。

 

こうした最高裁判例があり、2004年(平成16年)の民法改正で、第151条に調停の申立てによる時効中断効力の規定が盛り込まれたのです。

 

 

民法151条と民事調停法19条の関係

民事調停法19条では、調停が不成立に終わった場合の時効中断効力について、次のような規定があります。

 

民事調停法19条

第14条の規定により事件が終了し、または前条第4項の規定により決定が効力を失った場合において、申立人がその旨の通知を受けた日から2週間以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。

 

「第14条の規定により事件が終了」とは、調停不成立の場合です。

 

「前条第4項の規定により決定が効力を失った場合」とは、「調停に代わる決定」に対して当事者から異議申立があり、その決定の効力が失われた場合です。これも結果的に調停不成立ということです。

 

つまり、民事調停法19条は、調停不成立の場合、2週間以内に訴えを提起したときは、「調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす」という規定です。

 

言い換えれば、調停不成立の場合、2週間以内に訴訟を提起したときは、調停の申立てのときに時効中断の効力を生じるということです。

 

調停申立ての時効中断効力は、調停不成立から「2週間以内?」「1ヵ月以内?」

調停不成立のとき、民法151条では「1ヵ月以内」、民事調停法19条では「2週間以内」に訴えを提起すれば、調停申立てのときに時効中断効力が生じるとされています。

 

どう解釈すればいいのでしょうか。仮に、調停不成立から2週間が過ぎ、1ヵ月以内に訴訟を提起した場合、調停申立ての時効中断効力はどうなるのでしょうか。

 

結論を言えば、民法151条に規定されているように、調停不成立から1ヵ月以内に訴訟を提起すれば、調停申し立て時点で時効中断効力が生じると解釈されています。

 

実体法である民法と手続法である民事調停法との関係から、実際に時効中断効力が問題になった場合には、民法151条が適用されます。

 

政府の司法制度改革推進本部・ADR検討会の資料でも、民事調停法19条の規定は、「一定の条件の下に調停の申立てに訴え提起の効果を擬制したもので、調停の申立てそれ自体の実体法上の効力について規定するものではないと考えられている」としています。
ADR検討会・第4回(平成14年5月13日)配布資料の1ページ)

 

また、先に紹介した最高裁判決(平成5年3月26日)が、「民事調停法にもとづく調停申立て」が時効の中断事由になるとし、「調停が不成立によって終了した場合においても、1ヵ月以内に訴えを提起したときは、右調停の申立ての時に時効中断の効力を生ずる」と判示していることからも明らかです。

 

2週間以内に訴えを提起すれば、訴訟費用は調停申立て費用を控除

なお、民事調停法19条に規定された「2週間以内に訴えを提起」という規定が全く意味がないわけではありません。訴訟費用と関係してきます。

 

民事訴訟費用等に関する法律第5条1項では、「民事調停法第19条の訴えの提起の手数料については、調停の申立てについて納めた手数料の額に相当する額は、納めたものとみなす」とする規定があります。

 

つまり、調停不成立の通知を受け2週間以内に本訴を提起すれば、調停申立ての時に貼った印紙額が控除される扱いとなっています。

 

調停申立て費用は、訴訟費用の半額です。ですから、2週間以内に本訴を提起するときには、残り半額を納めればよいのです。

 

2週間を経過して本訴を提起したときは、訴訟費用を全額納めなければなりません。

まとめ

交通調停・民事調停の申立てには、損害賠償請求権の消滅時効を中断させる効力があります。一般的に民間ADR機関への申立てに時効中断効力がないのと対照的です。

 

時効が間近に迫っているような場合に、裁判所に調停を申し立てると、時効を中断させることができます。ただし、調停が不成立のときは、1ヵ月以内に訴訟を提起しなければ、調停申立てのときの時効中断効力は失われるので注意が必要です。

 

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弁護士法人・響

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